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新天地~歓迎➀

「うーわーー!」

竜のねぐらから見えたお城の様な建物は、丸っと全てリラさんの邸だった。


驚くべきはその大きさと広さだ。

ユナイツィア王国の王城よりも大きいかもしれない……。

私は思わず口をあんぐりと開けたまま、お城としか言えない邸を見上げた。


竜が使っている邸だからこんなに大きいのか……。

はたまたリラさん達が凄いのか……。


因みにこのお邸は、現在の所有者はリラさんだが、元々はルオイラー理事長のモノだそうな。


「ふふっ。今日から愛し子達もここで生活するのだから、遠慮せずに入ってちょうだい」

微笑むリラさんに促される様にして、邸の中に入ったが……。

『凄い』としか言いようがない。

中でも一番驚いたのは天井の高さだろうか。竜達が間違えてここで変身しても天井を突き破る事はないだろう。


というか……ここで生活するのか……。

そう思うと少しワクワクしてきた。


「わぁーい!シャルロッテと一緒だ!」

……レオ。

幼い子供の様に喜んでいるけど、私と同い年だからね?!

見た目が可愛いからって騙されないよ?!


この邸を受け継ぐ者が、この辺りのねぐらの統率者となるらしい。今の竜達のトップはリラさんで……以前はルオイラー理事長だったという。


って……マジですか。

あの()()()()が、実はこんなにも凄い人だったのだと、私は改めて実感した。


いや、凄いのは知っていたよ?!

ただ、見境なく学生達に魔術攻撃して歩いているルオイラー理事長が、大人気ないというか……なんというか。

育てたい欲求からではなく、それが趣味によるものだとしか思えないのだから立派な《《害》》である。いくら人好きだとしても、だ。


ルオイラー理事長は、始祖竜――始まりの竜の内の一人である。

凄いのは折り紙付きである。(性格に難有り)


私がここで、ふと思い出したのは……始祖竜についての神話だった。


***


――――その昔。

神々が引き起こした先の大戦で、愛する家族を失った女神が水辺で一人涙を流していた。

すると……流れ落ちた涙は、光の粒となって新しい生命の形となった。

それは数匹の小さき()だった。


『女神様。我等を産み出して下さった尊きお人よ……。どうか泣かないで下さい。今日から私達があなたの支えになりましょう』

ある蛇が女神にこう言った。


『生まれたてのあなた達は、きっとすぐに死んでしまう……』

そう嘆き悲しむ女神に、

『それでは、どんな攻撃もはね除けるぐらいに硬い鱗を授けて下さい。そうすれば私達は身を守る事が出来ましょう』

別の蛇はそう続けた。


『それでもあなた達は私よりずっと小さい。きっとすぐに死んでしまう』

しかし、女神は尚も泣き続ける。


『では、私達をどんな生き物よりも大きな姿に変えて下さい。そうすれば簡単に狙われる事はないでしょう』

また別の蛇がそう言うと、

『例え、大きくて頑丈な身体になっても、あなた達は私より長くは生きられない。きっと私を残してすぐに死んでしまう……』

女神はポロポロと大粒の涙を流した。


『それならば私達に女神様の寿命をほんの少しだけ分け与え下さい。私達は子孫を繁栄させながら、女神様に使え続けると約束しましよう。決してあなた様を一人には致しません』

とある蛇が最後にそう告げると、女神は伏せていた顔をゆっくりと上げた。


『……本当に?』

『勿論です。我等は――女神の眷属。未来永劫あなた様にお仕え致します』


そうして女神の力を分け与えられた小さき蛇達は竜へと進化した――。


***

これが始祖竜の始まりだと言われている神話だ。


真偽は不明ではあるが……この神話が本当ならば、あの中にルオイラー理事長がいたことになる。

ルオイラー理事長は一体……何歳なのか。



リラさんに案内されるがままに、大階段に差し掛かると、そこには一枚の絵が掛かっていた。


「この綺麗な女性は……?」

「このお方は我等の偉大なる女神のカトリーナ様です」


色素の薄い肌に、月の光の様な淡い髪。

瞳の色は澄みきった空の青色をしている。

穏やかそうに微笑むこの人が……竜達を産み出した女神様……。


「主よ。この女神は我が妻のカーミラと仲が良かったはすだ」

私の腕の中にいるサイが、こちらを見上げながら首を傾けた。


「お母様と……?」

サイの言葉にいち早く反応したのは、金糸雀だった。

「ああ。お前が生まれた時に一度会った事がある」

「……そうですか。是非お会いしてみたいですわね」

金糸雀はポツリと呟いた。


母親と過ごした時間が短かった金糸雀は、母親に関わる話を少しでも聞きたいのだろう。


サイの奥さんと仲良しなら、きっとアーロンやセイレーヌとも知り合いだろうから、今度会える様にお願いをしてみようかな。


カトリーナ様の肖像画を横目に大階段を上り、幾つかの部屋の前を通り過ぎて行く。


そうして廊下の突き当たりの部屋の前に着くと……

「さあ。改めて……ようこそ竜の国へ」


リラさんとレオが大きな扉を解き放ったと同時に……


「うわぁーー!」

私は本日、何度目になるか分からない歓喜の声を上げた――――。

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