三八三年 雨の十二日
今日は午前中からジェットとククルがミルドレッドに行ってる。今は雨も降ってないから、このまま持ってくれたらいいな。
そう思ってたんだけど、だんだん雨はきつくなって。
ふたりとも、大丈夫かな。
お昼もだいぶ過ぎてからふたりが帰ってきたって聞いて、しばらくしてからお兄ちゃんがお菓子を持ってきてくれた。
「こっち手伝えなくてごめんな」
「いいけど、それよりお兄ちゃんどうしたの?」
何だか考え込むような顔してるからそう聞いたら、帰ってきたときのククルの様子を教えてくれた。
「もう落ち着いてるけどさ…」
お兄ちゃん、こうなるかもってことを考えないまま送り出したこと、気にしてるみたい。
私もジェットがミルドレッドに行くって聞いても何も気付かなかった。
ククル、怖かったのかな…。
「悪いけど、もうちょっと向こうにいていい?」
「当たり前だよ! ククルの傍にいてあげて!」
即答すると、お兄ちゃん、ちょっとだけ笑ってありがとうって言ってくれた。
夕方いつものようにこっちに来たジェットも珍しく落ち込んでて。
ククルのことだもん、気にするよね。
「ジェット」
「ん?」
長椅子に座って。私を見るジェットの顔は、やっぱりちょっと元気がない。
「ジェットがそんな顔してたら、ククルが気にするよ」
「わかってるけどさ」
ちょっと困ったように笑って。
「ここにいる間だけ。大目に見てくれって」
そう言ったジェットは、間違いなくククルを連れて行ったことを後悔してる顔だったから。
「いいけど。ジェットのせいじゃないのにって、ククルだったら言うと思うよ?」
ククルがどんな様子だったか、詳しくは聞いてないけど。ククルは絶対にジェットを責めたりしないってことは、私にだってわかるから。
ジェットはちょっと驚いて私を見てから、ククルそっくりの紫の瞳を細めた。
「…ありがとな、レム」
その顔じゃまだククルは心配するだろうから。
元気になるまでここにいたらいいからね、ジェット。
心配そうなテオと落ち込むジェット。後者はダン以外の前では珍しいですね。
本編はミルドレッドの警邏隊と、雨の帰路。昼食代はいつの間にか案内してくれた警邏隊の人が払っておいてくれました。