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三八三年 動の三十日

本編『動の三十四日』のネタバレを含みます。

 今日から訓練! 朝、皆と一緒にエディルが降りてきた。

「おはよう、レム」

「エディル。おはよう!」

 楽しそうに話しながら朝食に行く皆を見送って。

 今回はエディル以外皆同期だって聞いてたから、もしかしたらエディルが孤立しちゃうんじゃないかなって心配してたんだけど、全然そんなことなさそうでよかった!

 安心して仕事をしてたら、今度はミュスカーさんが降りてくる。

「おはようございます」

「おはようございます。すみません、お願いしたいことがあるのですが…」

 朝から何だろう、と思いながら見返すと、ミュスカーさんはものすごく真面目な顔のまま聞いてきた。

「アリヴェーラさんの部屋はどこか教えてもらえませんか?」

「え?」

 信じられなくって、思わず声が洩れる。

 何でアリーの部屋を聞くの??

 驚いて返事のできない私を怪訝そうに見たあと、ああ、とミュスカーさんは納得したように頷いた。

「もちろんお伺いするのは常識的な時間にしますよ」

 当たり前みたいな顔してるけど、そうじゃなくて!

 そもそもアリーは宿に泊まってないし、何より男の人に女の人の部屋の場所なんか普通教えないってば!

「…すみません、お教えすることはできなくて…」

「そうですか。無理を言ってすみませんでした」

 ミュスカーさん、にっこり笑って戻っていったけど!

 アリーに何の用??

 あとでアリーにも気を付けるようそれとなく言っておこう。

 朝から何だか疲れたよ……。



 私の気持ちはそんなでも、訓練自体は問題なく進んでるみたい。

 ずっと様子のおかしかったお兄ちゃんも、ちょっと落ち着いたかな。

 落ち着いたと言えば、ウィルも午後に店に行ってからはいつも通りに見えるし。

 やっぱりククルと何かあったのかな。

 気になって仕方ないけど。聞けないよ。



 夕方はロイと一緒に出ていったミュスカーさん、帰ってきたのは追加訓練をしてきた皆と同じ時間で。

 どうしようかと思ったけど、エディルを呼び止める。

「どうかした?」

 立ち止まってくれたエディルにミュスカーさんのことを聞くと、心配ないよと笑われた。

「師匠、アリヴェーラさんと手合わせしたいとずっと言ってるから。それでだと思う」

「そうなの?」

「ああ。それに師匠は奥さんいるし」

「結婚してるの??」

 ミュスカーさんの奥さん、セレスティアで服を作ってるんだって。

「師匠のことはよくわかってるから、アリヴェーラさんに言い寄ってるとかそんな誤解はしないはず」

「そっか、それならよかった」

 もう、変な心配しちゃったよ。

「…レムは……」

 少し小さな声でエディルに名前を呼ばれたから。

「何?」

 見返すと、少し笑って何でもないって言われた。

「一応師匠にも気を付けるよう言っておくよ」

「ごめんね、エディル。教えてくれてありがとう」

 じゃあおやすみ、と二階に戻るエディルを見送って。

 ホント。誤解でよかった!



 夜に来てくれたナリスに今日のことを話したら、確かにね、って笑ってた。

「アリーのことも噂になってるからね。ユーグが気にするのも当然かな」

「アリーの噂って…?」

 聞いてみたけど、ナリスはにっこり笑ったままで答えてくれなかった。

 それにしても。ククルのこともアリーのことも。一応私のことも。

 そんなに噂ばっかりしてて。ギルド員って私が思ってるより暇なのかな??

 ユーグの奥さんは同郷の幼馴染に近い関係です。研究者気質なユーグのことをよく理解しています。

 ネタバレついでに後日談。アリーがセレスティア在住だと知ったユーグ、休みの日に奥さん共々面会に行きます。

 言い出したのは奥さん。大きな街なので知り合いではないですが、若い娘さんに迷惑かけたのでしょう、と。

 そこでロイとアリーを見た奥さんがふたりに一目惚れ、服を作らせてと迫ります。

 ……要するに、似た者同士の夫婦です。

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冬野ほたる様 作
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