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三八三年 祝の四十日

百話目です!

ありがとうございます!!

本編『祝の四十二日』のネタバレを含みます。

 訓練もあと二日。成果がどうとかはわからないけど、皆いい顔で訓練に行ってるよね。

 毎回何かと問題があるけど。同年代の皆ががんばってるのを見ると、私もって思う。

 今まで当たり前すぎて疑問にも思ってなかった、ここで働くってこと。

 自分の家ってことを差し引いても、私はここで働くのが好きってことに、セレスティアへの旅の間に気付いた。

 今回も皆が笑って帰れるように。私にできることは、ほんのちょっとかもしれないけど。

 精一杯やるね。



 午後からお兄ちゃんが訓練に行くからって、お昼前にククルが先にお菓子を持ってきてくれた。

 お茶の時間用ってわかってるんだけど、渡されると食べたくなるよね。

 ウィルにもらったジャム入りのお菓子、珍しく感想を教えてって言われた。

 前にもらったジャムも、ふたりで一緒に味見して、お茶に合いそうとか、焼き菓子に添えたらとか、色々考えて楽しかった。今回のも味見させてもらったけど、ククル、これは生地に入れたら…ってずっと言ってたもんね。

 前より大きい瓶だったけど。多分ククルには足りないんだろうな。

 そんなことを思いながら。つまみ食いしたくなるのを我慢して、厨房に置いてきた。

 あとで食べるの、楽しみだな。



 追加訓練が終わってから。幸せそうな顔のレンとセラムにどうしたのって聞いたら、久し振りのククルのお菓子が嬉しかったんだって。

「あのときは、ククルさんの食事とお菓子とテオの夜食がなかったら、絶対ついていけてなかったって思うよ…」

「楽しみ、食べることしかなかったもんね」

 遠い目をしてセラムも呟いてる。

 確かに皆、食べるのと寝るのと以外はずっと訓練だったもんね。

 今も訓練だから前みたいに毎日食べられないけど。私もちゃんと我慢してるからね?



 夜に厨房でお茶を飲みながらナリスと話すのも、すっかりいつものことになって。

 誰にも気兼ねしないでふたりでいられて嬉しいよね。

 お湯を沸かしながら、今日のことを話して笑って。この時間がすごく好き。

 もちろん離してもらえなくなるのも嫌じゃないよ?

 恥ずかしくてナリスには言えないけど。

「明日、最終日だね」

 そう言うと、そうだねって返してくれる。

「雨の月、俺も休みもらえたから」

 隣から肩を抱かれて引き寄せられたから、そのままナリスの肩にもたれた。

「迷ったんだけどね。去年までイルヴィナのことを全然知らなかった俺が、ただジェットといたからってだけで休みをもらえるのは違う気がしてて」

「ナリスらしいよ」

 ただ与えられたからってだけじゃなくて。自分にとっての理由をちゃんと考えてる。

 そう思ったから素直に言うと、ナリスは反対の手を私の頬に触れて、自分のほうを向かせてキスをして。

「ホントは遠慮なく全部もらって、ずっとここにいたいんだけど」

 まだ鼻先が触れるくらい近くで、そう呟いて。

「クライヴさんたちの命日には来たいから、半分だけもらうことにした」

 私が返事をする前に、また唇が重なる。

 しばらくそのまま、キスされて。

 離れたナリスは、ぎゅっと私を抱きしめた。

「ジェットたちがいない間はどうするの?」

 私もナリスの背中に手を回して。くっついたままそう聞くと。

「どこに行くかはわからないけど、ほかのパーティーに混ぜてもらおうと思ってる」

「そんなことできるの?」

「単独は基本禁止だからね。たまにあるよ」

 驚いて顔を上げると、答えついでにキスされる。

「せっかくだったら、普段行かない西のほうとか、東の奥とかに行けたらいいな」

 調査先は土地勘のあるところが優先されるらしくって。北は開拓中だから別として、ジェットとダンが詳しい南に行くことが多いんだって。

「あんまり日数がないから、そう遠くへは行けないだろうけどね」

 そんな話をするナリスの顔は、楽しみにしてるって気持ちが滲み出てて。

 やっぱり旅が好きなんだね。

 よかったねって言いかけて、気付いた。

 クライヴさんたちの命日だけなら、そんなに休まなくてもいい。

 違う気がするって言ってる休みをそれでも多めにもらうのは、やっぱり私に会う為なのかな。

 思わずナリスにしがみつく。

 嬉しいよ? 嬉しいんだけど。

 もっと日程があれば、遠くまで行けるんだよね?

 ナリスが行ってみたいところに行けるんだよね?

 私がいるのが、ここじゃなければ。

 ナリスはもっと自由に、好きなことができるのかな…。

 前回の待遇のよさを実感するレンとセラム。五食も食べてたら胃が大きくなりそうです。

 旅好きのナリスと、ライナスを離れられないレム。待つのは平気でも、負担をかけたくはないのです。

 本編は柑橘ジャムにハマるククルとウィル。パウンドケーキに練り込もうものなら、一瓶くらいいっちゃいますよね。


 今回百話目、読んでくださる皆さんのおかげです!

 不定期と言いつつ、ついつい毎日上げてしまう…。レム編、書きやすいんですよ…。

 おめでとうありがとう企画はこないだのナリス編ということで!

 なかなか本編に追いつけませんが。がんばりますね〜!

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冬野ほたる様 作
― 新着の感想 ―
[一言] こちらも100話目、おめでとうございます。 最初は短く、なんて言っていて 気付けばそれなりの分量が投稿され続けており この文量を毎日投稿って 相当大変だったのでは、 と思います。 お話も…
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