三八三年 雨の三十七日
今日もククルの起きる時間に店に行ったお兄ちゃん。私が朝食を食べてると、急いだ様子で戻ってきた。
「アリーが前のやつまた教えてくれるって。レムも来るなら―――」
「行く!」
最後まで聞かずに答えた私に笑ってから、食事が済んだら店に来て、と言って、お兄ちゃんは戻っていった。
「じゃあおさらいね!」
雨だから店の中でってことになって。アリーに色々聞かれながら、前に習ったことを思い出していく。
頭では覚えてるんだけど、実際上手く動けないことも多くって。
そのうち身体が覚えるってアリーは言うけど、いつになるんだろう?
アリーの話を聞くククルはホント真剣で。ちょっと必死なくらい。
ククルも何かできたらって思ってるのかもしれないね。
お茶の時間に、アリーがチーズタルトを持ってきてくれた。
「ククルと一緒に私も作ったの!」
アリー、滅茶苦茶嬉しそうで。
ソージュが先に行ってきていいよって言ってくれたから、アリーとふたりで厨房に行く。
アリーはもう食べてきたっていうから、お茶だけ出して。
食べる私をじっと見てるアリー。何が聞きたいのか、顔に出てるよ。
「うん! 美味しいよ、アリー!」
「ホント? よかった!」
アリー、ホントに嬉しそう。もちろんお世辞じゃないからね。
話しながら食べてると、今日の夜、また三人で話さないかって誘われた。
もちろん断るわけなんかない。
ククルもアリーと話して落ち着いてきたみたいだし、お兄ちゃんもずっと一緒にいるからね。
そういえばお兄ちゃんもずっと思い詰めた顔してたけど。今朝は少し明るい顔してたかな。
夜、アリーの泊まってる客間に集まって。お茶を飲みながら、色々話した。
クライヴさんたちの命日、ロイたちと入れ違いにアルディーズさんが来たって話をしたら、アリー、滅茶苦茶笑って。ここでロイと鉢合わせてたら面白かったのに、だって。
もちろんククルはとんでもないって顔してたけどね。
ナリスも来てたでしょって言われて。仲良くしてるのって聞かれた。
結婚しようって言われたこと、アリーはもちろん、まだククルにも話せてないんだけど。
こんなときに話すようなことじゃないから、言わなかった。
お父さんにはあんまり人に話さないように言われてるけど。ククルとアリーには、そのうち話せたらいいな。
今回ラウルは北から来たのではなかったので、道中ロイとすれ違わなかった為、互いに入れ違いだったことを知りません。
もし途中で鉢合わせていれば、間違いなくロイは引き返していたでしょうね。
本編はチーズタルトにこだわるアリー。
ロイはしないだけで、基本やればできる子です。