レム・カスケード/故郷
帰省編の後編、明の三日のお話です。結構長いです…。
朝のうちにリーグストを出て、エンドールへ向かう。
今日もひとりずつ馬に乗って。荷物は半分以上ナリスが持ってくれた。
旅慣れない私の為に、休憩多めのゆっくりめ。エンドールに着いたのはお茶の時間の少し前だった。
そんなに大きな町じゃないってナリスは言ってたけど、ミルドレッドより少し狭いくらいかな。もちろんライナスなんて比べ物にならないよ。
海辺の町ではないけど、建物はシューゼと一緒の造りなんだって。山の中にあるライナスに比べて石で土台を作った家が多いかな。
ここでナリスは育ったんだね。
私はナリスの故郷に来れたんだね。
そう考えたら嬉しくなった。
「ちょっと見て回る?」
ナリスはそう聞いてくれたけど、私は首を振る。
もちろんまっすぐナリスの家族に会いに行くよ!
しばらく歩いてから、ナリスが立ち止まる。
「…来てくれてありがとう」
呟く声に見上げると、少し笑うナリスと。
『アサレイ商店』と書かれた看板が見えた。
ナリスの実家。
ここに、ナリスの家族がいるんだね。
滅茶苦茶緊張してるけど大丈夫。
ナリスが一緒だからね。
ナリスに続いて店に入ると、中にはお母さんより年上の女の人がいた。
ナリスそっくりの淡い金の髪。言われなくてもわかる。ナリスのお母さん、テレーズさんだよね。
「…ただいま」
小さくそう言うナリスを少し驚いたように見返してから、テレーズさんが私を見た。
「…おかえり、ナリス。それに、レムさん、ね」
あっ! いけない、挨拶してないよ!
「はっ、はじめまして! レム・カスケードです!」
頭を下げると、少し笑った声がして。優しく肩に手を置かれた。
「そんなにかしこまらないで。皆待ってるわよ」
傍に来てくれたテレーズさんがそう言って、店の奥へ歩いていく。
ナリスを見ると頷いてくれたから、そのままついていった。
店の奥は部屋になってて。たぶん店番をしながら食事をしたりお茶を飲めるように、テーブルと椅子がふたつある。
そこに若い女の人と女の子が座ってて、女の人は私を見て立ち上がってくれた。
「あなたがレムさん?」
興味津々って感じに見られてるけど、すごく好意的な眼差しで。もちろん全然嫌じゃない。
「私はサーシャ。メルトの…ここの次男の妻よ」
ナリスのお兄さんの奥さん!!
サーシャさんは隣の女の子を促して。女の子も椅子から降りて私を見上げた。
「オルフェ・アサレイです!」
まだ学校に入る前くらいの年かな。はにかんで笑うのがもう滅茶苦茶かわいい!
「レム・カスケードです。よろしくお願いします」
挨拶すると、サーシャさんは嬉しそうに笑ってナリスを見た。
「話以上にかわいいお嬢さんね」
「…サーシャ義姉さん…」
ナリスが困ったように笑ってる。
「メルトは仕入れに行ってて留守なのよ。サーシャ、オルフェ、少し店番お願いね」
テレーズさんはそう言ってから、奥の階段を登っていく。
二階はひと続きの部屋になってて、大きなテーブルがふたつ並べてあった。奥に調理場があるから食事用の部屋みたい。階段はまだあるから、上が寝室かな。
テーブルに並んで座ってる四人は、ナリスのお父さんとお兄さんとその奥さんと息子さん。見てわかるよ。
当たり前だけど、皆じっと私を見てる。うぅ、ますます緊張してきたよ。
固まる私の肩を、ナリスがぎゅっと抱き寄せてくれた。
「先に紹介するね。この子がレム。前に話した、俺の大事な人」
ナリスっ?? だ、大事な人って!
皆びっくりしてるし!
嬉しいけど恥ずかしいから!!
