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調理部部長のリボン  作者: 大和麻也
Episode 2 -- 生徒会長の腹案
15/58

2-7

 二問目はいわゆる仲間分けゲームのような出題。グループされた単語に法則性を見出して、新たな単語を仲間分けしたり、その法則自体を指摘したりする、陰湿なゲームだ。

 今回の回答は前者にあたる。六つの単語にみられる「ある」「なし」のルールを見抜いて、部屋から新たに「ある」に含まれるものを探し、写真に撮る。

 またしても瞬時に答えを察してしまった桜木先輩は、テーブルの上を撮影した。

「ティーカップ、これ以外にそれらしいものはないはずだ」

 彼は二問目のほうが意地悪だと言ったように、わたしはまだ理解が追いついていない。

 彼の解答も含めると、「ある」に含まれるのは「食べ放題」「ホース」「コースター」「ティーカップ」で、「ない」には「飲み放題」「蛇口」「鍋敷き」が分けられる。単語ごとに対になったジャンル――飲食、水回り、食器類――は思いつくのだが、それを分かつルールには見当がつかない。

 わたしの解せない表情を察してか、桜木先輩はタブレットを操作しつつ語る。

「出題としては下手なほうだね。分類した単語に法則性を当てはめるには、言い換えが必要なものとそうでないものとがある」

「つまり、単純に読んだだけでは解答できない、ということですか?」

 その通り、と彼は頷く。

「わかりやすいのはふたつだ。『食べ放題』は『バイキング』と言い換える。『コースター』は言い換えが必要ない。このふたつで連想できるかな?」

 バイキングに、コースター。

 そう言われれば、ピンとくるものがある。


「遊園地のアトラクション?」


 船のような乗り物が前後に揺れるバイキングに、言わずと知れたジェットコースター。これらの遊具に並ぶものがあるとすれば、コーヒーカップ。実際にこの部屋にあるのは、ティーカップなのだが。

 桜木先輩の口調は嘆息交じりだ。

「その通り、遊園地の遊具だよ。ティーカップとコーヒーカップの違いは、この際どうでもいいだろう。それより『ホース』がわかりにくい。これは水回りの道具でなくて、英単語の『馬』のことだ」

「ということは、メリーゴーラウンドを想像しろと? 難易度はどうなんですかね」

「僕もあまり妥当ではないと思うよ、その意味でも出題が悪い。英単語を翻訳させているし、『馬』に気づいてもそれをメリーゴーラウンドにつなげるには、ちょっと想像を飛躍させるようでもある」

 高校生の問題なんてこの程度、と捨て台詞を吐いたところで、性根の曲がったカボチャが『正解だよ!』と皮肉っぽく叫んだ。

 残り時間は七分以上ある。この調子なら脱出に失敗することはないだろう。むしろ、五分を残して脱出できるかという、別のチャレンジをも視野に入れられる。

『キミたちはかなり賢いようだ。手加減はなしだよ、最後の問題だ』



 (11) (7) (6) (2) (8) (9) (12) (4)

 ※ただし、30をこえてはならない。


 ……このともだちをみつけたら、テーブルのいすにすわらせてしゃしんをとれ!



「三問ともジャンルが違うなら、なかなかゲーム性があるじゃないか」

 桜木先輩はそう言って茶化しながらも、二問目までのように一瞬で回答することはできず、ヒントを探して部屋を見回した。

 三問目に独自性があるとしたら、写真を撮る以外にもミッションがあることだ。「ともだち」を見つけて、お茶が準備されたテーブルに着席させなければならない。この三問目は、闇雲に撮った写真でゲームをクリアされないために設定されたのだろう。

「ともだち、というと、そのぬいぐるみたちのことですかね?」

「僕もそう思う。時間もあることだし、調べてみよう」

 暗幕の傍にいた動物のぬいぐるみたち。多数あるそれらを適当に手に取って、出題にあるような数字が刻まれていないか調べてみる。顔の向きを変えてみたり、逆さまに吊るしてみたり。

 ただし、どれも何の変哲もないぬいぐるみだった。

「ぬいぐるみから細工を見つけるより、真面目に暗号を解く方法を考えないといけないみたいですね」

 わたしは桜木先輩にそう提案しながらも、答えとなる「ともだち」に見当がついていた。「ともだち」とは、この空間のテーマからすれば不足している登場人物だから、あとはどうやって問題を解けばその答えに至れるかが問題だ。

 桜木先輩は気がついているだろうか。




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