探索後②
バシャーーー!!シャー!!
右手から勢い良く湧き出す噴水。
「あははは・・・」
渇いた笑いしか出て来ない。
噴水はアーチを描き、綺麗な虹までをも造り出している。
天使が存在するなら降臨して来そうな・・・・・・?
って、駄目だ。
【ラブリー・ヘヴン】って言うタイトルだった位なのだから、天使が存在してもおかしくない。
フラグ禁止!
それにしても・・・
こんなに右手から噴水が湧き続けているのに、不思議な事に全く疲れたりしてない。
まだまだ元気だし、他にも魔術が使えそう・・・・・・?
噴水を止めて和泉としての記憶を辿る。
水や氷の他に、RPGによくある魔法は炎や、風、土、補助、回復・・・・・・とか?
ひとまずは、(悪)シャルが使えなかった炎系を試してみよう。
水とは真逆な火は普通ならば使えない。使えたとしたら相当な術者になる。
イメージは火の玉レベルの可愛い炎だ。
イメージを限界まで練り上げ・・・・・・
「ファイアー!」
と、呪文を唱える。
ゴォォォォォォォォォ!!
おっと・・・・・・二メートル位の火柱が手の平から出現しましたよ?
「・・・・・・マジデスカ」
思わず片言になってしまった。
さっきからイメージよりも強く、大きくなってしまうという・・・このチート的な感じは・・・。
「サンダー」
ドゴォォォーン!!
凄まじい光を帯びた稲妻が裏山の方へ落ちる。
・・・・・・あぁ、邸の中から悲鳴が聞こえるー・・・。
『エアロ』『クエイク』『レビテト』・・・・・・
って、嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
何で想像した魔術が全て使えるの!!!?
これってチート!?
まさか本当にチートなの!?
・・・・・・前略。
和泉だった頃のお母さんへ。
生まれ変わった私はチートな娘になってしまったみたいです。
地面に膝と両手を付いて、項垂れた状態で暫く現実逃避をしていた私。
しかーし!!
開き直る事にしました!
チート上等!!
これで未来が変えられる可能性が増えたのだと、そうポジティブに捉えるんだ!私。
使える能力が多い事にこしたことは無いし、念願のお酒作りにも使えるかもしれないし!!(これが一番重要)
サンダーで炭酸水が作れないかな?
とか、余計な事を考えたりもした。テヘッ。
神様か女神様か分かりませんが、ありがとうございます!
私は立ち上がり、右で握り拳を空に向かって大きく突き上げた。
「チート最高!!」
「・・・・・・楽しそうだね」
ギクリ。
突然、ここに居ないはずの人の声がした。
「ひぃっ・・・・・・!!」
私の身体は、悪い事がバレた時の幼子の様にビクリと大きく跳ね上がった。
恐る恐る振り返り、声のした方へ視線を向ける。
そこにいるのは、勿論・・・・・・
「ル、ルーカスお兄様!!」
ですよねぇ・・・・・・。
ニッコリ笑顔のルーカス様の降臨である。
笑顔が超絶に怖い・・・・・・。
「やっぱり、ここに居たんだ?シャルロッテはここが好きだよね」
「あ、あのー、お兄様?お父様とのお話しは終わったのですか?」
神出鬼没なお兄様の登場に動揺している私は、必死に自分を取り繕おうと頑張る。
「うん。終わったよ。それよりもスカートが汚れてる。淑女がドレスを汚しちゃ駄目じゃないか」
お兄様は私に真横に立って、パタパタとスカートの汚れを落としてくれる。
「あ、ありがとうございます・・・」
「どう致しまして」
ニッコリと微笑んだお兄様は、おもむろに私に顔を近付け・・・・・・
「お転婆はそこそこにね?」
そう私の耳元で囁いた。
「・・・・・・っ!!」
耳を押さえて、後退りする私を瞳を細めたお兄様はニコニコと楽しそうな顔で見ている。
・・・・・・目が笑ってない!!
逃げなくちゃと、本能が警告を鳴らしている。
咄嗟に踵を返そうとした瞬間。
「ランチはまだでしょう?僕も持って来たから一緒に食べよう。」
お兄様に手を掴まれた。
痛くはないけど、絶対に振りほどけない。そんな絶妙な強さだ。
『逃がさないよ?』そう細められた瞳が語っている。
プルプルと子犬の様に体を震わせる私の手を引いたお兄様は、紳士らしく流れる様なスマートな誘導をしながら屋根付きのテーブルセットの椅子に私を座らせた。
万事休す!!