三八三年 雨の十九日
アルディーズさんはまた早くから店に行った。
ロイもそうだけど、ホントにあからさまだよね。
ジェット、怒ってないといいけど。
朝食が済んで戻ってきたカイさん。アルディーズさんもフェイトさんもいなくてひとりだけ。
何だか考え込むような顔をしてたから声をかけてみると、ジェットに聞きたいことがあったんだって。
「ニースと話してるから。割り込む程の話じゃないし」
「聞きたいことって…?」
「フェイトをうちのパーティーに紹介したの、ジェットさんだって聞いたから。何でだろうって思っただけで」
そうだったんだ。
「どうして気になるんですか?」
ふと気になって聞くと、カイさん、困ったように笑って。
「うちのパーティー、ニースは強いけど、俺もラウルも正直ぱっとしないんだよ。フェイトはたしかに新人だけど、体力も素質もあるから。もっといいパーティーに行ったほうがよかったんじゃないかって…」
そこまで話してから、はっと周りを見回して。
「ごめん、今の内緒で」
照れて笑うカイさん。
フェイトさんの為に聞きたかったみたい。
ジェットは今日はまだこっちに来てないけど、ダンは来てるから。
「ダンならジェットのこと何でも知ってるから、聞いてみたらどうですか?」
「ダンって…セルヴァさん?」
あれ? ちょっと驚いてるけど。
ダンを見かけたから呼んで説明すると、ああ、と言われる。
「構成メンバーがフェイトより年上で面倒見がよく、連携の上手いパーティーだからだ」
すぐに返ってきた答えに、カイさんびっくりしてるや。
「ジェットが言うには、複数での戦闘経験のないフェイトに一番必要なことを教えられるパーティーで、フェイトもメンバーも気遣わずに済み、何より信頼に足る、という理由だそうだ」
「…ニースが同期だからじゃなかったんですか?」
ちょっと遠慮がちにカイさんが聞くと、ダンは首を振った。
「同期だから詳しいという点では否定はしないがな」
カイさん、ホントに驚いてダンを見上げてたけど。そのうち嬉しそうな顔になって、ダンにお礼を言ってた。
立ち去るダンを見送ったカイさん。
「…セルヴァさんて、もっと怖い人だと思ってた…」
ダン、無口だし大きいからね。ギルドでもそんなふうに思われてるんだ。
「ダンはすごく優しいよ」
そう言うと、ますます驚いた顔をされる。ホントのことなのにね。
「ありがとうレムさん。何ていうか、ちょっと自信がついたよ」
そう言うと、カイさんは嬉しそうな顔になった。
私は何もしてないけど。
役に立ったならよかったよ。
本編ではあまり書けなかったカイ。普段はおとなしいラウルと少し落ち着きのないフェイトと大雑把なニースの面倒を見ています。多分ダンと一番話が合うのでは。…ダンが話せば、ですが。
本編は帰るラウル。もちろんまだ諦めません。