あわあわしてると、急にお兄さんが吹き出した。
「お前、彼女の前でもそうなんだ?」
その一言で場の空気が緩んだみたい。
「まずは自己紹介だな。俺はナリスの兄でケヴィン。嫁のミズリーと、息子のトール」
ケヴィンさんの紹介に合わせて、ミズリーさんとトールくんが頭を下げてくれる。
「で、こっちが親父の…」
「フリムだ」
ナリスのお父さん。ナリスのことも、私のことも。優しい目で見てくれてる。
ナリスの家族なんだもん。いい人に決まってるよね。
「レム・カスケードです。挨拶に来るのが遅くなってしまってすみません」
そう頭を下げると、もっと楽にしてちょうだいね、とテレーズさんが言ってくれた。
皆の向かいにナリスとふたりで座って。
お茶を淹れてくれたテレーズさんが向かい側のフリムさんの隣の席に着いたところで、フリムさんが口火を切った。
「レムさん。ナリスからも話を聞いているし、君からも、君のお父さんからも手紙をもらっているのだが」
フリムさんは一度言葉を切って、まっすぐ私を見つめた。
「ナリスと結婚したい、ということでいいのか?」
「はい」
迷うことなんてない。私はすぐに頷いた。
フリムさんはじっと私を見たまま続ける。
「…まだ成人前の君が。年も離れたナリスを相手に結婚を決めて、本当に後悔しないのか?」
「親父っ!」
ナリスが声を上げるけど、フリムさんは動かない。
「ナリスは黙ってろ。俺はレムさんに聞いてるんだ」
私を見るフリムさんの瞳には、責めてるわけでも疑ってるわけでもなく、ただ私を心配して聞いてくれてるんだとわかる優しさが見えて。
ほらやっぱり。ナリスの家族は優しいよ。
いつの間にか緊張は解けて。ナリスと私を心配してくれる優しい人たちに囲まれて嬉しいって気持ちでいっぱいになって。
「ナリスが私を大事だと言ってくれてるのと同じで、私もナリスのことが大切なんです」
そしたら、素直に言葉が出た。
「ナリスがいくつ上でも、たとえ下でも関係ないんです。私はただナリスが…今ここにいる彼自身が大切で、だからずっと一緒にいたいんです」
今のナリスを作ったのがこれまでナリスが生きてきた時間だっていうのなら、私は今この年齢のナリスと恋人になれたことが嬉しい。
「確かに私はまだ成人前で、故郷から出ることもない世間知らずですが。それでもナリスのことが大切なのは間違いないし、後悔しないって言い切れます」
誰にだって優しくて、面倒見がよくて、ちょっとヤキモチ焼きで、たまに自分に自信がなくて。
私を誰よりも愛してくれて。
いいところはもちろん、ちょっと困ったところもある、そんなナリスが大好きだから。
今も、この先も、ずっと一緒にいたいって思うから。
だから後悔なんてするわけないよ。
「ですから。ナリスとの結婚を認めてください」
お願いします、と頭を下げる。
皆黙ったままだった。
「…ナリスお前、ほんっとに愛されてんだなぁ……」
ぼそりとケヴィンさんが呟いた。
「なんだかもうまっすぐすぎて、聞いてるほうが恥ずかしい…」
ミズリーさんまで頬を染めてそんなことを言うから。
ちらっと隣のナリスを見ると、もう滅茶苦茶照れてて。
え? 私そんなに恥ずかしいこと言った??
全然そんなつもりなかったんだけど? 普通に質問に答えただけなんだけど?
何でこんな雰囲気になってるの??
「…レム」
テーブルの下、ナリスがぎゅっと手を握ってくる。
「ありがとう…」
そんな真っ赤な顔でお礼言われても!!
どうしよう? 私まで恥ずかしくなってきたよ??
