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ブームの後始末➀

悩み事が減ってきたお陰で、最近は毎日が充実している。


お酒が飲めないストレスはあるが、お母様からお願いされたドライフルーツ作りをしたり、ドライフルーツを作ったり、ドライフルーツを作ったり、ドライフルーツを作ったり・・・


って・・・あれ?

何か最近、ドライフルーツしか作ってない気がする。


ピチピチになったお母様の影響で、巷はマダム達による『ドライフルーツブーム』なのだ。

ドライフルーツの作り方を知りたいと言う人には、作り方のレシピをあげてるし、誰にでも作れる様になっているののだが・・・それでは駄目らしい。


私が作った物は()()()()()のだそうだ。


何が違うかというと・・・私の作ったドライフルーツには()()()があるらしいのだ。

フルーツの種類にもよるが、食べた瞬間からお肌がピチピチになる。しかも一度食べただけで、一週間位効果が持続するらしい。


・・・こ、これはもしかしなくてもチートさんのせいなんじゃ・・・。

私はゴクリと唾を飲み込んだ。


お母様が製造元(私)の事を必死に隠してくれているから、今はドライフルーツを作り続けているだけで済んでいるが・・・身バレでもしたら、このまま一生作らされ続ける可能性が高い。


女の人怖い・・・。

私は身震いしながら自分を抱き締めた。


改めて自分の規格外な能力を認識した気がする。

後、迂闊さも・・・。



マダム達に暴動を起こさせない為にも、今後もある程度のドライフルーツを作り続けなくてはならないのだそうだ。

チートさんのお陰で大変ではないが・・・こんなドライフルーツ製造マシーンの様な不自由な生活嫌だ!!


・・・と、いう事でここにやって来た。




「今日はどうしたわけ?」

訝し気にこちらを見上げるのは、自室で魔道具開発をしているミラである。


そう、私はミラの部屋にやって来たのだ。



「・・・えーと、ミラに作って欲しい物があって」


自分のしでかした事の責任をミラに手伝って欲しいとは言い辛い・・・。

モジモジしながら告げると、深い溜息を吐いたミラが椅子から立ち上がり、こちらに向かって来た。



あれ?

