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三八三年 実の十三日

 今日もたぶん。そう思って少し早めに宿に行くと、やっぱりナリスが待ってくれてた。

「おはよう」

「おはようナリス!」

 出された手を取ったら、誰もいなかったからかな、引っ張られてキスされた。

 厨房に行かずに長椅子に座って、今日は皆で朝食を食べようって言ってるんだって話をして。

 今日帰っちゃうナリスだけど。

 今月はまだもう一回訓練もあるし。

 誕生日には来れなくても、祈の月に一度は来るからって言ってくれたし。

 年が明けたらナリスの実家に行くんだもんね。

 先の約束がたくさんあるから寂しくないよ。



 朝食はお父さんたちも一緒に皆で食べた。

 朝食はお兄ちゃんひとりで作ってくれた。手伝いたそうなククルを止める為かな、片付けは手伝うってダンが言ってくれてる。

 こうして皆で食事ができて、ホントに嬉しい。

 それに。

 カウンターに座るククル。お兄ちゃんと目が合うと、ちょっと笑って。

 今まで通りでもあるけど、やっぱりちょっと違う。そんなふたりの様子が嬉しくて。

 そういやお兄ちゃん、昨日指輪渡したのかな。

 ククルに返事もらったのかな。

 ククルの手を見てみるけど、やっぱり指輪はしてないよね。

 っていうか、邪魔になるからしないよね。

 お兄ちゃんに落ち込んでる様子はないから、断られてないと思うんだけど…。

 そんなこと思ってたら!

 ククルの首元、うしろにチェーン見えてるんだけど!

 今までククルがペンダントとかつけてたことないし。あれ絶対そうだよね?

 髪でほとんど隠れてるし、エプロンしたら首紐で見えないと思うんだけど、今してないからね?

 皆気付いてるのかな。お母さんはともかく、あとは気付いてないかもしれないよね。

 あとでこっそりククルに聞いてみようっと。



 朝食が済んだら、もう皆帰る時間。

「急に一日延ばしてごめんね」

 ロイがそう謝ってくれる。

「全然! もっといてくれても大丈夫だよ!」

 そう言うと笑ってた。

「疲れは取れた?」

「うん、平気。ホントいいよね、ライナス」

 何でもあるセレスティアに住んでるロイがそう言ってくれるのが、何だかとっても嬉しかった。

 お礼を言うと、ロイはいつもより優しい笑顔になる。

「こっちこそ。アリーのこと、ありがとね」

「アリー?」

「特にレムには気を許してるみたいだから」

 そうなのかな?

 見返す私にロイはいつもの笑顔に戻って、また来るねって言ってくれた。



「ありがとな、レム」

 いつもククルにしてるみたいに私を抱きしめるジェット。

「でも。無茶するなよ?」

「わかってるよ」

 ククルと同じように心配してくれてるのはわかってるよ。

 ダンはいつものように頭を撫でてくれて。

「あまり心配かけるんじゃないぞ」

 って。珍しく言われた。

「はぁい」

 ふたりとも心配してくれてるのがちょっと嬉しいって言ったら怒られるかな。

「ありがと、レム! 次もよろしくな」

 リックは次もお手本役だもんね!

「皆喜んでくれてよかったね」

 そう言ったら、へへって笑ってた。

「また次の訓練で」

 ナリスはそう言ってから、私の手を取った。

「行ってくるね」

「うん。いってらっしゃい」

 一度ぎゅっと握りしめてから、名残惜しそうに離れていく手。

 私を見つめる優しい瞳。

 ありがとう、ナリス。

 私はここで待ってるからね。



 お昼から仕事に戻ったククル。お茶の時間に初めて見るお菓子と一緒に嬉しそうに来てくれた。

「テオがね、エリシアに頼んでくれてたの」

 ずっと欲しかった型をお兄ちゃんがくれたんだって。

 ククル、滅茶苦茶嬉しそう。次の訓練までに慣れておかなくちゃって、今から張り切ってる。

「それがお兄ちゃんの誕生日プレゼント?」

 違うことは知ってたけど、そう聞いてみたら。

 ククル、赤くなって。小さく私を手招きした。

「……こっち」

 近寄ると、首元からチェーンに通した指輪を出して見せてくれる。

「……今は約束だけだけど…」

 はにかむククルはもうホントにかわいいから。

「私のお姉ちゃんになるってことだよね!」

 思わず抱きついてそう言ったら、もう真っ赤になっちゃって。

「もう! レムったら!!」

 そう言い残して逃げられちゃった。



 そうしてまた、いつものように。

 私はここで。『ライナスの宿』で。

 私にできる精一杯で、皆に喜んでもらえたら。

 そう思って、今日もがんばることにする。

 大好きなここにいられて。

 私は幸せだよ!

 読んでいただいてありがとうございます!

『ライナスの宿の看板娘』本編最終話です。

 ただレムとナリスがイチャイチャするだけの話…ではありますが。色々裏設定を出せて楽しかったです!

 もちろん、書けていないことがまだありますので。

 あと後日譚を三話上げてから終わりますね。

 時系列の関係で、こちらを二話上げてから、『丘の上』を二話、そのあと同時に上げて、共に完結表示ができればと思っています。

 一話が長くなりそうなので、毎日とはいかないかもしれませんが。間延びしないうちに終わらせますね!

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冬野ほたる様 作
― 新着の感想 ―
[一言] ライナスの宿の看板娘、完結お疲れさまでした。 丘の上食堂の看板娘と違って、 あとがきまでワンセットで楽しめました。 ソージュの相談相手兼仕事仲間(順序逆かな)のエリシアさんも本編のこのあ…
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