うろたえる私をテレーズさんは嬉しそうに見つめてくれてて。
フリムさんは瞳を細めて笑ってくれた。
「…安心したよ」
呟くフリムさんが、私とナリスを見る。
「ナリスのことを、よろしく頼むよ」
お父さんから預かってた手紙とククルが持たせてくれたお菓子を、フリムさんに渡した。
フリムさんとテレーズさんは自分の分のお菓子と手紙を持って店番に降りて、代わりにサーシャさんとオルフェちゃんが上がってきた。
皆でククルのお菓子を食べながら話して。
私が打ち解けたことを見届けたナリスが、ちょっと話してくるって言って下に降りた。
「にしてもホントに、ナリスの言う通りだったな」
私を見ながらケヴィンさんがしみじみ呟く。
「それは言いすぎだろって、ちょっと思ってたんだけどな」
「失礼よ」
ミズリーさんが窘めてから、ごめんなさいねと私に言う。
「この人も悪気はないのよ」
「あの、私が何か…?」
全然話が見えなくて。そう聞いたら、去年の話、とケヴィンさんが笑う。
「年始にナリスが帰ってきて。大事な人ができたから、その子と結婚するって言うんだよ」
ちょっと待って? 私がナリスに結婚しようって言われたの、雨の月だよ?
ナリス、そんなに前からそう思ってくれてたの?
驚く私にケヴィンさんが続ける。
「ようやくナリスもか、ってなったんだけど。詳しく話聞いたら、相手の子が十六になったばかりだって言うだろ? もう皆でびっくりして」
ご、ごめんなさい!
うろたえる私。ケヴィンさんは変わらず明るく話す。
「そんな年の子捕まえて結婚とか。相手は絶対そこまで考えてないだろうし、別れろとまでは言わないけど結婚はちょっと考え直せって言っても、ナリス、もう全然引かなくてさ」
うん、そのときの私は結婚とかまで考えられてなかった。ただナリスと恋人同士になれたのが嬉しいってだけだったよ。
「ナリスの奴、『レムは俺よりしっかりしてるからちゃんと考えてくれる』ってきっぱり言い切って。だから大丈夫って」
ナリス、そんなこと言ってくれてたんだね。
そんなに前から私のことを信じてくれてたんだね。
嬉しいよ。
「そのあと手紙をもらったり、ジェットさんから話を聞いたりして。確かにしっかりした子だなって思ったんだけど」
ケヴィンさん、そこで言葉を止めて。まじまじと私を見る。
「いざ本人が来たと思ったら、こんなかわいい子で」
……わかってるよ。そのかわいいはこどもっぽいって意味だよね……。
「で、驚いてたらあの返事だろ? ナリスの言うことは間違ってなかったんだなって。そう思った」
ふっと、ケヴィンさんの表情が和らいだ。
「…ナリスはさ、俺たちにはあんまり甘えてこなかったけど。レムさんには素直でいられるみたいだから」
優しい眼差しに、ナリスのことを大事に思ってるんだってことがよくわかって。
「意地っ張りだけど、寂しがりやなとこもあるから。たまには甘やかしてやってくれないか?」
ケヴィンさんの言葉に、もう必死に頷きながら。いつかのナリスの言葉を思い出す。
ナリス、前に実家は帰りたいって思わないって言ってたけど。
フリムさんもテレーズさんもケヴィンさんも。皆ナリスのことを大事に思ってくれてるよ?
昨日今日なんかじゃない、絶対に昔から大事に思ってくれてるよ?
テレーズさんの手紙を見て、気付いてなかったって言ってたナリス。
もうわかってるよね?
皆がナリスのこと見てくれてたこと、もう気付いてるよね?
