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揺れる想い➂

呆然としていた私の頬にふわっと暖かい手が触れた。


「リカルド・・・様?」

いつの間にかリカルド様が私の隣に移動して来ていた。


辛そうな顔をしたリカルド様の顔・・・。

どうして・・・リカルド様がそんな顔をするの?

私を振った事への罪悪感?それとも・・・・・・



「・・・半年で良いから時間をくれないかな?」


・・・え?


「情けないし、勝手だけど・・・。僕は君を手離したくない。きちんと君に釣り合える様に何かを成し遂げてから隣に立ちたいんだ」


それって・・・?え・・・?


「絶対に結果を出すから!・・・それまで待っててくれる?」

シュンとお耳を垂らしたリカルド様がジーっとこちらを見つめている。


うっ・・・。そんな顔をしたリカルド様も可愛い。


・・・振られてなかった。私の早とちりだった・・・・・・!

安堵のあまりに涙が溢れそうになる。


良かった・・・。この恋はまだ諦めなくて良いんだ・・・・・・。


「私で良いのですか・・・?」

「勿論だよ。僕のつがいはシャルロッテだって本能が告げてる。あのね、シャルロッテは知らなかったみたいだけど・・・獣人の尻尾は、成長してからは番にしか触らせないんだ。肉親にだって触らせないんだよ?」

ニコッと笑うリカルド様。


あの時のお兄様の言葉の意味が・・・分かった。

その意味を知っているリカルド様と私とでは気持ちの差が全然違っていた。


という事は・・・あの時からリカルド様は私を・・・・・・?



「リカルド様が大好きです」

私はリカルド様にギュッと抱き付いた。


「私も・・・自分が成すべき事を終えて笑顔でリカルド様の隣に立ちたい」

「うん」

リカルド様は私を突き放したりはせずに、優しく頭を撫でてくれる。


「その時に全部話しますから・・・私の話を聞いて下さい」

「うん。分かった」

リカルド様は私の頭にキスを落としてから、優しく私を剥がした。


「シャルロッテ。これを・・・」

そう言いながらリカルド様がジャケットのポケットから取り出したのは、白く小さな箱だった。


パカッと蓋を開けたその中に入っていたのは・・・・・・


「・・・ネックレス?」

「うん。会えない時も僕を思い出して欲しいから」


それでなくてもシャルロッテの側には、君に好意のある男が沢山いるから・・・。

そう呟いて尻尾を不機嫌にブンブンと振るリカルド様。


私は目の前のネックレスに気を取られ過ぎて、その呟きは全く聞こえていなかった。


「これは・・・シーラ?」


トップにシーラの花を小さく型どったネックレス。

花の中心にはリカルド様の瞳と同じ色の宝石が填められていた。


「嬉しいです・・・」

はにかみながらリカルド様を見上げると

「着けてあげる」

リカルド様は少しだけ赤い顔をしながら私の首にネックレスを着けてくれた。


「・・・似合いますか?」

「うん。凄く可愛いよ」

微笑むリカルド様につられて、私も微笑んだ。


「半年間、頑張るよ」

「私も頑張ります。あの・・・お手紙は書いても良いですか?」

「うん。僕も書くよ。・・・そういえば、ずっとシャルロッテからシーラの香りがするのが気になっていたんだけど・・・」

「シーラで練り香水を作ってみたのです」

「なるほど。普通の香水とは違うの?」

「はい。付け過ぎによるキツイ匂いはなく、優しい香りが続きます。ナーナに混ぜて作っているので子供でも使えますよ」

「練り香水か・・・」

顎に手を当てながら考え込むリカルド様。



ふと、私の中で悪戯心が芽生えた。


無防備な状態のリカルド様の背後にそっと回り込み・・・・・・。



ガシッと、強過ぎない力でモフモフの尻尾を捕獲した。


「ふふっ。捕まえました」

顔に尻尾をスリスリと擦り付ける。


「シャルロッテ・・・!?何を!?」

慌てるリカルド様に構わずスリスリし続ける。


「リカルド様の匂いを感じたくて練り香水を作りましたが・・・やっぱり本物の方が良いですね」


リカルド様のモフモフは最高です!!


「もう・・・好きにして・・・」

リカルド様は真っ赤になった自分の顔を両手で覆い、抵抗するのを止めた。

私の好きな様にさせてくれる様だ。



これは・・・夢じゃないよね・・・?

目尻に浮かんだ涙を拭いながら、これから会えない半年分のモフモフを堪能し続けた。






「じゃあ、またね」

「はい!」


次に会えるのは半年後・・・か。

またリカルド様に笑顔で会える様に頑張ろう。


別れ際。玄関ホールでそう心に誓った。




******



「言ったの?」

「うん。言った」

にこやかな笑顔を浮かべながら対峙するルーカスとリカルド。


「悪いけど、君の大切な妹は僕が貰うよ」

「ふーん」

宣戦布告とも取れる発言をしたリカルドを瞳を細めながら見るルーカス。


シャルロッテが魔王の微笑みと称する恐ろしくも冷たい笑みを浮かべているが、リカルドは怯む事もなく真剣な眼差しで見つめ返している。


「本気・・・なんだ?」

「ルーカス・アヴィ。君相手にこんな冗談は言わないよ」

「まあ、半年?せいぜい頑張れば良いんじゃない。その間にシャルロッテが誰かに奪われても知らないけどね?」

「そうならない様に頑張るだけだ。それに・・・何かあればいつもの様に教えてくれるんだろう?()()()()()()

「ふん」

「頼むよ。ルーカス」

「悲しませたら・・・殺すよ?」

「分かってる」

「・・・今日だって泣かせたくせに。シャルロッテは気付かれてないと思っていたみたいだけど、全部顔に出るんだからバレバレだって。あれで隠せてると思っているのかね」

「あれは・・・僕の言い方が悪かった。傷付けるつもりはなかったんだ」


素直に頭を下げるリカルドに、ルーカスは大きな溜息を吐いた。


「全く・・・嫌な役目だ。大切な妹を誰かさんに取られる予定の僕の気持ちなんて、誰にも分からないよね。まあ、シャルロッテには幸せになって欲しいから多少の協力はするけど」

「・・・うん。ありがとう」


リカルドが右手の拳を上げると、ルーカスは無言でその拳に自分の拳を合わせた。


「じゃあ。また」

「はいはい」

ルーカスは馬車に乗り込んで去って行ったリカルドが見えなくなるまで見送った。




「なーんてね。今日は見逃したけど、そう簡単にくっ付けないからね?さて、僕からの試練にあの二人は耐えられるかな?」

ルーカスはフフっと綺麗な顔で微笑んだ。

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