三八三年 雨の十六日
朝、いつも通りに起きてきたククル。いつもだったらお店で朝食の準備をするけど、今日はジェットと一緒にクライヴさんたちのところへ行った。
ククル、そんなに塞いでるようには見えなかったから。
大丈夫、かな。
セドラムさんたちは、降りてきたときにはもう荷物を持ってて。
朝食を食べたらそのまま出発するんだって。
「ありがとう。また」
セドラムさんが笑ってそう言ってくれる。
「俺は訓練で!」
リックはいつも元気だね。
今回来たふたりもここを気に入ってくれたみたい。リックのこと羨ましがってる。
ディーもまっすぐ私を見て、また来るよって言ってくれた。
「俺にとって、ここはもう故郷と同じくらい大事な場所だから。すぐには無理でも、必ず来るよ」
故郷と同じくらいって!
そんなふうに言ってもらえて、ホントに嬉しい。
「ありがとう、ディー。いつでも待ってるよ」
私がそう応えると、ディーも嬉しそうに笑ってくれた。
朝食のお客さんが済んでから、私たち家族が墓地に行くことになった。
宿を無人にはできないから交代でって思ってたら、ナリスが自分でよければ見てるから、家族で行ってきてって。
だから四人揃ってクライヴさんとシリルさんのところへ行って、話をしてきた。
私からは、ククルは元気にしてるよって。色々あったけど、楽しそうにしてるよって。そう報告して。
やっぱり涙が出てきちゃって、気付いたお兄ちゃんに慰められながら、ルードさんのところにも行って、宿に戻った。
もう涙は止まってたけど、ナリスも何も言わずに私の頭を撫でてくれる。
やっぱり泣いてたってバレてるんだね。
皆で様子を見ながら順番に行って。
お昼を過ぎた頃、慌てて駆け込んでくる人がいると思ったら!
一番初めの訓練のときの!!
「レムさんも久し振り!」
そう言ってにっこり笑ってくれる。
「今隣で、ロイヴェインさんたちも来てるって聞いて」
ロイ、やっぱり慕われてるね。
ロイのいる部屋を教えて、ついでに泊まる部屋の鍵も渡して。
嬉しそうに二階に駆け上がっていって、一緒に来てたリーダーに怒られてた。
今日も賑やかになりそうだね。
夜、店を閉めてから。
お父さんもナリスも皆で話があるからって店に行って。
宿はお母さんが見てるからって言ってくれたから、ひとり先に家に戻った。
しばらくしたらククルが来て、今日もよろしくねって笑った。
全然沈んだ様子もなかったから、ちょっと安心。
ほっとして、お茶でも淹れてこようかなって考えてたら、私を見てたククルが瞳を細めて。
「…ありがとう、レム」
突然お礼を言われてびっくりしてると、ククルは私をぎゅっと抱きしめた。
「ずっと支えてくれて。傍にいてくれて。本当にありがとう」
ククルから抱きついてくるのって、ほんとに珍しくって。
その上こんなこと言われたら。
泣きながら抱きしめ返して。そのままふたりでへたり込んで、しばらく泣いて。
そのうちふたりで顔を見合わせて、ちょっと笑って。
ククルの瞳は涙でいっぱいだったけど、それでも優しい眼差しで。
これからもよろしくねって。ふたりで言った。
クライヴたちの命日です。
集まった皆で過ごすだけの命日。
人の多さの割にはのんびりしています。
本編は男だらけの会談の様子。
暑苦しそうです。