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新天地~女神の暴走

「ストップ」

「バインド」

「干渉」

「阻害」etc……。

思い付く全ての魔術を使用したものの、全てカトリーナを守る障壁に跳ね返されてしまう。


……私の持つ女神の加護は効果無し、か。

思わず唇を噛んだ。


「私もやってみるよ!」

彼方が聖女の力を使ってくれたが……


「ごめん……私も無理みたい」

彼方の力も見事に弾かれてしまった。


「大丈夫。ありがとう」

枯渇する寸前まで力を使い続けて座り込んでしまった彼方の頭を、労りの意味を込めて撫でた。


どうしよう……。カトリーナを止めたいのにどうしたら良いのかが全く分からない。


ラーゴさん達から縋る様な眼差しを向けられるが、現状を覆す術が見つからない。

私のチートさんでも、彼方の聖女の力でも駄目だった。


こうしている間にも、刻一刻とカトリーナを取り巻く光の色が強くなっている。

――そしてこれ以上は《《駄目》》なのだと、私の頭の中で警鐘が鳴り響いている。


……このまま死なせてはいけない。

カトリーナには《《色々と》》話したい事がある。それはもう……たっぷりと。

だからこそこの窮地をどうにかしないといけない。


……こんな時になんだが、お兄様達の気持ちが少し分かった気がする。私がカトリーナと同じ方法を選んだなら、お兄様は一生許してくれないだろう。


「ねえ、ねえ、困ってるぅ?」

私の元に飛んできたカシスが首を傾げる。


「……うん。カトリーナの絶体絶命の大ピンチ。どうして良いか分からないし……時間が無いの」

「ふーん」

私の視線を追ってカトリーナを見たカシスは、ポンと手を打った。


「だったら、あたちにお任せ!」

「……え?」

「あちきはこれでも精霊だもの!」

「え!?ち、ちょっと……!カシス!?」

カシスは言うが早いか、カトリーナ方に向かって飛んで行った。


『シャルたんは待機しててー?』

不意に右手の小指の爪が熱くなったと思ったら、頭の中にカシスの声が響いた。

小指の爪にあるのはカシスの加護の証だ。


『た、待機って何!?……ね、待って!また消えちゃったりしないよね!?』

私は心の中で応えながら、左手で右手を覆うようにギュッと握った。


確かにカシスは無事だったけど、また目の前で消えてしまうのを見るのは辛い。

……ずっと一緒にいて欲しい。


『大丈夫!あたちは消えないよ!』

チラリと私の方を見たカシスは、えっへんとぽっこりお腹を反らして見せた。


『だから、あたちを信じて!』

カシスの言葉が胸に響く。


カシスが何をするつもりかは分からないが、私はカシスを信じる。


『分かった!カシスを信じるよ!』

『ん!シャルたん、新作の《《アレ》》用意しててね!』

『うん!』

成功した暁には皆で飲もう!!


カシスに言われた通りに、異空間収納バッグから《《アレ》》を取り出した。



カトリーナの頭上に到着したカシスは、足を肩幅より少し狭いくらいに開き、右手を左手よりも少しだけ下げてパン、パンと柏手を打つ様に手を叩いた。


そして――

「あ・た・ま・を・冷やせーー!カシスソーーダ!!」


カトリーナの頭上に大量の赤い水を降らせたのだ。


「カシス!?」

……私、どこに突っ込んだら良いかな?


流石にカトリーナに水をかける発想はなかった。それも『カシスソーダ』って……勿体ない!私に飲ませてよ!!


「そこ!?」

「…………ぃだっ!!」

グサッと金糸雀の嘴が私の後頭部に突き刺さった。


「酷い!心の中で突っ込む位は良いじゃない!!」

「シャルロッテの場合は駄々漏れなのよ!」

金糸雀の嘴がもう一度刺さる瞬間。


「見て……!」

彼方がカトリーナの方を指差した。


彼方の言葉に弾かれる様にカトリーナの方を見ると、今までカトリーナの周りで強い光を放っていたものが、じわりじわりと赤色に侵食されているところだった。

白色に近かった光の色が、レモン色、オレンジ色、と――徐々に赤色が濃くなっていく。



――遂に光の色が完全に赤色に変わった。


……ゴクリ。

大きく唾を飲み込んだのは誰だっただろうか。

私だったかもしれないし、彼方や金糸雀……いや。カシスとカトリーナを除いたこの場にいる全員だったかもしれない。


ピシッ。

カトリーナを覆っていた光に亀裂が入った。

その亀裂はミシミシッと音を立てながら広がっていき――――パリンと一際大きな音を立てて崩れ落ちた。


部屋の中はシーンと静まり返った。


誰もが言葉を失くし、涙に濡れた顔で床に散らばった元光の欠片だった物を呆然眺めているカトリーナを見ていた。


「シャルたん!今よ!!」


カシスの声にいち早く我に返った私は、反射的に手元にあった物を強く握り締めながら、カトリーナの元に駆け出した。


無我夢中で走りながら《《栓》》を抜く。


そして――何も考えずに、カトリーナの口の中にソレを突っ込んだ。

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