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エルフの里へ①

翌日の早朝。

私とお兄様、サイラス、そしてクリス様が一緒にエルフの里に向かう事になった。


何故、クリス様が一緒か?


王城のゲートを使用する為には、ある程度の公式な理由が必要だからだ。

ゲートを使用すればエルフ側にも来訪者が告げられるのだから、コッソリと使用する事は出来ない。


そこでクリス様だ。

『未来のユナイツィア王国の王が、今後の友好の為に訪れる』

筋書きはそれだけで充分だろう。


そして大事なのは同行する私達の肩書きだ。

クリス様は言わずもがな・・・。


私、《シャルロッテ・アヴィ》は不本意ながらクリス様の婚約者(仮)。


《ルーカス・アヴィ》はクリス様の友人兼、婚約者(仮)の兄+未来の宰相候補。


エルフ達にバレない様に、サイラスには侍女に変装してもらう。

私のチートさんで、髪は茶色に、瞳の色はグリーンという一般的な色に変え、耳は髪型で誤魔化してある。

名前は《リリー》。サイラスの母の名前を採用した。

リリーは私付きの侍女である。


胸も作れるよ?と言ったけど、速攻で却下された。

良いじゃないか!



王城にある【王の間】。その玉座の後ろにゲートはあった。

成る程・・・。ここなら一般人には悪用されにくい。


壁に描かれた魔方陣の様な物に手を翳すと、転移が出来るシステムらしい。


一番最初にお兄様が手を翳して転移をした。その次にクリス様とリリーが続き、最後に私の番となった。


「気を付けてな」

見送りに来てくれた伯父様とシルビア様。


「行って来ます!」

私は二人にニコリと笑い返してから、魔方陣に手を翳した。



転移というと・・・長い滑り台をクネクネ、クルクルと滑り続ける様な感覚をイメージしていたのだが、想像と現実は全く違っていた。


《すり抜ける》という感覚が一番近いだろうか。

そうやって、すり抜ける様にして、あっという間に辿り着いたエルフの里。


そこは、エルフの里というだけあって緑がいっぱいの綺麗な場所だった。


物珍しさに辺りをキョロキョロしていると・・・

「シャル。こちらへ。」

王太子の仮面をしっかり被ったクリス様に手招きをされた。


・・・そうだ。

今の私はクリス様の婚約者(仮)なのだ。

しっかりしなければいけない。


クリス様達のいる場所には、数名のエルフ達が揃っているのが見えた。


クリス様から差し出された手に自分の手をそっと乗せると、流れる様にスムーズなエスコートでクリス様の左横に誘導された。


流石、王太子。リードし慣れている。


「私の婚約者のシャルロッテ・アヴィ公爵令嬢です。シャル、この御方が長様だ」


『長』という位だから年配の男性を想像していたのだが、長寿のエルフなだけあって見た目的にはかなり若く見える。私が父と呼んでも違和感がない位の年代に見えるのだが・・・一体、長は何歳なのだろうか?


琥珀色の瞳に、白金色の長い髪は・・・その顔立ちはサイラスによく似ていた。

この人がサイラスのお祖父様・・・か。


「初めまして、長様。シャルロッテ・アヴィと申します。どうぞ、お見知り置きを」

私は可憐さを意識して微笑みながら淑女の礼をした。

シャルロッテの長年の王太子妃教育の成果を存分に発揮させたのだ。


それに、ほうっと見惚れる様に吐息を漏らしたのは、長の側にいる五人のエルフ達だった。

チラッと私の斜め後ろに控えているサイラスに視線を向けると、彼は黙ったまま微かに頷いた。


了解。長を含めた、この六人が復讐のターゲットだ。

私は六人の顔を頭の中に叩き込んだ。


「ようこそいらっしゃいました。我々はあなた方を歓迎しますよ」

柔和な笑みを浮かべる長に連れられ、私達はそのまま長の家へと向かった。


・・・エルフは美形が多いと、知識として理解していた。ゲームの中でもエルフの里のシーンは出て来た。

そこに映るのは一部のエルフだけだったし、まさか皆が皆・・・こんなに美形だとは思わなかった。

すれ違う人々が全員ハリウッド女優や俳優並だなんて・・・! 子供や赤ん坊さえもが麗しい。

エルフの血・・・凄すぎる。



長の家に着いて直ぐに和平会談が始まった。


夜に行う歓迎会の前に会談を済ませてしまいたいそうなのだ。

どこの世界もお酒が入る前に面倒な事を済ませるのが・・・定石か。


残念ながら、私はその会談には不参加だ。

私としては参加する気満々だったのに、長達に却下されたのである。

長達は女子供が政治に関わるのを良く思っていない古い人間らしいね。


まあ、婚約者(仮)だから別に良いんだけど。

実際の婚約者だったら、ガッカリしたのかもしれない。性別だけで差別されるのは嫌だよね。


会談に参加しなくて良いのなら、作戦決行の為の準備を済ませれば良いだけの話だ。


侍女の変装をしているサイラスも、このままでは会談に参加する事は出来ないのだが・・・どうするつもりだろうか?


「私はちょっと外に出ますけど、リリーはどうしますか?」

「私もお供致しますわ。お嬢様」

コッソリ聞いてみると、サイラスは私と一緒に来るそうだ。


「参加しなくて・・・良いのですか?」

「はい。ここは余り良い思い出がないので・・・」

サイラスは悲しそうに笑う。


サイラスはてっきりどこかで会談を聞くものだと勝手に思い込んでいたから、予想外で驚いた。


侍女姿の《《リリー》》は清楚系な設定で、言葉遣いも含めて、きちんと清楚で儚げな美人なお姉さんに仕上がっている。

魔術で髪や瞳の色を変えいるから、サイラスだと気付く人はそうそういないだろう。


『良い思い出がない』か・・・。

サイラスにとってはお母さんが亡くなった場所だもんね・・・。


あ、そういえば・・・

「ここに来る途中に、スーリーの花を沢山見かけましたが・・・エルフの里にはスーリーの花が多いのですか?」

「はい。昔は、スーリーの群生している草原が森を抜けた所にありましたが・・・。お嬢様?私相手に敬語はおかしいですよ?」

サイラスは苦笑いを浮かべ、後半の言葉は私達以外には聞こえない位の大きさで話した。


・・・あっ。そうか(汗)

普通にサイラスと会話をしている気分になっていた。


侍女と言えばマリアンナ。

マリアンナをイメージしよう。


サイラスはリリー、サイラスはリリー・・・。


「ええと・・・そこに行きたいのだけど、案内してくれる?」

私はマリアンナにするように上目遣いでお願いをしてみた。


「はい。喜んで」

リリーは優しい顔でそれに頷いた。



やったー!


リリーの案内を受けて、長の家の裏側にある森をどんどん進んで行く。


「里の監視が付いてないとは限らないので、くれぐれも用心して下さいね?」

そう忠告された私は、コクコクと何度も頷いた。



森の中には緑色の木々が溢れ、清々しい空気を吸い込む事が出来た。

マイナスイオン・・・癒される・・・。



歩きながらリリーは、コッソリと里の事を教えてくれた。


里には大きな結界が張ってあり、触れると風船みたいな弾力に押し返されてしまうのだそうだ。

目的地の草原は、最北の結界の近くに在り、特に生活に必要な物がそこには無い為、里のエルフ達もなかなか行かない場所であるらしい。



「ここを抜ければ直ぐですよ」

リリーが斜面を指差す。



スーリーの群生を少しでも早く見たかった私は、リリーを置いて駆け出した。

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