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三八三年 実の十日

 訓練四日目。

 まだ帰ってこないロイ。ゼクスさんたちもアリーもどこか心配そう。

 今日からお菓子も解禁だけど、ククルにもいつもの様子は全然なくて。お昼を取りに行ったときも、お菓子を持ってきてくれたときも、上の空とまではいかなくても考え込んでるみたい。

 そんなククルを見てるからか、お兄ちゃんも様子が変だし。

 訓練自体に問題はないけど、段々と積み重なる不安。

 ロイ、大丈夫かな。

 早く無事で帰ってきてほしいよ。



 そんなことを思ってたら、夜、追加訓練に行ってたアリーが駆け込んできた。

「ロイが帰ってきたの!! アレックさんたちにも知らせてあげて!」

「ホント?」

 思わずそう聞くと、アリーは満面の笑みで頷いた。

 本当に嬉しそうなアリーの顔。そうだよね、顔に出さなくったって、ずっとずっと心配してたんだもんね。

「よかった…」

 もうそれしか言葉が出なかったから。

 受付から出て、アリーをぎゅっと抱きしめた。

「……レムってば…」

 涙声のアリーが私を抱きしめ返してくれる。

 しばらくふたりで抱き合って。

 顔を見合わせて、笑った。



 疲れたよって笑いながら、ロイは私たちにも話を聞かせてくれた。

 やっぱり向こうで手伝ってたんだね。本当にお疲れ様!

 ロイの話とギャレットさんからの手紙で、もう心配ないんだってわかった。

 ワーグさんも娘さんも、ホントによかった。たぶんククルも気にしてただろうから。これで安心できたかな。

 宿に戻ってきたゼクスさんたちもほっとしたみたい。嬉しそうに笑ってた。

 追加訓練は途中からリックがやったんだって。

 アリーのことも話したって言ってたけど、戻ってきた皆はそんなに取り乱した様子はなかった。

 アリーが店のほうに泊まるからってこっちに来たジェットも、もちろんダンも。本当に嬉しそうで。

 そんなふたりを見るナリスも滅茶苦茶嬉しそうだった。

 皆嬉しそうなのに、ウィルだけちょっと考え込んでるような顔をしてるのが気になったけど。結局何も聞けなかった。



 ジェットたちと色々話さないといけないことがあるから、今日は来れないかもしれない。

 そうナリスに言われてたけど、何となく気になって。ちょっとゆっくりめに仕事をしてたんだけど、ナリスは来なかった。

 やっぱり無理だったんだって思いながら、厨房の火も落として。受付で最後の確認をしてたら、降りてくる足音が聞こえた。

 …ナリス、来てくれた。

「レム」

 小声で呼んで、受付から出た私をぎゅっと抱きしめてくれる。

「…待っててくれたんだ?」

「ナリスも。来てくれて嬉しい」

 ナリスの嬉しそうな声。

 がっかりさせずに済んでよかった。

 とはいっても話す時間もないから。せめて家の前まで送るよって言ってくれた。

 戻ったら鍵を閉めるように頼んで、ナリスとふたりで裏口を出る。

「ホントによかったね」

 改めてそう言うと、ナリスもそうだねって頷いてくれた。

「ギャレットさんからも、予定通り十三日に戻ればいいって言ってもらえたから。ジェットも喜んでた」

 ククルの誕生日に皆いられるんだね!

 よかった! ジェットもククルも嬉しいだろうな。

 もちろん私も嬉しいよ!

 あぁもう。本当によかった。

 どうしてもニマニマしちゃう私にちょっと笑ってから、ナリスが私の頬に手を添える。

「…これで俺の心配もひとつなくなった」

 そう呟いて、キスをして。

「待ってて」

 微笑むナリスは本当に嬉しそうだったから。

 何を待ってればいいのかわからなかったけど、待ってるよって頷いた。

 あまり表に出しませんが、本当はロイ思いのアリー。性格がバレてるレムの前では少し素直になりますね。

 本編はできることをするつもりのククルと、止めたいけれど止められないテオ。

 大反対されたでしょうから。皆には言わずに済んでよかったですね。

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冬野ほたる様 作
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