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三八三年 動の二十六日

『ロイ/それでも』のネタバレを含みます。

 もう店も閉店するくらいの時間になって、アリーとロイが来た。

「アリー? ロイ?」

「こんばんは、レム」

 アリーがにっこり笑う。

「一足先に来たんだ。じぃちゃんたちは明日来るよ」

 そう言うロイに鍵を渡すけど、何だろう、緊張してるみたい。

 じっと見てたら、何、と笑われた。

「早く来たのがナリスじゃなくてごめんね」

「ロイ??」

 なんてね、と笑いながらロイは二階へ上がっていったけど。

 何だか様子が変だよね。

 どうしたんだろと思って見てたら、アリーにぎゅっと抱きしめられた。

「少しの間、気付かないフリしててあげて」

「気付かない振りって…」

 アリーはそれ以上何も教えてくれなかったけど。

 こんな時間に来たことといい、何かあるのかな…?



 アリーとロイが店に行って、しばらくして。

 受付で片付けと明日の準備をしてたら、ロイが戻ってきたんだけど。

 …ロイ、もう泣きそうな顔してて。

 一瞬だったけど、ホントに辛そうな顔してて。

 いつも私が受付にいると声をかけてくれるけど、こっちなんて見ないで行っちゃった。

 私はもう呆然と見送ることしかできなくて。

 ロイのあんな顔、初めて見た。

 ……何があったのかな……。



 少ししてから来てくれたお兄ちゃん。ものすっごく落ち込んでて。

 え?? お兄ちゃんまで何があったの?

「レム、仕事は…」

「こっちは終わってるから。お兄ちゃんはもう上がって」

 もう用事を頼みに来るお客さんもいないだろうけど、今のお兄ちゃんにお客さんの相手はさせられない。

「……ごめんな」

 お兄ちゃんもわかってるみたいで。素直に家に戻っていった。

 ロイといいお兄ちゃんといい、店で何があったんだろう?

 来たときにアリーが言ってたのって、こうなることがわかってたからなのかな。

 …ロイ、大丈夫かな。

 自分の家じゃないから勝手が悪いだろうし、たぶん喉が乾いても何も取りに来そうにないよね。

 お茶置いといたら受け取ってくれるかな。私からじゃ無理かな。

 そんなことを考えてたら、アリーが来てくれた。

「ロイ、ちゃんと戻ってる?」

「戻ってるけど…どうしたの?」

 いつもだったらわかるんだけどね、とアリーが珍しく困った顔をする。

「明日には何とかしてると思うから。今日はそっとしといたげないとね」

 文句言ったり雑に扱ったりしてるけど、やっぱりアリーもロイのこと心配なんだよね。

 そう思って気付いた。

 そっか、アリーなら!



 アリーに名前を借りてもいいかって聞くと、不思議そうな顔されて。ロイに持っていきたいんだって話すと、ありがとうって抱きしめられた。

 アリーが店に戻ってから、あるといいかなって私が思うものを詰めてロイに持っていって。

 返事も待たずに、置いとくからねって押し付けて帰ってきたけど。

 ロイ、ちゃんと受け取ってくれてるかな。

 あくまであれはアリーから。

 私は持っていっただけだからね!

 ククルに振られに来たロイ。落ち込む彼への差し入れは、全部レムからのものでした。

 本編では。出会ってから一年と少し。ロイの恋が終わりました。

 本気度でいえば、テオにも負けないくらいだったロイ。入口を間違えたばっかりにかなり彷徨う羽目になりましたが、悪いことばかりではなかった、でしょうかね。

 ちなみにあの日のロイはナリスに負けるとも劣らないくらいのキスを何度もしてます。文面の通り、執拗に貪る、です。今更ですが、よく許してもらえたな…。

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冬野ほたる様 作
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