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魔王はまだ討伐しないようなので異世界ライフを楽しみます  作者: 転香 李夢琉
番外編3 みんなの日常

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ただのバレンタインだよ?

この話は約半年後の出来事であり、本来ではあり得ないタイミングで書いているため未確定要素や知らない場所である可能性があります。その旨を理解した上でただの番外編としてお楽しみください。




 ――二月十四日。それは本来元の世界ではバレンタインというイベントがある日だ。が、なんとこの世界にもバレンタインが存在しているらしい。どうやら過去に召喚された日本人がバレンタインというイベントを作ったみたいなのだ。

 と、言うことを知ったのはなんと二日前の今日である。


「バレンタインがあるんならやっぱりやんないとね!」


「そうですね」


 咲夜と美玲はその材料の買い出しに市場へ来ていた。


「この世界にもバレンタインがあるんですね。咲夜さんに言われるまで失念していました」


「ね! 私もたまたま聞かなかったら覚えててもしなかったな~」


 バレンタインの定番と言えばもちろんチョコレート。そして友チョコや義理チョコ、本命チョコだろう。どれだけ丹精込めて作れるかが一番のポイント。


「みーちゃんはもうどんな感じにしようか決めてるの?」


「そうですね……例年通り、チョコクッキーにしようかなとは思っているんですけど、この世界でオーブンを見たことが無い。ですよね?」


「ああ~」


 材料を手に入れられたとして、クッキーを焼く工程が必要だが魔法で火を出して一定に温めるのは難しいし、やったことがないのでそもそもできるか怪しい。

 料亭でキッチンを見たことはあるが、大抵かまどか魔導コンロと呼ばれる魔導具を使った物しか温めに使っているのは見たことが無い。


「じゃあ魔導具店に行ってみよっか」


 ――と、言うことで魔導具店へ来た。それもかなり古びた感じの外観のお店だ。


「こういうのの定番はねアンティークなお店に行くのが定石なんだよ」


「? そうなんですか」


 ドアの取っ手以外あまり触れないからなのか植物の蔦や苔が窓のガラスや石垣にもくっついている。ドアを押して入店するとカランカランと入店音らしき鈴の音が聞こえた。


「……いらっしゃい。あんまり見ない顔だね」


 拡大鏡なのか、分厚いメガネを右目だけに掛けている、背丈も低そうなお婆さんがいろいろな物が散乱した机の上で作業をしている。一瞬だけ咲夜達を確認して興味なさげに集中していた。


「(ね。当たりでしょ?)」


 スッと小声で口元を手で隠しながら上機嫌に言うと店内を見物し始める。


(魔導具って私でも作れたら絶対おもしろいと思うんだよねー)


