栄光とは、栄華とは
戦場から4キロ離れた指令本部まで鉄のにおいが漂っている。
鼻の奥にこびり付くような、そんなにおいだ。
敵側劣勢、自陣優勢の出来レース。始まる前から勝負は決まる。
お互いのエゴを通すための戦いは、そのエゴが強いほうが勝つのがセオリーだ。しかし、傲慢は毒でもある。エゴと論理での戦いは、論理が勝つ。傲慢が勝つのは、それが英雄であるときだ。
*
司令部を戦場近くに置いたのは、無線を活用するためだ。
相手は玉が積まなければ負けではないと思い込んでいるだろうが、それは違う。自分の持ち駒を消費するということは、自分の逃げ道をなくすということだ。
実際問題、敵陣本部の背後に迫りつつある別動隊はの侵入と、もうじき摘む戦場との挟み撃ちにあっている。
「シャドー、畳みかけろ。あとは雑にやっていい」
「了解、司令官」
戦場の狼に一言告げると、了解の返事をもらう。文字通り、雑にやっているようだ。
無線はいい。伝達の速さは、陣形の速さ。戦場の掌握力は大体これで決まる。
戦場を駆け回る少年、シャドーはまるでダンスでも踊るかのように大釜を振りかざす。
見ていて壮快というか、あいつの前ではすべてが塵だ。
「トノ様、竜騎軍が全部来んぞ!」
戦場を傍観していると、隣で筋肉バカが、先ほどのぞいていた望遠鏡をぐいぐい押し付けてくる。
仕方なくのぞいてみると…確かに、小柄な奴が数体、突っ込んでくる。
「どうする、アニキ?」
無線から連絡。先ほどまでは司令官などと呼んでいたが…この呼び方は完全にオフモードみたいだ。声がダルさであふれている。
「こっちで処理する。適当によけといてくれ」
無線で命令を送りながら本部に待機している兵にジェスチャーを送る。
そのジェスチャーを見て兵たちは、せっせとあるものを運んできた。
それは無機質な棺桶だ。
「でたでた!トノ様の発明品!」
「追尾型魔力弾道ミサイル。魔力調整できるからちょうどいいんだよなぁ」
火力調整をしている兵士に「3/8」と合図を送る。
「左から順番に打つんだぞー。…補足次第打て」
用意された棺桶からは禍々しいチャージ音が奏でられ、最高潮に達するや否や赤黒い光線が放物線を描きながら飛んで行った。
見るまでもないが観察しておく。
もともと生け捕りにする予定だったが半分は死んでしまったっぽい。
細かな火力調整と騒音が課題だな。
「うし、みんな。帰る準備するよ」
戦地での嗜好品であるコーヒー…らしきものをグイっと飲み干し、レジャー用の椅子を折りたたんで貨物竜車に乗せる。このくらいの運動はしなければすぐデブになるから。
「まだ夕方か」
計算通りだが早い戦闘終了。
逃げ出した敵本陣が別動隊に皆殺しにあっているころだ。
虫の息でいる騎竜と戦場の兵を回収して、帰るとしよう。
そう思いながら竜車に乗り込み、俺、伊黒ハイルは報告書を書く準備を進めた。
初めまして。
頑張って更新するので高評価よろしくお願いします。