私と並ぶミラを見て違和感を覚えた。


「・・・何?」

不機嫌そうに眉間にシワを寄せながらこちらをジッと睨むミラ。


「ミラ、背が伸びたんだね?」

少し前は同じ位だったのに、いつの間にか少しだけ抜かされていた。

背比べの様に頭に手を翳すと、今度は呆れた様な眼差しを向けられた。


「成長期だし」

「そっか・・・。ミラは男の子だもんね・・・」

「ってか、何なの?何で今日はそんなに暗いわけ?怖いんだけど・・・」


・・・失礼だな。こら。

人がしおらしくしてれば『怖い』とか言って。


「んー。自分の迂闊さが身に染みてね・・・」

「・・・今頃?」

「今頃って何!?」

「散々好き勝手にやる事やっといて、今?まあ、取り敢えず話を聞いてあげるからソファーに座りなよ」


むむっ・・・。この酷い言われよう・・・。

しかし、心辺りがあるだけに真っ向から否定が出来ない・・・。


ソファーに誘導され、ミラと向かい合う形でソファーに腰を下ろした。


「お茶飲む?」

「あ、私がやるよ?」

「いや、ミラがやるから良い。今のシャルロッテに任せたら凄い事になりそうだし」

苦笑いを浮かべたミラは、近くにあった紅茶セットを持って戻って来た。


「今日は少し暑いからアイスティーにしてもらったんだ」

ミラはそう言いながらアイスティーをグラスに注いでストローを挿した。

この氷はノブさんによるものだろうか。


「はい」

「ありがとう」

アイスティーを受け取った私はそのままチューっとストローを吸った。

冷たいアイスティーがとても爽やかで心地好く感じる。


「それで?」

ストローを使わないミラが、自分のグラスを傾けながら尋ねてくる。


話を促された私はドライフルーツの件をミラに説明した・・・。




「あー・・・・・・あの『幻のドライフルーツ』は、やっぱりシャルロッテの仕業だったんだ」

ミラは苦笑いを浮かべた。


「・・・知ってるの?」

「噂だけはね」

「そっか・・・。実はこれなんだ」

私はポケットの中から、小さなビンに入っている紫の葡萄の粒の形をした【モスク】のドライフルーツを取り出した。


モスクのドライフルーツを目にしたミラは、黙ってジッと瓶を見つめ始めた。

恐らく、鑑定をしているのだろう。


「・・・また馬鹿みたいな効果付きのを作ったね」

瓶から目線を外したミラが、呆れた様に笑いながら私を見た。


「どう・・・なってるの?」

「ええと・・・・・・」


《【モスク】のドライフルーツ。

疲労回復、高血圧予防、便秘解消。若返り。効かぬなら効かせて見せようホトトギス。超即効性。これであなたは老い知らず!今までの貴方にgood-bye!!》


oh・・・。

いつものことながら・・・何と言う事だ。


「ねえ、『ホトトギス』って何?」

「・・・うん。そこは気にしないでくれると助かるかな・・・」

私は遠い目をした。


どこか遠い所へ行きたいなー。


「あのさぁ、現実逃避してないで、ちゃんと現実見なよ」


ぐっ・・・正論が胸に突き刺さる。


「作るんでしょ? 何だか分からないけどさ」


ここに尋ねて来た本来の目的を思い出した私は、改めてミラを見た。

ミラはきちんと私を見てくれている。


「あのね。オーブンを作りたいの」

「オーブン?」

「そう。温めたり、乾燥させたり・・・ドライフルーツを作る為の道具?なんだけど・・・私がイメージしたのを形にしたら、さっきミラに視てもらったみたいな効果って付くかな?」

「んー・・・それはどうだろう?完成してみないと分からないな・・・」

「・・・そっかー。多分、それが作れたら問題は解決すると思うんだよね」

「大きさは?」


ミラに聞かれて私は考える。

始めは和泉の世界に普通にあるオーブンの大きさの物を考えていたが、もう少し大きい方が良い様な気がしてきた。大きくて軽い物だ。


「うーん・・・。一メートル位の箱型?」

「そんなに大きいの欲しいの!?・・・魔力足りるかなー」

ミラは困った様に頭を掻いた。


「足りなかったら、私のあげるよ!」

ケロリと言う私にミラはジトっとした眼差しを向けてくる。


「そうだった。・・・・シャルロッテは規格外なんだ」

「規格外なのはミラも一緒だよ!」

「・・・お願いだからシャルロッテと一緒にしないで。ていうか、魔石が大量に必要になるけどそれは大丈夫?」

「うん!お母様にお願いしたら、お父様が沢山くれたよ!」


ソファーから立ち上がった私は、部屋の隅の邪魔にならない所で斜め掛けにしていた小さなポシェットをひっくり返した。


するとその中からは、ポシェット容量を超えたとんでもない量の魔石がジャラジャラとこぼれ落ちてくる。


「ちょ・・・!それ・・・!!異空間収納バッグなの?!」

目を見開いたミラは、魔石が落ちてくる様子を呆然と見つめている。


「うん。ミューヘン辺境伯から貰ったんだ」


サイラスの件に巻き込んでしまった『お詫び』だそうだ。

他意がありまくりそうだが・・・使える物はありがたく貰う主義だ!!

・・・なんてね。お兄様が『貰っておいたら?』と言ってくれたので、喜んで頂く事にしたのだ。


パッと見は白いレースの付いた可愛いポシェットなので、普通に持ち歩く事も可能だ。

ミラに作って貰おうと思ってた所だったのに、予想外な所から頂いてしまった。


「辺境伯とも知り合いなんだ・・・」

「んー。成り行きでね」

呆然としたまま尋ねてくるミラに苦笑いを返した。


「成り行きで・・・って」


私が望んだ事ではなかったのだから仕方がないじゃないか。


そうこうしている内に、最後の魔石がパラッと落ちた。


因みに、このポシェットだが・・・欲しいと思った物だけを取り出せる仕組みなので、こうして逆さまにしても他の物は落ちてこないという優れ物である。


「この位のあれば足りる?【鳳来獣(ほうらいじゅう)】の魔石だってお父様が言ってたよ?」


【鳳来獣】とは、雨血とはまた違う、炎を纏った鳥の様な魔物である。業火の如き炎を纏った魔物の魔石なら、オーブンの様な物に使えるかもしれないと私が勝手に判断をした。


呆然とした表情から唖然とした表情にシフトチェンジしたミラ。


・・・あれ? 何か変な事言った?

私は首を捻った。

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