表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

23/213

ダンジョン①-2

・・・この状況をどうしたら良いのだろうか。


シュンとしているゴールデンレトリーバー的なクリス様を慰めるべき?


あー!もーー!面倒くさい!!

頭を掻きむしりそうになる寸前・・・

「お待たせー。やっぱり無駄にキラープラントを増やして魔石を稼ごうとしてたよ」

お兄様が走って戻って来た。


「・・・どうしたの?二人共。」

お兄様は不思議そうな顔で私とクリス様を交互に見ている。


「・・・邪魔したかな?」

回れ右の態勢になるお兄様の腕を私はガシッっと掴んだ。


いいえ!!寧ろ、ずっと待ってました!!

私の救世主(お兄様)!絶対に逃がさないからっ!!


「いや、大丈夫だ。私の質問に答えて貰っていただけだから」

クリス様の言葉に合わせて、首をぶんぶんと縦に振る。


「質問?」

「シャルロッテ嬢が調査に参加したのは何故かと」

「あー、成る程。それでシャルロッテは理由を言ったの?」

お兄様の瞳が楽しそうに細められている。


何か・・・企んでいる?


「いえ。叶えたい願いがあると・・・それだけです。」

お兄様を訝しく思いながらも首を横に振って答える。


「言ってしまえば良いのに」

「お兄様・・・!?」

私は非難混じりの声を上げた。

簡単に言える事じゃない。お兄様だって分かってるはずなのに・・・。


私はお兄様の腕をギュッと握りながら顔を俯けた。

お兄様は、私の手の平を包み込むかの様に自分の手をそっと重ねてきた。


そして・・・

「シャルロッテは僕が心配だから参加したって」

そう言ってニッと笑った。


・・・・・・へっ?


「大好きな僕と離れたくないんだよね?ず-っと一緒に居たいんだよね?僕のシャルはこんなに可愛いんだよ!」


お兄様は大袈裟なほどに声を張り、クリス様にドヤ顔を向けた。




ええと・・・これは・・・誤魔化してくれているんだよね?


考えてみれば、お兄様が私との秘密を簡単に他人に話す訳がないのだ。

私とお兄様は共犯者なのだから。未来を変える為の・・・。


「大好きお兄様!!」


私はわざとお兄様に飛び付いた。

急に飛び付いて来た私をしっかりと抱き止めながら、お兄様は優しく頭を撫でてくれた。


「ルーカスばかりずるいぞ!!」

クリス様が私達二人の間に割って入ろうとする。

「私だって・・・私だって、シャルロッテ嬢の様な妹がずっと欲しかったんだ!」


はい・・・?


「ルーカスはいつも私に自慢してくるんだ。シャル()は世界一可愛いって!」


お、お兄様・・・。

つり目で目付きの悪い妹を捕まえて、『可愛い』って余所で何言ってるの・・・。


「この前だって、『僕に抱き付いて泣くシャルが可愛かった』って言ってたし・・・」

「お兄様!?」


あ、あれを教えたの!?

12歳にもなってって思われない!?


私は真っ赤な顔でお兄様を睨み付ける。


ゲームの中のルーカスは確かに妹に甘いとか、溺愛してるとかあったけど・・・。それは両親達を亡くしたせいだと思ってた。


お兄様は正直、どこまでの本心を見せてくれているのか分からない。

常に演技や計算をしている様にも思える。


「ははっ。ばらされちゃった。」

悪戯っ子の様に舌をペロッと出すお兄様。


「僕の妹は可愛いんだから仕方無いじゃない?」

更に平然と言い放った。


本当は何も考えていないただの妹バカだったらどうしよう・・・。


「やっぱり私の事をお兄様と呼んでくれないか!?シャルロッテ嬢!!」


クリス様・・・。

そんなに妹が欲しいのですか・・・。


「この前、父上達に頼んだが、妹は無理だと言われてしまった・・・」

シュンと肩を落とすクリス様。

耳がシュンと下がっているゴールデンレトリーバーだ。


ていうか、頼んだのか!!

しかもこの前って、最近じゃないか!

確かに王様と王妃様はまだ若いと思いますけど・・・。



・・・どうやら、クリス様の中で私は恋愛対象ではないみたいだ。

言うなれば・・・・・・『理想の妹』?

これは、お兄様の洗脳によるものだろうけど。・・・擦り込み?


私を勝手に美化しないで欲しいんだけどな・・・。


『私にはクリス様みたいな兄は要りません!』

って言ったら泣くよね?絶対に。


だが!断る!!


「お兄様とはお呼び出来ませんが、ルーカスお兄様の様に私を『シャル』と呼んでも良いですよ?」


これが私の最大限の譲歩だ。諦めとも言う・・・。


何となくだが『妹の様だ』と、そう思われているだけなら大丈夫な気がしたのだ。

この調子だと嫌でもこの先ずっと関わらないといけなそうだしね・・・。


「良いのか!?シャルロッテ嬢・・・・・・シャル!」


・・・うん。

今度は嬉しそうに尻尾をブンブンと振っているゴールデンレトリーバーが見える。


可も無く不可も無い。妹的ポジションでひっそり、こっそりしておこう。






・・・この時の私の選択を、早々に後悔する事を今の私はまだ知らない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