「私たち探してる魔導具があるんですけど」


 ピクッと作業している手を止めるとため息をつきながら拡大解釈らしきメガネをカチャッと退かした。


「何が欲しいんだい?」


「このくらいの大きさの箱で、温度を一定に調節できて中に入れた食べ物を温めることができる魔導具」


「……」


 なぜか黙ってしまった。少し考えるような動作をすると一気に目がキラッとし鋭い視線になった。


「それはあんたが考えたのか?」


「考えたって言うと違うけど無いのかなって」


「……詳細を教えなさいな。造ってやるから」


 願ってもないことだ。まさか存在しないから造ってくれるとは。

 その後大きさや、調節できる大体の温度などの設計をするため質問攻めにあったのは言うまでも無い。


 ――翌日。バレンタインまで日が無かったので急かしてしまったがそれでもたった一晩で完成させてしまった。流石は老舗の店主。


「材料も揃ったし、オーブンも造って貰えたことだし早速取りかかろっか!」


「そうですね!」


 小一時間後。


「……飽きた」


「ええっ!? まだ寝かせるとこまで行っていませんよ!?」


 出だしこそ良かったものの途中から完全にペースダウンした咲夜はそのままの勢いで手が止まってしまった。


「だって~クッキーなんて作ったことないもん……いっつもは市販のチョコを適当に崩して固めてるだけだし」


「咲夜さんが私もクッキー作ってみよっかな~って目を輝かせていたんですよ」


「そうなんだけど~いざやるとなるさ~……」


 明らかに諦めるムード、というかいじけている。


「生地さえできれば寝かせるまで休憩できますからね。ほら、私の分はもう出来ましたから手伝いますよ」


「うぅ~ありがとうみーちゃん」


 ――なんやかんやあり、ようやく完成した。


「みーちゃんのかわいい!!! すごい!!」


 オーブンから取り出した完成品を見て自分のは我知らず真っ先に美玲のクッキーを褒める。そしてチラリと咲夜のクッキーに目を向け、そのあまりにもの出来の違いに落胆を隠せない。


「なんでこんなに違うの??? みーちゃんに手伝って貰ったのに……」


「はじめてにしてはよく出来ていますよ。形も残っていますし炭にもなっていませんからね」


 なんだか含みのあるような言い方に疑問を覚えてしまうが、今はこのクッキー(?)を試食してみる。


「! おいしい……あ、崩れた」


 一口かじるとそのままボロボロと崩れ落ちてしまった。これでは一口で頬張らなければ食べられない。


「バレンタインは明日ですけど、練習して崩れないように頑張りましょう!」


 ――バレンタイン当日。みんな都合をなんとか合わせて時間を作ることが出来た。テス王国の家に七人集まり、久々の顔合わせに和気あいあいとしている。


「はーいみんな注目!! この世界にもバレンタインデーがあるということで、私とみーちゃんからみんなにチョコクッキーだよ~!!」


「まじか!」「バレンタインあるんだ!」「今年もチョコクッキーか」


 それぞれが驚いている中、影兎だけが別の驚き方をしていた。


「さ、さくちゃんが料理……? ど、どんなアダマンタイトが」


「もー! そんなこと言うんだったらえっちゃんにはあげないよ~。はいどうぞ」


 残念ながら透明な袋はこの世界には無かったため紙袋だが、中からブツをとりだして影兎は思わず目をまん丸にしてしまう。


「すご……」


 そこには人の形をしたクッキーの姿があった。一つはめちゃくちゃ上手で店頭に置いていてもおかしくないほど精巧な影兎を模した形の物。もう一つは形こそしっかりしているが顔や服などが落書きにしか見えないほど雑で、所々線がガタガタのモノ。


「やはり美玲が作るクッキーは何回見てもすごいですね。これでお菓子作りがただの趣味なのはもったいないですよ」


「だよな。しかも柔らかくてうめぇし」


 幼馴染みの彼らにとって見慣れている美玲のクッキーを感想もそこそこにパクパクと頬張る二人。


「よくクッキーなんて作れたね。オーブンって無かったよね?」


「オーブンは作って貰いました。魔導具ってすごいですね」


 料理のできる仕佐もそれらしい感想で感心するように食べていた。条夜もボリボリと次から次へと口の中に放り込んでいく。


「まじでコレみたいなお菓子久々に食べた気がするな」


「どう? えっちゃん」


「…………おいしい。すごく、おいしい」


 大事そうに噛みしめながら咲夜が作った方のクッキーをゆっくりと食べていくと、ニコッと笑みを作った。


「ありがと。さくちゃん」

これはデレです。


滅多に投稿日がこういう行事ごと? に被ることがないのでね。どうせならと思って書きましたよええ。

前書きにも書いたとおり、まだ作中では召喚されてから半年しか経過していないので本来なら全然夏なんですよ。でもデレるために半年後ということで書きました。

未確定要素がでかすぎる!! でもだいたいコレをしてるんじゃないのかな~というプロットを見ながら考えたわけだが。良きだね


はい。番外編はもう一つあります。ホワイトデーではありません。

次の投稿は来週の21日ですね。そしたら来月から新章、6章だっけ? に入ります。

お楽しみに。ではまた――

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