すべての色をなくした世界で
桃原はる、28歳。
自他共に評価は可も無く不可も無い容姿に少しだけテンポのズレた人間。
これといって取り柄もなく、自信もない。
人に流されて、空気に流されて、世界の流れに溺れて生きてきた。
キラキラ色づく恋なんてもちろんしたことがない。
淡く色づく愛なんて出会ったこともない。
でも、それでいいんだ。
これからも誰の目にも映ることなく、透けて流れていくように生きていくから。
「この世界に色を付けるとしたら、何色だと思う?」
いつか問われたその問いの答えを、私は未だ見つけられないでいる。
あのとき、口ごもった私に微笑んだ彼はもういない。
無色透明のまま生きていた彼女の世界に色を乗せたのは、薄墨色を纏う彼だった。
自他共に評価は可も無く不可も無い容姿に少しだけテンポのズレた人間。
これといって取り柄もなく、自信もない。
人に流されて、空気に流されて、世界の流れに溺れて生きてきた。
キラキラ色づく恋なんてもちろんしたことがない。
淡く色づく愛なんて出会ったこともない。
でも、それでいいんだ。
これからも誰の目にも映ることなく、透けて流れていくように生きていくから。
「この世界に色を付けるとしたら、何色だと思う?」
いつか問われたその問いの答えを、私は未だ見つけられないでいる。
あのとき、口ごもった私に微笑んだ彼はもういない。
無色透明のまま生きていた彼女の世界に色を乗せたのは、薄墨色を纏う彼だった。