三八三年 雨の四十七日
ナリスもいいって言ってくれたから、とりあえずお兄ちゃんとククルに結婚のことを話そうと思ったんだけど。
昨日は全然話せなかったから。
どうせふたりに話すなら朝にふたりで店にいるときに行けばいいかと考えて、朝食の間に店に行った。
カウンター席に並ぶお兄ちゃんとククル。いい雰囲気なのを邪魔しちゃったかな。
「どうしたの?」
食事の途中なのにククルが立ち上がってくれる。お兄ちゃんも嫌そうな顔ひとつしない。ホントにふたりとも優しい。
とりあえずククルには座ってもらって、食事中に来ちゃったことを謝る。
「話したいことがあったんだけど、食べてからでいいよ」
そう言うけど、気になるし、私にも仕事があるだろうからって言われて、先に話すことになった。
ふたりに見られながら、いざ話すとなったら緊張してきたよ。
「あのね、ちょっと話すのが遅くなっちゃったんだけど、ナリスと結婚することになって…」
「…結婚……??」
ククルは固まっちゃうし。お兄ちゃんは呆れた顔してるし。
焦って色々説明が足りなかったのはわかってるんだけど。
どうしたらいいの???
結局、もうお父さんたちから聞いてたお兄ちゃんが説明してくれて、ククルもどうにかわかってくれたみたい。
ホントに焦った。
「おめでとう、でいいのよね…?」
ククルも困ってる。そうだよね、早くても二年も先、まだ何も決まってない口約束だけの結婚だもんね。
「困らせてごめんね。でもククルは私の家族だから、知っててほしかったの」
「レム…」
ククルが席を立って、私をぎゅっと抱きしめてくれた。
「…話してくれてありがとう。レムが幸せなら、私も嬉しい」
ククルがそんなことを言ってくれるから。
ホントに嬉しくて仕方なくて。
泣きやむまで、しばらくかかった。
「おはよう、レム」
「おはよう、ソージュ」
今日も朝から来てくれたソージュ。ククルが襲われたあの日からずっと来てくれてる。
このままじゃ訓練終わるまで休みなしになるからもういいよって言ったんだけど、雨の月の間は来るからって言ってくれて。結局五十日まで働いてもらうことになった。
甘えてばっかりで、ホント申し訳ないよ。
ソージュにも結婚のことを話しておいたほうがいいのかなって思ったんだけど。ナリスに相談したら、いつか自分が言うから言わなくていいって。
ナリスとソージュ、いつの間にそんなに仲良くなったのかな?
本編にはない日付です。
どストレートに言い過ぎて、ククルも混乱したようです。ちなみにテオはその日の夜に聞いていました。レムの知らないところで、ナリスには直接お祝いがてらレムのことを頼んであります。
ナリスとソージュはもちろん仲良くありませんが、認めてはいます。もう少し年齢が近ければあるいは…。