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ダンジョン①-3

ふと上からの視線を感じた私は、そう言えば抱き付いたままだったお兄様を見上げた。

アメジストブルーの瞳が優しく私を見つめていた。


・・・・・・ん?


お兄様は、最近こんな表情をしている事が増えた気がする。

私は首を傾げながらえへっと笑う。


「さて。落ち着いたみたいだから、そろそろこの状況をどうにかしようか?」

私と同じ様に笑いながら首を傾げたお兄様に言われて思い出した。



そ・う・い・え・ば!!!!


「・・・お父様!!?」


立派な密林(ジャングル)が完成していた。


結界の直ぐ目の前までキラープラントが迫って来ている。


何だこの状態!

どうするつもりなの!?

お父様達は今まで一体何をしていたの!?


「お父様達はやっぱり魔石集めをしていたよ。」

って、そうだろうけど・・・。

お父様・・・物には限界というものがあるでしょう?


ふと、大人になったお兄様の顔で『テヘペロ』をしているお父様の顔が浮かんだ。


何だろう・・・凄くイライラする。

沸々どころか、グラグラと怒りが沸き上がって来る。


プツン。

頭の中で何かが弾けた瞬間・・・・・・。


私は無意識に右手を掲げていた。

「全てを焼き尽くせ・・・。ファイヤーストーム。」


ゴォーーーッ。

そう呟いたのと同時に、炎の柱が四方八方から出現する。

炎の柱はそれぞれが竜巻の様な動きをし、キラープラントを焼き尽くして行く。


世界の終わりの様な光景である。



お父様達も少し焦げたら良いんだ!


キレている私は、お父様達には敢えて弱めな結界しか掛けていない。



「・・・シャルを怒らせたら駄目なのだな」


隣から呆然としたクリス様の声が聞こえた気がしたが、私はそれを敢えて無視した。

お兄様の方からはクスクスと笑い声が聞こえている。




***



全てのキラープラントを殲滅させ、炎の柱を消した後。


私の目の前には、良い年をしたお父様以下数名の大人達が少し焦げた状態のまま正座をしている。


「皆さんが何をしたのか分かっていますか?無茶をすれば被害が出るのはこちらですよ?」

目の据わった12歳の公爵令嬢に説教される大人達。


何故かその中にクリス様も混じっている。・・・どうした?


「これからは魔石を集める時は()()に。必ず私達の了承を得てからにして下さい。分かりましたか?」

クワッと瞳を見開いた私のつり目は目力UPで迫力が倍増である。


大人達+クリス様が黙ったままコクコクと何度も首を縦に振る。


「約束を破ったら・・・分かりますね?」

右手を掲げて手の平の上に炎の柱を出しながら更に脅す。


私はそのまま三十分ほど、説教を続けた。


その間ずっと大人達+クリス様は真っ青な顔で、震えながら何度も首を縦に振り続けたのだった。


「これで一週間は保つかな?」


これで一週間しか保たないのか・・・。子供か・・・。

私は天を仰ぎたくなった。

助けて・・・女神様。




説教が済んだ後は、皆で落ちている魔石を集めた。


キラープラントの魔石は、ペリドットという宝石に似た黄緑色のキラキラした綺麗なものだった。

落ちている魔石は数百個は下らないだろう。

チロルチョコ位の大きさの魔石が地下五階層の至る所に落ちている。


こんなの一つ、一つ拾うのは面倒くさい・・・。


私は少し大きめな皮の袋を左手に持ち、自分が掃除機になる様なをイメージした。


「吸引」

そう呟けば、あっという間にダンジョン中に散らばっていた魔石が皮袋の中に吸い込まれて行った。


・・・私の周りの魔石だけ拾うはずだったのに。

そっと視線を上げると、皆が驚いた様な顔をしているのが見えた。


・・・やっちゃった?

テヘッと笑って誤魔化すと、皆が一様に嬉しそうな顔で親指を立ててくれた。

『グッジョブ』だ。


良かった・・・全部を手で拾い切るのは大変だもんね!




この日から、私は密かに『パンドラの箱』そう呼ばれる事となった。


・・・何故だ。良い事をしたはずなのに、私は災いか!?

開けるな危険!?


こうしてやっと、本日のダンジョン調査は終了したのだった。




ダンジョンの中から出て来た私達を入り口で出迎えたのは騎士の制服を纏った数名の騎士達だった。

横並びに並んで敬礼をしながら待っていた。

クリス様を迎えに来たのだろうが、その中の一人に気付いた私は・・・そのまま踵を返してダンジョンの中に戻りたくなった。



「クリス殿下。お迎えに参りました」

「すまないな。ハワード」


三人目の攻略対象者《筋肉ワンコ》こと【ハワード・オデット】が入り口(そこ)にいたのだ。


どうしてお前がここにいるんだーーー!!

思わず叫びそうになった口を私は必死で押さえた。

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