モーガジャで……➁
用意するのは、ライス島で手に入れた白玉粉と、砂糖、水、かたくり粉である。
まずは、耐熱ボウルに白玉粉と砂糖を入れ、二~三回に分けて水を加えながら白玉粉の粒が無くなるまで混ぜ、電子レンジでチンする。
「ロッテ、よろしく!」
私はオーブンの扉を開けて、耐熱ボウルを中に入れた。
『カシコマリマシター!』
元気な返事をしてくれたのは、アヴィ家の厨房でドライフルーツやその他の調理補助をしてくれているロッテ一号である。
チーン。
チートなオーブンの『ロッテ』は、電子レンジ機能も完璧である。
途中で取り出してかき混ぜたりしていないのに、白玉粉をダマのないトロリとした求肥に仕上げてくれた。
「わー!ありがとう!」
『ドウイタシマシテ。コノクライ、オチャノコサイサイデスヨ!』
「うん。良い子、良い子」
撫でると、エヘヘと嬉しそうにロッテが笑った。
家の子は天使みたいに可愛いのだ!!
……っと、せっかくロッテが手伝ってくれたのだ。
美味しく仕上げないと…………。
私は大きめな四角くて浅めな容器にかたくり粉を入れた。
その上に、まだドロドロしている求肥をまーるく伸ばしていく。
求肥の粗熱が取れたら次の工程だ。
ここで私が異空間収納バックの中から取り出したのは、ラベルのアイスクリームである。
スプーンで掬ったアイスも求肥の上に置いて行き、形を整えながら丸く包み、余分なかたくり粉を軽く叩いて落としたら…………。
「ラベルの雪〇大福の完成ーー!……って、ゲホッ……ゴホッ」
勢い余ってかたくり粉が付いた手を振り上げてしまった。
頭の上から降って来たかたくり粉のせいで……むせる、むせる。
「バカだな……」
ミラがそう言いながら私の頭から、かたくり粉をパッパと落としてくれる。
声こそ呆れてはいるが、粉を払う手はとても丁寧で優しかった。
「ミラ……ごめん。ありがとう」
ミラの優しさに感謝しながら目を開けると…………
「……お兄様?」
完成したての雪〇大福に、そっと手を伸ばしているお兄様がいた。
「あ、バレちゃった」
バレちゃったじゃないよね!?
可愛い子ぶっても、その行動は可愛くないからね!?
「いつの間にいたのですか……?!」
「ん?『ラベルの雪〇大福の完成ーー!……って、ゲホッ……ゴホッ』の辺り?いやー、アイスクリームの匂いがしたんだよねー」
アイスクリームの匂い……? ってそんなに匂いきつくないよね?!
……相変わらず、アイスクリームが関わると常軌を超えてしまうお兄様だ。
しかも、むせってる妹は放置ですか?
「取り敢えず、その雪〇大福を返して下さい」
「嫌だ」
い、嫌だ……!? 子供か!!
「因みに……今、それを素直に返して頂けたら、他のもあげますが……」
「コレも食べて、他のもたくさん食べる!」
ジャイ〇ンか!
俺の物は俺の物、お前の物も俺の物……じゃないでしょうが!!
「お兄様……」
「シャルロッテ……諦めた方が早いよ」
ジト目になってしまった私の肩にミラの手がポンと乗った。
「流石はアイスクリームだね!このモチモチな物との相性もバッチリだ」
『食べて良いよ』だなんて言ってないのに、勝手に食べてるし……。
「美味しいですか……?」
「うん。美味しいよ」
ニコニコ笑うお兄様。
あーもう……仕方無い。
私は苦笑いを浮かべながら大きな大きな溜息を吐いた。
お兄様が私に甘い様に、私もまたお兄様に甘いのだ。
まあ、私の場合は魔王様が怖いとも言う……けど。
「ミラ!お兄様に食べ尽くされる前に私達も食べるよ!」
「あ、うん!」
行儀は悪いが、手掴みさせて頂く。
次回は箸か和ようじでも用意しよう。
雪◯大福にかぶり付くと、求肥がむにーっと伸びた。
そうそう。これこれ。
大福の醍醐味はこれだよね!
モチモチで少し甘めな求肥と、爽やかなマスカット風味のラベルのアイスがとても良く合う。
これならば何個でも食べられそうだ……。
って、もう無いし。
ミラもお兄様も手に2つ持ってるし!
もう一つ食べたかったのに……。
『ゴ主人様……モット作リマスカ?』
「ロッテ……」
気遣いの出来るロッテは私の天使だ!!
だけど……
「今は止めようかな」
作っても奪われるだけだし。
珍しく、ミラがお兄様の雪◯大福を狙っている。そんなお兄様もミラのを……って、仲良く自分の分を食べなさいよ。
魔王VS魔王の戦いになっているじゃないか……。
あんなに可愛かったミラはどこへ……。
私はロッテを撫でながら、天井を見上げた……。