表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

183/213

新天地~束の間の癒やし

陶器の様に硬くて冷たいのかと思いきや……全然そんな事はなかった。

ベルベットの様に艶やかで滑らかな感触は、いつまで触っていても飽きる気がしない。

「幸せやぁ……」

モフモフ派の私が、こんなにも夢中になるだなんて――――!


「きゃははっ」

「くすぐったいよぉー」

「でも、きもちいいね」

そうか。そうか。

嫌がられていないならば、もっとサービス(?)しちゃうぞ……!?


「程々《ほどほど》にしなさい!」

「あたっ……!!」

……はい。金糸雀さんから教育的指導が入りました。


「金糸雀……酷い。い、痛いよ…」

金糸雀のくちばしつつかれたおでこを擦りながら上目遣いに金糸雀を睨む。


「浮気がバレて()()()()()()愛想を尽かされても私は知らないわよ?」

金糸雀はヤレヤレという風に翼を広げながら首を左右にゆっくりと振った。


「ああ……。愛想尽かされるんじゃなくて監禁されるかもしれないわね」

「監禁!?」

どこからそんな発想が出たの……!?


「リカルド様はそんな事しないよ!?」

「……シャルロッテ、あなた。獣人甘く見ていない?」

「へっ?そ、そんな事ないよ!?だって優しいリカルド様だもん!」

「『優しい』ねえ……」

金糸雀はジト目を私に向けてくる。


「我が娘よ。説明しても無駄だと思うぞ。大丈夫だ。主はその内に身をもって知るだろう」

「どういう事!?」

サイは瞳を細めながら右足で顔を洗う。


「『論より証拠』ね」

「ふむ。主には良い勉強になるであろう」

どうしてそんな言葉を知っているの!?

……と、ツッコみたいが、さっきから色々と聞き捨てならない事を言われている様な気がする。

確かにリカルド様はヤキモチ焼きだが……。


「そ、それは大丈夫……!……のはず」

段々と胃が痛くなってきた私は、おでこを擦っていた手を鳩尾みぞおちにまで下ろした。そうして何度かゆっくりと擦りながら大きく深呼吸をする。


私が先程から撫で続けている相手はまだ幼い子竜達なのだ。


「ごめんね。何でもないよー?」

こちらを伺う様にジーッと見つめている金色の瞳を見つめ返しながら微笑んだ。

背後から二つの大きな溜息が聞こえた気がするが……私は気にしない!



――現在、私と金糸雀、サイの三人は竜のねぐらにいる。


ついお酒の方に先走ってしまったが、ここには滅多にお目に掛かる事の出来ない竜がたくさん暮らしているのだ。

言葉が話せるという彼等とは是非とも話をしたいと思っていた。

決して彼等の飲んでいるお酒の話が聞きたいが為だけでは……アリマセンヨ?


魔力が使えるようになったレオは、母親であるリラさんからその使い方についてレクチャーされているので今は別行動だ。後で合流する予定である。

今回の件を涙を流す程に喜んでくれたリラさんからは、『竜の涙』と言われるダイヤモンドの様にキラキラと光る石を貰った。

出産の際に雌の竜だけが数滴流す涙が石になった物だそうだが……希少価値がとても高い物だとサイが教えてくれた。

水に溶かして飲むと『不老長寿』になると言われているとか……!?

受け取りを辞退しようと思ったのだが、どうしてもと言われたら受け取らない訳にはいかなかった。

今のところ使用する予定はないので、異空間収納バッグの中に大切にしまわせて頂いた。


そんなリラさんからの許可を貰えた為にねぐらに来ているのだが、私が『女神の愛し子』なのもあってか、竜達かれらはとても友好的だった。

本来ならば部外者には絶対に立ち入らせないであろう場所――『ゆりかご』にも案内してくれたのだ。


そして、話は冒頭に戻る。


『ゆりかご』とは狩りに向かう親竜が子供を預ける為の託児所の様なものだと思ってもらえたら良いだろう。そのゆりかごには幼い子竜が三体いた。

私はそんな幼い竜達を思う存分に撫で回していたというわけだ。


まだ鱗にうっすらと産毛の残る幼い子竜達に触れていると、とても癒やされた。

モフモフとは違う魅力に目覚めた瞬間でもある。


お陰で今朝方まで続いた魔王様おにいさまからのお説教で沈んでいた心が一気に晴れた。可愛いは正義だ!


金糸雀は心配していたみたいだが、この子達はまだ小さく幼いのだからセーフだ。

『触るのは子供だけ』というリカルド様との約束は守れている。……よね?


「あー、ここから離れたくないなぁ……」

ちょっとはしたないが……ゴロンと横になると、私の上に子竜達がよじ登って来る。

三体分の体重がズッシリと一気にくるが、幸せな重みである。

思わず瞳を細めてしまう。


子竜達や親竜を見ていて気付いたのだが……リラさんとレオは青色の艶やかな鱗と鮮やか金色の瞳をしているが、ねぐらにいる他の竜達は青みがかった緑色の鱗だったり、薄めの金色の瞳をしていたりし、更に固体別に若干色味が違っている。


リラさんとレオの配色が『支配者とくべつ』の色である事を私はここで知った。


その時、仰向けで転がっていた私の顔に影が差した。

「何をしているの?」

私の顔を覗き込んで来たのはレオだった。


「……あれ?早かったねー?」

レオが合流するのはもっとずっと後の事だと思っていたから少しだけ驚いた。


子竜達を落とさない様にしながら起き上がろうとすると、先を読んだレオが子竜達を私の身体の上から下ろしてくれた。

「れおだー!」

「あそんでよー」

「あそんで、あそんで!」

「はいはい。今は用事があるからまた後でー」

子竜達にまとわりつかれたレオは、弟妹の面倒を見ているお兄ちゃんの様で微笑ましく思う。


「用事……?」

「うん。父さんが帰って来たんだけど、シャルロッテに会いたいって。だから呼びに来た」

レオのお父さん……!

数日前から滞在させてもらっていたが、レオのお父さんに会うのは初めてだ。


って……私の服!

子竜達と戯れていた私のドレスは少し汚れてシワシワになってしまっていた。

これは初対面の人に会える格好ではない。


『クリーン』と唱えて手早くドレスを綺麗にし終えた私は、子竜達とお別れをしてリラさん達の待つお城の様な邸へと戻った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