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新天地~女神の謝罪➄

さっきの光は……一体?


光が収まったのを視覚的に感じた私は、恐る恐る瞳を開けた。

そして、カトリーナが座っていた場所を見た。


見たのだが……そこに居たのは、私の知るカトリーナではなかった。


「誰……?」


思わず動揺の言葉が口をついて出たが、その姿には見覚えがある。

この邸の中にある【女神カトリーナの肖像画】と同じ姿だった。


これが女神カトリーナの本当の姿……?


「カトリーナ様!お姿が……!」

ガタガタと大きな音を立てながら椅子から立ち上がったラーゴさんとリラさん、そしてレオまでもが、カトリーナの元に駆け寄り、膝をついた。


椅子に座ったままのカトリーナは、そんなラーゴさん達を困った様な顔で見つめている。


ええと……女神様は伸縮自在ですか?

私がチートを使えるのだから、女神様なら尚更何でもありだと思うけど……。

ふむ。状況を詳しく知りたいけど、聞ける空気じゃない気がする。


……暴走するけど、一応空気は読めますよ?


「……今までは泣きすぎて萎んでた、り?」

「その理論だと、さっきも泣いてたんだから、もっと小さくなっちゃわないかな?」

呟きに答えてくれたのは彼方だ。


「確かに!赤ちゃん返りしちゃうよね」

「ちょっと意味が違うような……」

「じゃあ、お酒飲んだから膨らんだとか?」

「乾燥したスポンジじゃないんだから」

「えー?じゃあ、どうしてだと思う?」

「うーん。難しいね、何でだろう……?」

こそこそと彼方と話していると、刺さる様な視線を感じた。


「……お前達。空気読めてないぞ?今、すっごく良いところじゃねえの?」

刺さる様な視線の正体はクラウンだった。


「『お前達』……?」

「いやいや!お嬢達!」

ジロリと睨み付けるとクラウンがアワアワと慌て出す。


「……ていうか、居たんだっけ?」

「ずっと居たよ!?ここに居たよ!?」

「視界に入れないようにしてたから忘れてた」

「ひ、ひでえ!そういう所だぞ!?」


ベーっと舌を出すと……

「「いだっ!」」

「いい加減になさい。あんた達みんな空気読めてないわ」

喧嘩両成敗とばかりに金糸雀に額を思い切りつつかれた。


「「申し訳ございませんでした……」」

ジロリと睨む金糸雀に、私達は平伏する様に深々と頭を下げた。


いつもの茶番劇を繰り広げている私達の向こう側は、緊張感漂う展開の真っ最中だった。

私達は姿勢を正し、今度こそ大人しくその成り行きを見守る事にする。


「……今までごめんなさい」

俯いたカトリーナはポロポロと涙を溢れさせた。


「私は自分の事しか考えていなかったの。……私が弱いから置いて行かれたのに、それを優しいあの人達のせいにして……罪悪感からずっと逃げていた。貴方達の言葉は全部届いていた。分かっていたの。……でも、認めたくなかった。」


顔面を両手で覆い、時々しゃくり上げながら話すカトリーナをラーゴさん達は黙って見つめている。


「……全部……私のわがままよ。カーミラを殺した相手に復讐しようと大切な竜達あなたたちを利用とした。でもそれは先に魔王が果たしてくれた。私はまた何も出来なかった。いつも私は無力だった……だから、だから……ラーゴ。貴方に八つ当たりしてしまったわ。……ごめんなさい」

カトリーナは涙を流しながら真っ直ぐにラーゴさんを見た後に、床に這いつくばる様にして頭を下げた。


「ごめんなさい。本当にごめんなさい。今頃謝ったって許してもらえない様な酷い事を私は貴方にしたわ。私の掛けた呪いは貴方を蝕み、苦痛を与えるだけでなく、寿命さえも奪っていった。……残された貴方の時間はもうほんの僅か、よね……?」


カトリーナが見つめる視線の先はラーゴさんの赤い瞳だ。

【女神の呪い】の事は知っていたが、こんなにも酷い物だったのだとは。

リラさんの様子からただ事では無い事を察してはいたが……もう少しで取り返しがつかない事になるところだったなんて……。


ラーゴさんは何も言わずに赤い瞳を手で覆った。


穏やかなラーゴさんからの様子から苦痛を伴っている様子を感じた事はなかった。


事情はともあれ、女神カトリーナを裏切った事は、眷属であるラーゴさんにとっても許せない事だったのだ。

だから苦痛を堪え何事も無いように装っていた。

……それらはラーゴさんが自らに課した断罪だったのだろう。


「……いつもそう。私が知った時には全てが終っている。私は女神なのに……貴方達……竜の為女神なのに。庇護するべき立場の者がその責務から逃げた罪は、何よりも重い……。そう、私が一番悪いんだわ」


カトリーナも罪深いが、もっとも罪深いのは……シモーネだ。

ドス黒い憎しみが胸の底から込み上げてくる。

アイツさえいなければ、誰も不幸にならなかったのに……。


「カトリーナ様……!?」 

ギリッと親指の爪を噛んでいた私は、リラさんの悲鳴で我に返った。


カトリーナはラーゴさんの両手を掴んで、自らの額に押し当てている。

カトリーナの全身は淡い光に覆われている。


「カトリーナ様!お止め下さい!」

「それだけはいけません!!レオ!あなたも手伝うのよ!」

リラさんは必死でラーゴさんからカトリーナの手を引き剥がそうとしているが、竜の強い力でもカトリーナの両手はビクリとも動かない。レオが加わっても変わらない。


緊迫感の漂う非常事態。

今の状況が分からないのは、私と彼方だけの様だ。

サイも金糸雀もクラウンでさえも何かを察している。


「ねえ……サイ。どういう事?」

カトリーナ達から目は離さないまま私はサイに問い掛けた。


カトリーナは瞳を閉じて何か呪文の様な物を呟いていて、ラーゴさん達は涙を流しながら必死に呼び掛けている。


こんなの……まるでカトリーナが命を掛けて何かをしようとしている様にしか見えない。


「……カトリーナは竜の呪いを解くだけでなく、自らの寿命を竜に与えようとしているのだ」

「それってつまり……?」

「カトリーナは消えるつもりなのだ」

「……消える?消えるって何!?」

「女神カトリーナは……死ぬつもりよ」

「止めないの!?」

「ああなってしまったらもう止められないのだ。神の力は強大すぎて誰にも手が出せない……」

サイ達は悲しそうな顔で瞳を伏せた。


「……何それ」


あんなにも遺された側の立場を嘆き悲しみ、怒っていたのに、今度は自分が同じ事をするの?

ラーゴさん達があんなに必死になって止めようとしているのに無視するの?

カトリーナが罪を償いたいのなら生きてするべきだ。

まだ少しでも時間は残されているはずだし、何か出来るはずだ。


だって……ラーゴさん達はカトリーナが死ぬ事を少しも望んではいないじゃないか。

こんなの……こんなの、自分勝手すぎる。


私は私を取り巻く全ての人達の幸せを願っている。

そこにはもうカトリーナだって含まれているのに…………!


「……私の目の前で死ぬなんて、絶対に許さない!」

私はガタッと大きな音を立てて椅子から立ち上がった。

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