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三八二年 動の二日

 昨日来たジェットたち、今回は五日までいられるんだって。

 ククルもだいぶ元気になったし。ジェットのいる間、いっぱい笑ってくれるといいな。

 ジェットが今までより来れるようになったのは嬉しいけど、理由があの事故に関わることっていうのはちょっと複雑。

 でもやっぱり、来れたほうがいい…よね?

 そんなことを考えながらロビーで掃除してたら、上からウィルとジェットが降りてきた。

「レム、お世話になりました」

 もう荷物を持ってるから、すぐに出るみたい。さっき朝食食べたところなのにね。

「こちらこそ。体調大丈夫ですか?」

 そう聞くと、大丈夫ですと笑ってくれた。疲れた顔はしてないから、大丈夫かな。

「俺もミルドレッドまで出てくる。昼には帰るな」

 そう言うジェットと一緒に出ていく。

 ミルドレッドまでジェットもいるなら、なおさら安心かな。



 いつものように仕込みが一段落したらこっちに来てくれたお兄ちゃん。

 でも、何だか考え込んでる顔してる。

「お兄ちゃん? どうかした?」

「別に」

 って言われるけど。絶対何かあったよね?

 そんな顔してて。ククルに心配されても知らないからね。



 ちょっと不機嫌なお兄ちゃんが店に戻ってしばらく。上から声が聞こえてきた。

 聞き慣れた声と、聞き慣れない声。

 ナリスとリック、かな。

「だから行ってどうするんだよ…」

「でも何かあるかもしれないよ?」

 そんな会話をしながら。私を見たナリスが足を止めた。

「レム! 町でオススメって何かある?」

 急に聞かれて驚いてると。

「お昼食べたら町に降りようかって言ってるんだけど、こないだは通っただけだし、俺も久し振りだからね」

 オススメっていわれても。

 町にあるのは普段の生活のものを買うところばかり。

 ミルドレッドには店頭ですぐ食べられるお菓子を売ってるところもあるみたいだけど…って、お菓子はないけど!

「食堂のパン作ってくれてるところだけど、お店に行ったら色々売ってるよ?」

 そう言ったら、ふたりしてきょとんと見てくる。

「…パン屋?」

「うん」

 シリルさん、自分で焼くより美味しいからって言ってた。食堂に仕入れてるのは食事に合うような素朴なパンだけど、お店には甘いのや混ぜ込み生地のも売ってる。

 美味しいんだよね。

 じっと私を見てたナリスが、ふっと笑った。

「ありがとう、行ってみるよ」

 そう言って手を振って。リックと一緒に出ていった。

 私何か変なこと言ったかな?



「皆で食べて」

 リックと戻ってきたナリスから、はい、と紙袋を渡される。

 え、と思ってナリスを見上げると、小さな袋をもうひとつ乗せられた。

「これはレムに。教えてくれたお礼」

 にっこり笑ってそう言って。部屋に戻るナリス。

「あ、ありがとうっ」

 びっくりしてて言えてなかったお礼を言うと、振り返って手を振ってくれた。

 宿の厨房で開けてみると、パンがいくつも入ってた。

 パン屋、行ってみてくれたんだ。

 あとでククルにも持っていこう。

 そう思いながら、小さい袋も開けてみる。

「これ…」

 私が一番好きな、ドライベリーとチョコのパン。

 もしかして、お店で聞いてくれたのかな?

 ナリス、優しいよね。

 ちょうどもうすぐお茶の時間。あとで手が空いたら、お茶淹れて食べようっと。

 やっぱり色々バレてるテオ。お兄ちゃんのことはよく見てます。

 初対面から子犬呼ばわりされたリックはまだ警戒中。

 ナリスは面倒見がよさそうですね。

 パン、クランベリー✕ホワイトチョコ希望。

 ハード生地のが多いですけど、ソフト生地でも美味しいと思うんですよね…。

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冬野ほたる様 作
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