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新天地~神々との再会

「うわっ……ぷっ!」

鏡に飛び込んだはずの私は、想像だにしていなかった柔らかい衝撃に包まれていた。


――目の前にあるのは……二つの谷間?

谷間に顔を埋めたままで、思わず首を傾げた。


透けるように白く滑らかな肌である。

大胆な露出なのにいやらしさを微塵も感じさせないという、この不思議なボディーの持ち主は――――。


「……セイレーヌ?」

「当たりよー」

「うわっ……!」

シャランという金属音がした瞬間に、ギュッと頭を抱え込まれた。


「セ、セイレーヌ!ギ、ギブ!ギブ!!」

私はセイレーヌの肩の辺りを何度か叩いた。


このままでは、お胸で溺れ死んでしまう。

こんなご褒美が好きな人がいるかもしれないが、私は遠慮したい。

綺麗なお姉様は鑑賞するだけで良い。

お触りは御法度!ドントタッチミー!!


「死ぬかと思った……」

「ふふふっ。大袈裟ねえ」

被害者わたしが深呼吸を何度か繰り返しているというのに、加害者セイレーヌはのほほんと、どこ吹く風状態である。……どういう事!?


いや、本気で死にますよ?


クラウンの中を通って、女神の庭園にやって来た私達を待ち受けていたセイレーヌに掴まった。……というオチだったわけだが、一緒にここに来たはずの彼方は、セイレーヌのお胸では溺れなかった。


彼方はどこに行ったの?

セイレーヌのお胸から解放された私が辺りをキョロキョロと見渡すと、少しだけ離れた所でにこやかに世間話をする彼方と穏やかな微笑みを浮かべているアーロンの姿があった。


私はセイレーヌに。彼方はアーロンに、引っ張られたのだろう。


……そして、私の横には微妙な表情でアーロンを見ているサイがちょこんと座っていた。金糸雀はサイの頭の上に乗って、同じ様にアーロンを見ているが……何故かドヤ顔をしている。どうしてドヤ顔をしているの……?私には訳が分からないよ!?


サイはこの状況に少し緊張しているのか、その尻尾がユラユラと左右に揺れている。


――妹を亡くしたアーロンと、その妹の配偶者の魔王サイオン


女神カーミラが生きていれば、この二人はまた違った関係になったかもしれないが……彼女の亡き今では知る由もない。

女神カーミラを語り合う日は、やっぱり難しいのかな……。


「まだ時間が掛かるわね。……でも、大丈夫よ。もう少しなの」

「……セイレーヌ?」

セイレーヌは含みのある眼差しで私を見ながら微笑んだ。

この表情からすると……今はまだ教えてくれるつもりはないらしい。


セイレーヌの表情や話し方で悪い事ではなさそうなのが分かったので――追求をするのを敢えて止めた。


――きっとすぐに分かるから。だから今は聞かない!

私は口角を上げながら大きく首を縦に振った。


「セイレーヌ、《《ちょっと》》振りだね!」

「ええ。こうして会うのは、ね」


……また、含みのある言葉が来たぞ!?

これは聞いたら後悔するヤツだけど……聞かずにはいられない!!


「……どういう事かな?」

「だって、いつも見ているもの」


はい!キターーーーーーーー!!

ストーカー発言きました!!


まあ……セイレーヌにとって私は愛し子だしー?

愛し子である私をいつも見ているのは当然かな?だって、お仕事だもんね!?


「違うわよ」

「え……?」

違うんかーい!そして、どうして口に出していないことが分かるの!


「顔に書いてあるもの。私がシャルロッテをいつも見ているのは面白いからよ。あなたの周りはいつも賑やかで楽しいわ」

セイレーヌは銀色の瞳を細めた。


……あのー、私は娯楽か何かでしょうか?

解せぬ。私は眉間にシワを寄せた。


「ふふふっ。あなた達を見ていると幸せな気分になるの。……だから、あの子にもこの気持ちを分けてあげたいと思ったんだけど……」


視線を床に落としたセイレーヌの動きに合わせて、白銀色の長い髪はサラリと前に流れ、彼女がいつも身に付けている細く大きな輪っか状のブレスレットやアンクレットがシャランと小さく音を立てた。


セイレーヌが言った『あの子』は……

「カトリーナは閉じ籠もったまま出てこないのよ」


やはり女神カトリーナの事だった。

何も話さなくても、セイレーヌには全て筒抜けだったわけなのだから仕方無い。


それよりも気になるのは、女神カトリーナの事だ。


「閉じ籠もっているって……いつから?」

「そうね。カーミラが亡くなってからだから、もう百年近いかしら」

「百年も引き籠もってるの!?」

干からびてたりしない!?


「ぶっ…………!」

思わず呟いた私の言葉は、今まで微妙な顔をしていたサイを吹き出させるのには十分な効果があったらしい。


「お父様!?」

「ん、んんっ。コホン。本日は晴天なり…………本日は晴天なり」

吹き出したサイは、気まずそうに視線をさ迷わせている。

誤魔化したいのだろうが、上手く誤魔化せてはいない。


「お父様……」

金糸雀は、そんなサイをまるで残念なモノを見る様な眼差しで見ている。

……生温かい眼差しで見守っているともいえる。



「それは、カトリーナの話だろうか?」

今まで少し離れた所にいたアーロンと彼方がこちらへやって来た。


「ええ。あの子の話を始めたところよ」

答えたのはセイレーヌだ。


「そうか。君達はカトリーナと話をしに天上世界へ来たんだったね。しかし……カトリーナをあの場所から出すのは大変だと思うよ」

アーロンは首を少しだけ傾げながら、顎に手を当てた。


「ある程度の障害は覚悟していましたが……そんなに、ですか?」

私はゴクリと生唾を飲み込んだ。


「ああ。カトリーナは固い岩戸で塞がれた洞窟の中にいるからね」


――ええと、これは……『天岩戸大作戦!!第二弾』の出番ですか!?

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