三八三年 雨の四十八日
お昼過ぎにロイが来た。受付にいた私を見て、ちょっとほっとしたような顔してる。
「元気かって聞くのもちょっと違うけど。色々大変だったね」
「ありがとう。私は大丈夫」
それならよかったって笑うロイ。優しいよね。
「心配で来ちゃったけど。ククルも落ち着いてるみたいでよかったよ」
ホントに心からって感じのその声に、やっぱりロイはククルが好きなんだなって思った。
ロイが来たから食堂は賑やかだろうなって思ってたら。夕方にロイと一緒にアリーまで来て、ホントにびっくりした。
しかもロイ、もう寝るって言ってるよ?
まだ夕方なのに??
二階に上がるロイを見てたら、アリーがくすっと笑って私に言った。
「ロイはねぇ、徹夜で来たからククルに怒られたのよ」
「アリー!! 余計なこと言わなくていいんだよ!!」
聞こえてたのかな。ロイが二階から怒鳴ってる。
ロイもククルには素直だね。
ククル、普段あんまり怒らないけど、無茶すると怒られるもんね。
「でもアリー、どうしてまた来てくれたの?」
「あのバカを見張りに来たのよ」
あのバカって、ロイのこと?
「焦るとロクなことしないんだから」
久し振りに辛口のアリーだけど、要するにロイが心配で来たんだね。
そう言うときっと違うって言い張るだろうから。黙ってるけどね。
帰る間際だったソージュもアリーを見て驚いてたけど、また会えて嬉しいって笑ってた。
アリーは今回もククルのとこに泊まるって。ジェットたちも帰っちゃったし、少しでもククルが寂しくなくなればいいな。
そうそう。アリーには今度こそナリスとのことを話さないと。
「あのね、アリー。ちょっと話したいことがあるから、あとで時間もらえるかな?」
そう言うと、アリーは一瞬きょとんと私を見てからふふっと笑う。
「わかったわ。じゃあお仕事が終わったら部屋にいらっしゃい」
な、何だかアリーに言われると恥ずかしいね??
夜戻ってきたお兄ちゃんが代わってくれて、アリーに聞いてるから裏口を開けてあるって教えてくれたけど。
お兄ちゃん、ちょっと変だよね。
「大丈夫?」
そう聞いたらびっくりされて。でも笑って、大丈夫だって頭を撫でてくれた。
お兄ちゃんにお礼を言って。裏口から入って、鍵を閉めるよう言われてたからちゃんと閉めて。
「来たわね!」
アリーが店のほうから出てきてくれた。
「どうする? 部屋でふたりがいい? それとも三人でお茶しながらがいい?」
ちょっと小さな声でそう聞いてくれる。
三人でって言うと、アリーは嬉しそうな顔して私を抱きしめた。
ククルをひとりにするの、気にしてたんだね。
ククルにもお礼を言って。お茶を淹れて。カウンター席、私を真ん中にククルとアリーで挟んでくれた。
ナリスから結婚しようって言われたって話したら、アリー、飲んでたカップを置いてから。
「ククルはもう聞いてるの?」
「私はこの前聞いたけど…」
「じゃあしばらくレムを借りるわね」
そう言って、私の両肩を掴んで自分のほうへ向けて。そのままずいっと近付いてくる。
「何がどうなってそんなことになったのか。全部話してもらうわよ?」
久々アリーにすごまれたよ!!
そのあとはアリーの質問攻めにあって。ナリスの昔のことはちゃんと伏せたけど、あとはほとんど話すことになっちゃって。
アリーが解放してくれてからククルを見ると、恥ずかしそうに見返された。
こっちまで恥ずかしくなるから! そんな顔で見ないでってば!!
ロイとアリーが到着です。
基本店に入り浸りのロイですが、今日は仕方ないですね。
ククルには話してないことも色々暴露することになったレム。
ククルのナリスを見る目が変わりそうです…。
本編は勘付くテオ。今回はほぼ正解ですが、きっとテオが思っている以上のことをされてます。