やっぱりここはナリスの故郷で。
ナリスにとって、帰るべき場所のひとつなんだよ。
ライナスに―――私のところに帰りたいって思ってくれるのも嬉しいけど、やっぱりここもそうあるべきなんだよ。
…今ここに、ナリスがいればいいのに。
ケヴィンさんのこの思いを、聞いていればいいのに。
「レムさんっ??」
慌てたケヴィンさんの声で、零れた涙に気付く。
「ごめんなさい! 何だか嬉しくて」
急いで涙を拭ってそう言うと、不思議そうに見返された。
ケヴィンさんたちに泣いちゃった言い訳をしてたらナリスが戻ってきて、町を見に行かないかって誘ってくれた。
皆もそうしたらと言ってくれたから、ナリスとふたりで町に出る。
「皆いい人だね」
手をつないで歩きながらそう言うと、ナリスは答えず笑ってた。
私が好きそうなお店とか、景色のいい場所とか。色々案内してもらって。
ナリスはあんまりここには帰ってないって言ってたけど、やっぱり知り合いの人は多くて。たまにひやかされながらも、恋人なんだって紹介してくれた。
「…ねぇナリス」
「ん?」
「ここも。帰りたい場所になった?」
歩きながらそう聞くと、ナリスはしばらく黙ったままだったけど。
「そうだね」
視線を落としたまま、少し笑って。つないでた私の手をきゅっと握る。
「でも。帰るなら、またレムと一緒がいい」
これも甘えてくれてるってことなのかな。
「もちろん! 一緒に来るよ!」
私もここが大好きになったから。
いつだって、何度だって、一緒に来るよ!
しばらく町を回って戻ると、もうお店は閉めてあった。迎えてくれたオルフェちゃんとトールくんに、二階に引っ張っていかれる。
何がなんだかわからずにナリスを見ると、うしろでにっこり笑ってて。
何がどうしたの??
二階に上がると、テーブルの上、たくさん食事が並んでた。
「おねえちゃんはここね。ナリスはとなり」
くっつけたテーブル真ん中、ナリスと並んで座らされる。
驚いて見回すと、皆笑ってる。
……これって。
もう一度ナリスを見ると、微笑んだまま頷いてくれた。
「じゃあ! 新しく家族になってくれるレムさんの歓迎会ってことで」
明るいケヴィンさんの声。
フリムさんもテレーズさんも。皆嬉しそうに私を見てて。
もちろんナリスも私を見てて。
ナリス、この為に私を外に連れて行ったの?
私を歓迎してくれる為に、皆で準備してくれたの?
それに。
新しく家族になるって。
私も家族にしてもらえるの?
ここの家族って認めてもらえるの?
ふっと、ナリスが瞳を細めて頭を撫でてくれる。
「レム」
ぼろぼろ零れる涙をナリスが拭ってくれるけど、止まらない。
「おねえちゃん、どうしたの?」
心配そうなオルフェちゃん。
びっくりさせてごめんね。
「嬉しいの…」
泣きながら笑って、それだけ言うのがやっとだった。
泣くと思ったんだ、ってナリスに言われながら。
皆にお礼を言って。食事が始まって。もう、滅茶苦茶楽しい時間を過ごした。
ナリスの家族が私のことを受け入れてくれて、こうやって楽しく過ごせて。
嬉しくて嬉しくて。ふとした瞬間にまた涙が滲んでは、ナリスに慰められてた。
レムは泣き虫だなぁってトールくんに言われて。
優しくしてあげないとってオルフェちゃんが言い返したら、トールくんがハンカチを貸してくれたんだけど。
トールくんに向かって、レムは俺のだからねって言うナリス。
…ナリス、九歳の子に妬かないでよ。
そのあとふたりに呼び捨てでいいよって言われて。聞いてた皆もそれぞれ家族として呼んでって言ってくれた。
私も皆に呼び捨てでってお願いして。
私に家族が増えたこの日。
本当に、幸せな日だった。
ケヴィンお義兄さんたちもサーシャお義姉さんたちも、近くに自分の家があるんだって言って帰っていった。
私は客間を貸してもらえるんだって。
二階に四人。賑やかだったから、少し寂しいね。
明日帰らないといけないし、疲れてるだろうからって。ナリスがもう休むよう促してくれたけど。
今日の最後にどうしても、二人に伝えたかった。
「お義父さん、お義母さん」
向けられる優しい眼差しに、私は頭を下げる。
「これから。よろしくお願いします」
