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三八三年 祝の四十一日

 昨日の夜、色々気になっちゃって。何だかちょっともやもやしてる。

 ナリスに自由に好きなことをしてほしい。

 でも、会いに来てほしい。

 こんなこどものワガママみたいに矛盾する気持ち、困るだけだもん、ナリスに言えないよ。

 訓練も今日で終わりだし、もうちょっと自分で考えてみよう。



 今日は恒例のお茶の日だから。

 皆が店に行ってる間、お父さんとお母さんとソージュと、宿の食堂でお茶をする。

「今度こそククルに休んでもらって。夜は久し振りに皆を招待するから、ソージュもいてくれ」

 お父さんの言葉に、ソージュは食べてる手を止めて。

「俺も?」

「当たり前だろう。ソージュのおかげで本当に助かってるんだ。労うのは当然だろう?」

 お父さんに即答されて、ちょっと嬉しそうな顔してる。

「ホントに。ありがとね、ソージュ」

 そう言うと、ソージュは私を見て、瞳を細めた。

「うん、俺こそ。ありがとう」

 そう呟くソージュが一瞬悲しそうに見えたけど。気付いたらいつもの優しい笑顔だったから。

 気のせいだったのかな。



 追加訓練も終わって。皆楽しかったって言って帰ってきた。

 うん、皆笑顔だね。よかった。

「色々と騒がせてすまなかった」

 マジェスさんがそう言って謝ってくれるけど。

 色々ありすぎた前回に比べれば、今回は落ち着いてたほうだよね。

 そう言ったら、レンとセラム、首を傾げてた。

 カートからは何も聞いてないのかな。



 夜、仕事が一段落した頃に、今日もナリスが来てくれた。

 こうしてふたりでお茶するのも今日が最後だね。

「レム」

 厨房に行って、お茶を淹れる準備をしようとしてたら、ナリスに呼ばれた。

「おいで」

 ちょっと手を広げて。にっこり笑ってそう言われる。

「お湯を…」

「俺が先」

 そ、そうなんだ?

 これも甘えてくれてるってことなのかなって思いながら、ナリスの前に行ってぽすんと身体を預ける。

 ぎゅっと抱きしめられたから、抱きしめ返して。

 いっぱいキスされて、ぎゅうぎゅう抱きしめられて。恥ずかしいけど、ナリスは明日帰っちゃうんだもんね。

 いつも恥ずかしがってばっかりだから、少しは自分からって思うんだけど。そんなヒマがないくらいで。

 気が済んだのか、離してもらえた頃にはもう私のほうはいっぱいいっぱい。

 ぼんやりする頭でお茶をと思って動きかけたら、ナリスが止めて座らせてくれた。

「俺が淹れるよ」

 頬にキスしてお湯を沸かしに行くナリス。

 優しくて時々強引な私の恋人。

 旅が好きで。

 ギルド員が天職で。

 なのに私に会う為に、ここにばっかり来て、いてくれて。

 私は甘えていいのかな?

 ナリスに我慢させてないのかな?

 そう、思うけど。

 来てくれるのも、いてくれるのも、嬉しくて。

 私だってナリスに会いたくて。

 だから聞けないよ。

 涙が零れそうになったから、立ち上がってナリスをうしろから抱きしめる。

「レム??」

 驚いたナリスの声。

 背中側だったら顔を見られないから。

 もうちょっと待って。

 いつもみたいに笑えるようになるまで、もうちょっと。

 訓練最終日、宿は平和です。

 ちょっと考え始めるレム。中央はちょっと遠いです。

 本編は楽しそうなテオと惑うククル。

 ククルは基本思い込みが激しそうです。

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冬野ほたる様 作
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