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ライス島~その後➁

ふふふっ。

待ちに待った晩酌ターイム!!


深夜のアヴィ家の厨房なうのシャルロッテです。


ライス島で手に入れた海苔(ノリノリ)

本日のメインのおつまみはこの海苔を使って作ります。

と言っても、凄く簡単!


用意するのは、海苔、チーズ、塩。これだけ。


チーズに塩を少々振り、塩が少し溶けたら海苔を巻く。

五分もかからずに、絶品『海苔チーズ』の完成ー!!


ね?簡単でしょう?

なのに、凄く美味しいんだよね!


味海苔や韓国海苔で巻いても勿論美味しいよ!



……とはいえ、これだけでは少し物足りないので、もう一品作っちゃいます!


用意するのは、海苔、長芋、梅干しだ。


皮を剥いた長芋は細目の短冊切りにして、種を取り外して叩いた梅干しと和える。

刻んだ海苔を添えたら……『長芋の梅和え』完成!!


いやー、これまた簡単で良いね!!


……え?

長芋や梅干しをどこで手に入れたか?


実は……ライス島には、ご飯のおかずに最適な食材が豊富にあったのです。

これまた早く言ってよ!!!……である。


長芋、梅干しの他に納豆や塩漬けにされたタラコまであったよ!!


因みに、ライス島で言えば『ローロト』『ボシウメ』『トーナツ』『コータラ』。

……って、業界用語か!!


こんなに炊きたてご飯に合うものがあるのに……あのバリバリなマイ……。

まあ、好みは人それぞれ……と思う事にする。うん。

炊きたてのマイの美味しさが伝えられたから、私は満足だ!!



さてさて……。

せっかくおつまみが出来たのだから、早く晩酌を始めなければ。


今日のお酒は何と……!

『エール』である。

勿論、温くて不味いエールではない。


私の手によってキンキンに冷やされた……

『フレーバーエール』なのだ!!


お馴染みの食用花であるラベル、シーラ、スーリーのシロップをそれぞれ加えて作り出した新商品である。


私は作り終えたおつまみを両手に持って、いそいそと自室へと戻った。



****


「おかえりー。シャルロッテ」

部屋の前に辿り着いたのと同時に開かれた扉。


何故にお兄様が私の部屋にいるの……?

しかもこんな夜中に。

両手がふさがっていたから、扉を開けてもらえたのは助かったけど……。


にこやかに出迎えてくれたお兄様の視線は、私の手元に注がれている。


……お兄様は私と一緒に飲む気だ。

しかし、一応聞いてみる。


「お兄様……どうして私の部屋に?」

「ん?お酒の匂いがしたから」


……まだお酒は開けていませんが?

もしかしてお兄様は既に酔っている?


「あっ……!」

「ほら、飲むんでしょ?運んであげるから早くおいで」

ジト目を向ける私に構わずに、お兄様は私から大事なつまみを取り上げた。


……『早くおいで』ではない。

ここは私の部屋である。


テーブルの上におつまみを並べたお兄様は、まるで自分の部屋かのような自然さで寛ぎ始める。

こうなったお兄様は、誰にも止められない。


はぁ……。

一人の至福の晩酌タイムが……。


「お兄様の分のグラスと取り皿は用意していませんからね?」

盛大な溜め息を吐いた私は、一子報いようとしたが…………。


「大丈夫。用意してあるから」

見事に撃沈した。


ていうか、お兄様……。

今、どこからお皿とグラスを取り出したのですか……。


はあ……。

もうこれ以上の反抗は、時間の無駄である。


諦めた私は、お兄様の正面に腰を下ろした。


「あれ?隣来ないの?」

「行・き・ま・せ・ん!」

私がいつまでもお兄様にくっついている子供だと思ったら大間違いだ!!


「……それは残念だな」

そ、そんな寂しそうな顔したって……知らないんだからっ!


頬を膨らませる私に、お兄様はクスクスと笑う。


「ほら。グラスを持って?」

お兄様はいつの間にか、二つのグラスにお酒を注いでいた。

その差し出されたグラスに入っていたのは、乳白色をした見たことのない……お酒?だった。


「これは……?」

グラスを見ながら私は首を傾げる。

「飲んでみて」

グラスを口元で傾けるお兄様に習い、私も自分のグラスに口を付けた。


そっと傾けると……

「……んっ!?」

甘い。凄く濃厚で甘いのに、パチパチと弾ける炭酸のせいか後味がとても爽やかである。

これは……!


「どう?僕の作ったお酒の味は」

「美味しいです!けど……この味はアイスクリーム?」

濃厚なミルクにラベルのマスカットな風味。

つまり、ラベルのクリームソーダ味なお酒である。


「正解」

お兄様はニッコリ微笑んだ。


遂に……お酒にまでアイスクリームを出し始めた……。

恐るべし、アイスクリームの教祖だ。


まあ、和泉の世界にはそんなユニークなお酒も普通にあったけどね。


しかし、こうして新しいお酒が生まれてくれるのは単純に嬉しい。

アイスクリーム味のお酒は自分では作らなかっただろうし。

この調子で色々な種類のお酒をみんなに作って欲しいと思う。


……お兄様のは全部アイスクリーム味がベースになりそうだけど……。


私はグラスに残っていたアイスクリーム風味のお酒を一気に飲み干した。


「ご馳走様でした!!お兄様、次は私の新作を飲んで下さい!」

魔術を使ってグラスをキレイに浄化した私は、フレーバーエールをそこに注いだ。


キンキンに冷えたラベル風味のエールだ。


「へえー?」

お兄様の瞳がグラスに注がれたエールを凝視する。

澄んだ琥珀色。フワッと香るラベルの爽やかな香り。


お兄様はエールに口を付けた。


「へえ……!」

カッと見開かれる瞳。


ふふふっ。

驚いてる。驚いてる。

私はグラスを傾けながらニヤッと笑った。


「全然甘くないんだね」

首を傾げるお兄様。


ラベルは香り付けとして使用している為に、甘くはない。

香り成分だけを抽出して加えてある。


なので、おつまみにも合います!

海苔チーズのまろやかな磯の香りとエールは合うんだな!これが。


「甘いエールもありますよ?」

ラベルのシロップをエールに混ぜたら、高級な紅茶の味に似た新しいお酒が出来た。


「甘いエールと甘くないエールをセットで売ったら面白いかも」

顎に手を当ててポツリと呟くお兄様。


そ、それは『呑み比べセット』というやつですか?!


「お兄様!それはナイスアイデアです!」

立ち上がった私は、グッと親指を立てた。


「シャルの事だから、シーラとスーリーでも同じ様に作ってるんでしょ?それも飲んでみたいなー」

「はい!喜んで!!」



今日は晩酌をしながら、ゆっくりと夜を過ごすつもりだった。

だが、お兄様のワイワイしながら飲むのも悪くない。


こうして夜は更けていったのであった……。



お兄様のペースに釣られて飲んだ私が、次の日に頭痛に悩まされたのは余談である。


……お兄様はケロリとしていた。

こんなの、不公平だ!!

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