年に数度会えるかどうかの義娘だけれど。
皆に家族にしてもらえたから。
私にとってもここはもう故郷だから。
ナリスと一緒にまた来ます。
「レム」
前に来たお義母さんが、優しく私を抱きしめてくれた。
「…感謝してるの。レムは行き違ってたナリスと私たちをつないでくれた」
そんなことないって言おうとしたけど、お義母さんの肩越し、嬉しそうに頷くお義父さんを見たら言えなかった。
「ただいま、だなんて。言ったことなかったのに…」
「母さん…」
困ったような声のナリスだけど。照れてるんだよね。
「レムからもアレックさんからも、何度も手紙をもらって。ジェットさんにもたくさん話をしてもらったわ。だからかしら、今日初めて会ったのに、昔から知ってるような気さえするのよ」
お義母さんが私を離して微笑んだ。
「ありがとう、レム。ナリスを見初めてくれたのがあなたで本当によかった」
「お義母さん……」
泣き出した私に、お義母さんがもう一度抱きしめてくれる。
「今までナリスにできなかった分も。親としてふたりを大事にさせてね」
嬉しくって何も言えなくなって、ただお義母さんを抱きしめ返してると、お義母さんごと引き寄せられて。
「…ありがとう」
頭の上で呟く声に、ナリスが私たちをまとめて抱きしめてくれたんだってわかった。
やっぱりもうナリスにもわかってるよね。
ここはナリスの帰る場所で。
ナリスはずっと愛されてたんだよ。
もう少し二階に残るって言うお義父さんとお義母さんにおやすみなさいって挨拶をして。
ナリスに連れられて客間へと行く。
扉の前で足を止めたナリスが振り返って、優しく頭を撫でながら引き寄せた。
何も言わずにキスをして。
唇を離しただけの距離、目の前のナリスの瞳は嬉しそうにも泣きそうにも見えたから。
頬に触れて、私からもキスをする。
息の続く限り。伝えたい言葉はよかったね、なのか、大丈夫だよ、なのか、わからなかったけど。
それでもナリスに何かをわかってほしくて。
それでもナリスに安心してほしくて。
ぴったりの言葉が見つからないから。ただ唇を合わせる。
ゆっくりと唇を離して。まだ足りない気がして抱きしめた。
腕の中に閉じ込めるように、ナリスも私を包んでくれる。力任せじゃないけれど、大事なんだって叫ぶように。ここにいてと願うように。
しばらくそうして抱き合って。
ナリスが腕を緩めてくれたから、私も少し離れて顔を上げる。
「……俺は本当に幸せだよね…」
噛みしめるように呟いたナリスは、私を見つめて瞳を細めた。
「…レムにもそう思ってもらえるように。精一杯がんばるから」
いつでも、どこまでも、私のことばっかりのナリス。
私、何度も言ったよ?
「ナリスが幸せなら、私だって幸せだよ」
どっちかじゃない。どっちも幸せだと思えるような、そんなふたりでいられたらいい。
「ナリスと会えて。好きになってもらえて。私だって幸せなんだよ」
だからずっと。ふたりで幸せでいられるように。
「ありがとう、ナリス」
私のすべてで、ナリスのことを幸せにするから。
「愛してる」
ナリスがちょっと目を瞠って。すぐに笑み崩れて。
「俺も、愛してる」
ゆっくり顔を近付けて。
誓うように、キスをした。
次の日も皆朝から集まってくれて。
皆で朝食を食べて。
皆で話して。
お昼前、皆に見送られながらエンドールを離れた。
前を行くナリスが、時々振り返って微笑んでくれる。
ナリスの故郷、エンドールに行って。私にも家族が増えて、故郷が増えた。
私にとっての大事な人と場所が増えた。
それが、とても嬉しい。
そんな私と同じように。
私の故郷のライナスが、ナリスにとっても大事な故郷になってくれたらいいな。
私の大好きな家族を、ナリスも家族だと思ってくれたらいいな。
そんなことを思いながら、ナリスの背中に小さく呟く。
私は今、幸せだよ。
お疲れ様でした! 帰省編終了です。
ここに来て新たな人物を出す羽目になるとは思いませんでしたが、楽しく書けました。
ずっと故郷と疎遠だったナリス。レムと一緒だと素直になれるようですね。
次話で最終です。数日空きますが、しばらくお待ち下さいね。