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探索後①

さて、これからどうしようか?


予定では、まだまだ裏山を探索しているはずだったから時間が余ってしまった。


昼食にはまだ少し時間があるし・・・。


お兄様に釘を刺されたから、裏山には戻れない。

バレたらどうなる事やら・・・・・・。



ふむ・・・。

図書室に籠もる?それとも・・・?


あ、そうだ!

だったら、お弁当を作ってもらってあの場所に行こう!


私はいそいそと邸の中へ戻り、マリアンナにお弁当を一つ用意してもらった。





***


うわぁー!

相変わらず綺麗な所だ・・・。


私は感嘆の溜息を吐いた。


季節毎の美しい花や、数十種類もある豪華な薔薇達が綺麗に整えられている。アヴィ家自慢の庭園。

シャルロッテの一番のお気に入りの場所だ。


庭園の隅には屋根付きの小さなテーブルセットがある。

手に持っていたお昼ご飯入りのバスケットをテーブルの上に置いた私は庭園の回路を進み始めた。




ゆっくりと時間を掛けて庭園をぐるっと一周し、テーブルセットのある庭園の隅へと戻って来た。


「良い匂い・・・」


この庭園の隅には食用花のコーナーがある。


私が顔を近付けて匂いを嗅いだのは、ラベンダーの花の付き方に似た【ラベル】と言う花だ。


ラベルの花弁(はなびら)を一枚摘んで口の中に入れる。


「んっ・・・甘い!」

ラベルはマスカットの様な味のする食用花だ。

この小さな花弁一枚だけでもラベルの充分な甘さが楽しめる。


他にも、林檎の様な味のする白い花のシーラや、苺の様な味のするスーリーと言う花もある。


和泉の記憶が戻った後、この食用花達を使って新しいお酒を作り出す事が出来るのではないかと私は考えた。


お酒と言えば・・・この世界にはエールの他に、さくらんぼの様な果実を漬け込んだ【クランクラン】という有名な果実酒がある。


ゲームのさり気ない食事や晩餐のシーンに出て来るこのお酒を和泉は、ずーっと飲んでみたいと切望していた。まさか()()クランクランが飲める日が来るなんて!!

なんて幸せな事だろう。


ラベルやシーラ、スーリーの花弁を焼酎の様なアルコール度数の高いお酒に漬け込んで、甘い味や匂いを移しても良いし。花弁で甘みを濃縮させたシロップを作ってからアルコールに混ぜても美味しそうだ。

炭酸水で割って、シュワシュワにしてから飲むのも良いな~。

この世界に炭酸水って存在するのかな?

後で調べてみよう!


あー!

お酒が飲める様になるまでの4年間が待ち遠しくて仕方が無い。




た・だ・し!

ゆっくりと安心してお酒を飲める様にする為には、不安要素を全て取り除かなければならない。

猿飢やその他の魔物の討伐・・・・・・。

スタンピードを起こさない様にする。

最悪起こってしまったとしても、対処出来る為の力が欲しい。


・・・・・・さっきは身体を強張らせて震える事しか出来なかった。

でも、これじゃ駄目なんだ。

自分や大切な人達を守れる力が欲しい。

誰も亡くしたくない・・・・・・。


ゲームの中でのシャルロッテは、ほとんど魔術を使えてなかった。

ほんの少しだけだが、使えたのは水と氷の魔術。


水は如雨露(じょうろ)で水やりをした時の水量しか出せず、氷は小石大の氷が二、三粒作れる程度と、非常に弱い。


お父様もお母様も、お兄様だって魔術が使えるのだから、シャルロッテがこんな弱い魔術しか使えないはずはないんだけどな・・・・・・。

シャルロッテは味噌っかすだったのだろうか?

そこが不思議で仕方が無い。


まず、この世界で魔術を使用するには、何よりもイメージが大事だ。

魔術を使う為に呪文(スペル)を唱えるのだけど、イメージを練り上げた後に唱える呪文(スペル)の文言は何でも良かったりする。


要は気持ちの問題的な?

イメージを口にする事で発動しやすくなるのだ。


悪役令嬢シャルロッテの呪文は、『氷よ!美しい(わたくし)に従いなさい!』だった。

・・・うわぁ、シャルロッテ痛い。どんな呪文だよ・・・・・・。

全くイメージなんか湧かないじゃないか。


んー、()か・・・・・・。


シャルロッテが出せるのは氷の粒だ。

氷の粒・・・・・・氷の粒・・・・・・。

頭の中でイメージを練り上げる。


「アイス!」

手の平を上に向け、某冒険ゲームの呪文を唱えてみた。


すると・・・・・・


ゴロン。

手の平にサッカーボール位の大きさの氷の塊が落ちてきた。


「うわぁ・・・・・・っ!!」

私は慌てて両手でそれを受け止めた。


イメージしたのより大きくない!?

シャルロッテは小石の大きさしか出せなかったよね!?


た、たまたまだよね?


氷のサッカーボールを足元に下ろして、もう一度唱えてみる。


氷・・・小石・・・小石、小石・・・・・・。



「・・・アイス」


ゴロン。

さっきと同じサッカーボール大の氷の塊が落ちて来た。


「何で、イメージより大きくなるの!!!」


私はポイっと二個目の氷のサッカーボールを投げ捨てた。




落ち着け・・・。

・・・・・・落ち着くのよ。シャルロッテ?


魔術を使える事が分かったんだから、良いじゃない。


瞳を閉じて胸元に両手をクロスして当てながら、深呼吸を繰り返す。


悪役令嬢シャルロッテ・・・って、これ長いな。

(悪)シャルで良いかな。


(悪)シャルの文言である『従いなさい』なんて恥ずかしい呪文を言わなくても氷の魔術が使えたじゃない!


・・・ポジティブ。ポジティブ。私は常にポジティブ!!



じゃあ、次は水!


(悪)シャルは・・・『水よ!清流の様に清らかな(わたくし)に従いなさい!』

と、痛い事を言ってたけど、勿論却下だ。



花達に如雨露で水をあげる様なイメージを頭の中で練り上げ・・・・・・


「ウォーター!」


バシャーーー!!シャー!!!

・・・・・・右の手の平から噴水が出ました。



何でこうなった!


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