三八三年 雨の四日
朝、宿に行ってしばらくして気付いたんだけど。
昨日は早かったロイ、今日は全然出てこないなって思ってたら。私が来るより早く店に行っちゃってるんだよ?
早すぎるよ。ククルと一緒くらいなんじゃない??
ホントにロイってククルのことが好きで。こうやって行動もしてる。
ククルが困るからって、お兄ちゃんはほとんどそんな態度しないけど。
お兄ちゃん、このままでいいの?
朝のうちに出発するから、ロイが荷物を取りに来て。アリーも一緒に挨拶に来てくれた。
「レム、ありがとね。楽しかった!」
「私も楽しかったよ。来てくれてありがとう」
ふたりでぎゅうっと抱き合って。
「エプロン、すごく嬉しい! 大事に使うわね!」
アリー、滅茶苦茶嬉しそう。
よかった! ククルとお揃いも、かわいいレースも、絶対アリーは好きだと思ったんだよ。
「次の訓練にはついてくるから」
「うん。いつでも待ってるよ」
ホントに。次会えるのを楽しみに待ってるからね!
荷物を持って降りてきたロイ。
「色々ありがとね」
にっこり笑ってそう言ってくれる。
「俺はまたすぐじぃちゃんたちと来るから」
「クライヴさんたちの?」
そう、と頷いて。
「だからまた、よろしくね」
そう言って手を振って、宿を出ていった。
「私も行くわね。レム」
アリーは私を見て、とっても優しい笑顔を見せてくれる。
「よかったわね。ちゃんと甘えて、仲良くするのよ?」
ナリスとのこと、だよね。
「うん…」
くすっと笑って。またね、とアリー。
「ありがとう! また来てね!!」
私が叫ぶと、アリーは嬉しそうに手を振ってくれた。
そうしてふたりが帰っちゃって。
結局アリーにも何も話さなかった。
ナリスが来るのは十五日、それまでにちゃんと自分の気持ちが説明できるように考えておかないと。
私の気持ちだもん。私ひとりで説明できるよね。
積極的なロイに兄を心配するレム。もちろん再告白済みなことも知りません。
今回はアリーに相談できずじまいのレム。口に出すことで気持ちの整理がつくことってありますよね。
本編は何気に少ないククルの食事シーン。余り物とはいえ適当なものは食べませんが、適当には食べます。