三八二年 動の十日
本編『ウィルバート・レザン/彼女の日常』のネタバレを含みます。
昨日の夜に来たウィル。今回は仕事じゃなくて、ククルにお菓子を作ってもらいに来たんだって。
中央なら美味しいお菓子屋さんもいっぱいありそうなのに。わざわざここまで来るなんてびっくり。
でも、ククルのお菓子が美味しいのは私もわかるから。ウィル、よっぽど気に入ったんだね。
今日も朝からずっと店に行ってるみたい。
びっくりしたといえば、お兄ちゃん。
ウィルを呼び捨てどころか、何だか言葉もキツい。
こないだまで普通だったのに、どうしたんだろ?
今だって宿に戻ってきてるけど、もんのすごく不機嫌だもん。
「…お兄ちゃん」
「何」
声をかけると短くそう返された。
あはは、やっぱ機嫌悪い。
「こっち、そんなに忙しくないから。ククル手伝ってあげて?」
お菓子もたくさん焼かなきゃいけないんじゃ、ホントにククルは忙しいはず。
そう言うとお兄ちゃんはじっと私を見て、ちょっとバツ悪そうに苦笑した。
「ごめん」
いつもの声に戻ったお兄ちゃん。
ありがとうって言って、店に戻っていったけど。
お兄ちゃん、最近様子おかしいよね。
いつからかなって考えてみたら。思い当たったのはウィルが帰った日。
で、今もウィルが来てる。
…ウィルが関係してる?
そういえばいつからか店に入り浸りなウィル。
不機嫌なお兄ちゃん。
……もしかして、そういうこと??
本編にはない日付です。ウィルがお土産を取りに来たところですね。
テオの様子からウィルのこともバレましたが。宿では普通のウィル、この手の話をレムとすることはないんでしょうね。