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まさかの③

はぁー。

私は心の中で、深い、深い溜息を吐いた。


「クリストファー殿下。申し訳ございませんが、(わたくし)はもう何も知らない幼子ではないのですから・・・お許し下さい。」

私はそう言って、クリストファー殿下に向かって深々と頭を下げた。


だから、諦めて・・・。本当に、これ以上私に関わらないで・・・。


「それは私が良いと言ってもか?」


頭を下げているから表情までは分からないが・・・声だけで悲しそうな顔をしている事は想像出来た。


はぁー。

本日、何度目かの深い溜息を吐いた。


これじゃあ、私が苛めてるみたいじゃないか・・・。


クリストファー殿下は決して性格が悪い訳ではない。それは私も分かってる。

強く・正しく・美しく、素直で正義感の強い()()()なのだ。

性格的に好感は持てるが・・・それ以上もそれ以下もない。

寧ろ、それ以上の感情は持ちたくないし・・・そうなる事を考えたくもない。



私の立場は公爵令嬢であり、放棄はしたものの現王の弟の一人娘。

お父様は私を王族に嫁がせたくないと思ってくれてはいるが、公爵家の娘という立場的な問題から、娘である私に幼い頃から王妃としての教育を受けさせている。


アヴィ公爵家のシャルロッテは、王太子妃候補として極めて高い位置にいるのだ。


そんな立場にいる私が、王太子と仲が良いと思われたりでもしたら・・・本人が望まなくても婚約者にされる可能性があるのだ。


・・・そんなのは勘弁して欲しい。


クリストファー殿下に会いたくなかった理由は他にもある。

ゲーム補正みたいなものが適応されて、5年振りに出逢ったクリストファー殿下に恋愛感情を持ったりしたらどうしよう・・・という不安があるからだ。

あんな他人の迷惑も考えずに、自分の歪んだ好意だけをぶつけるようなシャルロッテにはなりたくない。


でも、それは私の杞憂だった様だ。

私の恋心はちゃんと別な所に残ってる。

クリストファー殿下に恋心は生まれていない。

しかし、今回は大丈夫でも、これから補正が入らないとも限らない。

だからこそ、クリストファー殿下とは出会いたくもなかったし、付き合いを続けたくもない。


それなのに・・・。

やんわりと、無難に敬遠しようとする私を何故か解放してくれないのだ。


すると・・・。

「シャル。クリスの為に少し折れてくれないかな?」

何故か私の救世主(お兄様)が殿下のフォローを始めた。


何でそっちのフォローをするの!?


・・・王太子だからですか?・・・そうですか。

実の妹よりもクリストファー殿下を選びましたね?・・・恨みますよ?


ジト目を向ける私に、お兄様は笑いながらスッと瞳を細めた。


謝ったって許さないんだから!絶交だー!!


頬を膨らませながら、プイッと顔を背けようとした瞬間に・・・

「リカルド・アーカー」

お兄様が私の耳元で囁いた。


・・・何!?

リカルド様が何!?


単純な私の瞳がキラキラと煌めき出す。


「シャルが僕のお願いを聞いてくれるなら、彼を紹介してあげるけど?」

お兄様がニッコリと微笑む。



何ですと・・・!?

リカルド様に紹介・・・!??

それがお願いの条件なら、聞かない訳にはいかない!!


『はい!喜んで!!』

二つ返事で答えかけて・・・ふと冷静になった。


お兄様にリカルド様の話した・・・?と。

うーんと首を傾げながら考えるが・・・駄目だ。記憶にない。

適当にしてはピンポイント過ぎるし、第一にお兄様達はまだ出会ってないじゃないか。


そんな私の考えている事なんてお兄様にはお見通しだったのか、お兄様はケロッと続けた。


「あの日、泣きながら話してくれたけど、覚えてないの?」


マジですか・・・。

色々吐き出したと思ったけど、好きな人までばらしちゃったんですか・・・。

うーわー・・・恥ずかしいな私。


「どうする?大好きなリカルドに逢えるよ?」


悪魔(お兄様)が囁く。


・・・っ!!

そんなの決まってる!!


「約束を破ったら、お兄様とは二度とお話しませんからね!?」

私は悪魔(お兄様)の囁きに乗った。



そして、そのままの勢いに任せて、寂しそうな顔のままだったクリストファー殿下へ向き合った。

「クリストファー殿下!」

「シャルロッテ嬢・・・?」

「お兄様とはお呼び出来ませんが・・・『クリス様』とお呼びしても宜しいですか?」

私がそう言うと、クリストファー殿下の顔がパッと輝いた。


「様もいらな・・・」

「クリス様。これからの調査、何卒宜しくお願いします」

クリストファー殿下・・・クリス様の言葉を無理矢理遮った私は手を差し出した。


お兄様達みたいに握手をして和解(?)をするのだ!!


言葉を遮られたクリス様は一瞬キョトンと瞳を丸くした後、直ぐに私の手を取り・・・・・・



口付けた。


って、それ違うーーー!!!!


「クリス様!?」

顔を真っ赤にして抗議する私を見たクリス様がクスクスと悪戯っ子の様に笑った。


「悪い」


もーー!!

その顔は絶対に悪いと思っていない!


私は悪魔(お兄様)と契約を結んだ代償に大事な物を失った。


・・・そんな気がした。

早まった!!?

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