三八三年 動の十一日
本編『動の十五日』のネタバレを含みます。
まだ二日目なのに、ホントに疲れた顔で訓練に行く皆。
「大丈夫?」
「うん…軽めにしてくれるって言われてるから。行ってくるよ」
スヴェンはそう言ってるけど、全然大丈夫そうに見えないよ??
今回の皆は三年目と四年目だから、新人さんより体力もあるはずなのにね。
「ギルド員って大変なんだね…」
原因を知らないソージュがそんなことを言ってる。
大変なのはギルド員だからっていうより、ジェットが遠慮しないから、かな。
お昼には皆元気になったみたい。スヴェンからディーたちがどうしてるかって話を聞いてたら、何だか皆が集まってきた。
「レムさん、アリヴェーラさんとは仲がいいよね?」
アリー?
「うん。アリーがどうかしたの?」
「アリヴェーラさんって、今お付き合いしてる人とかいるのかなって」
何その質問?
えっ、と思って皆を見ると、皆は一番うしろのフォードさんを見て……って、フォードさん???
アリーに喧嘩売ったんじゃないの?
オロオロする私に、スヴェンがちょっと困った顔で笑って。
「知ってたら教えてあげてくれない? それなりに本気みたいだから」
「それなりって! 俺はっ!!」
スヴェンにそう叫んでから、フォードさんが真っ赤な顔のまま私を見た。
「……衝撃だったんだ。あっという間に倒されて。見上げた彼女は本当に綺麗で……」
ああぁぁ、それなりどころじゃないよ。完全に本気だよ、フォードさん…。
アリーの好みも教えてもらってるけど、フォードさんには全っ然被らないんだよね…。
…………そこまでは言わなくていいかな。
「聞いたのは年始なんだけど、そのときは付き合ってる人も好きな人もいないって言ってたよ」
「本当かっ?」
フォードさん、嬉しそうだけど。
……ごめんね、言えなくて………。
何だか盛り上がりながら部屋に戻る皆を見送ってたら。
「……勝算はあると思う?」
ひとり残ったスヴェンがそんなことを聞いてくるから。
「…アリーの好み、ではないと思うよ…」
そう返すと、やっぱり、だって。
「アリーはどんな人なら好きになるのかな?」
夜にナリスと会ったとき。話すのはフォードさんに悪いなって思ったから、それだけ言ってみた。
「アリー?」
「うん。尊敬できる人がいいんだって」
アリーは大人っぽくてしっかりしてるし、ロイだけじゃなくて皆のお姉さんみたいだけど、ホントはかわいらしくて甘えたい人なんだって、私は知ってるから。
尊敬できる人がいいっていうのも、何だか納得なんだよね。
でも実際、アリーの周りでアリーがらしくいられる人ってそんなにいないんじゃないかな。
……ナリスはいけるかもしれないけど。
ダメダメ。あげないよ。
「…まぁ、好みの人を好きになるかっていったら、そういうわけでもないんだろうけど……」
私を見ながら言わないでよ?
わかってるよ。私のことなんて好みどころかそんな対象でもなかったってことは!
ちょっと悔しかったから。
「ナリスはどんな人が好みだったの?」
そう聞いたら、ナリスは滅茶苦茶焦ってる。
「レ、レム、そういうつもりじゃなくて…」
必死に好みじゃないってわけじゃないとか、今は私じゃないととか言ってくれてるけど。
ちゃんとわかってるよ。
「私は初めて好きになった人がナリスだから。ナリスが好みってことになるのかな」
そう言ったら、一気にナリスが赤くなって。
私を見つめるナリスが、何だかちょっと泣きそうに見える。
「好きになってくれてありがとう」
そう伝えて、キスをする。
からかってごめんね。
大好きだよ。
レムはアリーの好みをゴードンで聞いています。私的にはナリスはギリアウトなのではないかと思うのですが。レムにはフィルターがかかってますからね。割増で素敵に見えています…。