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それから、少しだけ彼と親しくなった。
親しくなったといっても毎日連絡をとったり会ったりしているわけではない。
ただ、休日の朝ご飯を一緒に食べるだけ。
私はパンを焼いて、スープを作って、いつもと同じように窓の外をぼんやり見つめる。
彼は斜め横の席について大きな口でそのパンを食べて少しだけ雰囲気を柔らかくする。
彼のうさんくさい笑みはいつの間にか消えていた。
聞けば仕事以外で笑っているのは損した気分になるという。
なんとなくわかる気がして、だったら別に笑わなくてもいいですと言ってからだっけか。
歳が少しだけ離れた彼が敬語を使わなくなったのは8回目の朝だ。
あの飲み会で見せた彼はどうやらよそ行きの彼で、本物の彼は無口だしほぼ無表情で表情筋が活躍しない。
でも、それでいい。
私だってたくさん話す方じゃないし癖のようになっている愛想笑いを彼の前でするつもりはない。
ぽつりぽつりと交わされる会話は、きっと男女の関係にはみえないだろう。
でも、みえなくていい。
みる相手もいなければ、そうみえたいと思っているわけでもないのだから。
お互いの世界は不可侵。
重なり合った2/7日の非日常だけが私たちの世界の端からにじむように浸食していった。
それを苦だとも嫌だとも思わない私と彼を、どうか許して欲しい。