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ダンジョン②-1

「なー。俺の事も『お兄様』って呼んでくれないか?」


無視。


「『お兄ちゃま』でも良いぞ?」


無視。


「おーい。無視すると、お兄様泣いちゃうぞー」


無視。


「ツンデレなシャルロッテ嬢も可愛いな」


無視。


サクサクとダンジョンを進む私達。


私の後ろ・・・最後尾を歩くハワードがうるさい。

さっきまで瞳を潤ませていたくせに、ケロッとしているのがまた腹立たしい・・・。


因みに、泣きながら掴まれたハワードの両手は、無言でベシッと叩いて払い落としました。


誰がお前を『お兄様』何て呼ぶか!



私にはルーカスお兄様だけで充分です!!



・・・クリス様といい、ハワードといい・・・何なんだろ。

空前の妹ブーム到来??そんなの聞いたこともない。

こんなに目付きの悪い私なんかをどうして妹にしたいなんて思うのだろうか。


・・・私の前を歩くお兄様は、さっきから大爆笑しているし。


はぁ・・・次から次に・・・もう。


これからが調査の始まりだと言うのに、始まる前からかなり疲れてしまった。




前回、魔術を流して使う瞬間移動装置なる物を地下五階に置いて来たので、私達は一気に地下五階まで降りる事が出来ていた。

現在は地下五階を横断している所である。


攻略した階には、もう弱い魔物しか出ない。それも少量だからサクサク進む事が出来る。


あっという間に、地下六階に到着した。


さあ、ここにはどんな魔物がいるのか・・・?


お兄様達の間からチラッと見えたのは・・・シャルロッテと和泉の一番嫌いな生き物である・・・

・・・蜘蛛の様な魔物だった。




地下六階層中の四方八方に糸が張り巡らされており、それぞれの()の真ん中には大きな蜘蛛が・・・確認出来るだけでも数十匹。

しかも、それぞれが一メートルはあるだろう大物だ。


・・・帰りたい。

小さな蜘蛛だって無理なのに・・・こんなの絶対に無理!


「・・・お兄様。」

私は顔を俯かせながらお兄様のシャツの裾をキュッと握り締めた。


「シャルにはやっぱりきついよね?」

青くなってしまっている私の顔を覗き込むお兄様。


さっきから血の気が引くのを感じが止まらない。



「シャルロッテ嬢は【喰喪(くも)】が嫌いなのか?」


この大きな蜘蛛の魔物は【喰喪(くも)】と言う魔物らしい。

ハワードの質問に私は大きく頷いた。


黒い産毛のある大きな身体に、赤い目が幾つも付いていて・・・とても気持ちが悪い。


喰喪は、自らの糸に掛かった物なら、仲間でも食べるという魔物だ。

糸を出して攻撃をし捕食する。出した糸を幾重にも絡め、決して獲物を逃がさない。


しかもこの喰喪・・・獲物を仕留める瞬間に()()らしい。


何ソレ・・・怖い。怖すぎる・・・。



蜘蛛だろうが、喰喪だろうが・・・私には同じにしか見えない。

どっちも嫌いだ。


「喰喪の糸はなかなか切れないし、粘着力も強いから貴重なんだ。ギルドの採取依頼で良くあるらしいぞ?」


・・・な・ん・だ・っ・て?


前衛のお父様達の方へ視線を向けると、嬉々としたメンバー達の表情が見えた。


「お兄様・・・どうしましょう。・・・お父様達はまたやらかすと思います」

さっさと、前回同様の炎の魔術で地下六階層を焼き尽くすはずだったのだ。(私が勝手に)


前と同じ様に魔物を限界まで増やされでもしたら・・・私は確実に暴走する。


「ハワード様。喰喪は増えたり・・・仲間を呼びますか?」

「仲間は呼ばないが、雌の喰喪が居たら腹からは・・・」

「・・・それ以上は結構です!」


やっぱりか・・・。そこはやっぱり蜘蛛と同じなのね。


あの大きさの喰喪から、子供がうじゃうじゃ・・・と。

想像だけで暴走出来る自信がある。


「僕は父様達の所へ行ってくる。シャルロッテは任せたよ。ハワード。」


お兄様は私の手をそっとシャツから外し、ニコッと微笑んでからお父様達の方へ駆けて言った。


「お兄様・・・?!」

お兄様の温もりがなくなり・・・途端に心細さでいっぱいになる。


「手、握るか?」


・・・要らない。私は力無く首を横に振った。


「俺、そんなに嫌われる事したかな・・・」

小さく呟くハワード。



➀ギラギラした目で威嚇しながら、『戦おう』としつこく言い寄った。


➁何故か『お兄様』と呼んで欲しいと言い続けた。(しつこく)


・・・嫌われるには充分だよね?



だけど・・・それだけじゃなくて、私の態度に問題があるのも

分かってる。


でも、本当に関わりたくないのだ。

何がきっかけで、悪い方に転がるか分からないし・・・怖いのだ。


ポジティブ、ポジティブ・・・

心の中で無敵の呪文を唱えてみるが・・・効かない。

折れかけた心には意味がないらしい。



そこへ、お兄様が戻って来た。


「シャル。やっぱりお父様達からお願いされたよ」


やっぱりか・・・


「喰喪の糸は骨折した時とか、医療用としても使える貴重な物だから集めたいって」


「医療用・・・?」

この糸を使うの!?


私は絶対に骨折なんかしないと・・・心に誓った。

折れたら意地でも自分で治す!


「それと・・・糸は火に弱いから、前回みたいなのは控えて欲しいって」


マジですか・・・。

今直ぐに跡形もなく燃やしてしまいたいのに。


と言う事は・・・喰喪は武器で攻撃するの?

それじゃあ体液が・・・・・・。


・・・・・・。

駄目だ。これは考えるだけで吐きそう。


「父様が、『喰喪は【リア】だけで倒すから、シャルロッテは目を瞑ってて』って言ってたよ」


私はお兄様のシャツの裾をまたギュッと握った。



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