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それでも私は憧れる。  作者: 平 五月
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先生


 この世には、こんなに綺麗な人がいるのか


 私は初めて先生を見たとき、そう思った。


 友達にこのことを話したら、大袈裟だと笑われたけど。


 でも、確かにあの時の私はそう思ったのだ。




 いつも通り、朝練のために7時に学校に着く。下駄箱で同じクラスの京子と待ち合わせをして、音楽室のカギを取りに職員室へと向かう。


「宮崎先生、今日はなんか編み込んでたね」


 職員室を出ると、京子が私にそう言った。


「多分ハーフアップ?だよね?京子、やり方わかる?」


「うーん、やり方は大体わかるけど、ヘアアイロンがないと厳しいかも」


「大丈夫。アイロンなら持ってきてる。音楽室にコンセントあるよね」


「うわ、流石めぐみ。愛が重いわぁ」


 宮崎先生が私の学校に赴任し、吹奏楽部の顧問になってから一か月ほどが過ぎた。一目見て宮崎先生に心を奪われた私は、次の日から、先生の髪形をまねするようになった。


 朝一番に来て、音楽室のカギを取りに行くという建前で宮崎先生の髪形を確認しに行く。


 そして、いつもなら女子トイレで髪形を変えるのだが、今日はヘアアイロンを使うため、音楽室へと向かった。



「こんな感じでいいかな?」


「流石京子!完璧!」


「でしょ?我ながらいい出来だと思うよ。めぐみのおかげで最近腕が上がってきたかも」


 先生の髪をまねし始めてから、髪は京子にやってもらうことが多い。京子は髪をまとめるのが上手いのだ。決して私が下手というわけではない。


「それにしても、宮崎先生大人気だよね。めぐみもだけどさ、顧問が宮崎先生になってから、明らかに朝練に来る人増えてるよ」


 私が朝練を始めたのは宮崎先生が顧問になってからだが、京子は1年の時からほとんど毎朝、朝練をしている。小学生の時からトランペットをやっているそうで、高校から始めた私でも、音の違いが分かるくらいには上手だ。


「特に男子はさ。サックスの佐々木とか、熱心に質問したりしちゃってるし。去年は部活中もまじめに練習してなかったのに」


「そういえば確かに、最近まじめにやってるね。前までよく練習中ちょっかいかけてきてたのに」


 やっぱり、先生に魅せられたのは私だけではないのだ。まぁ、私の思いが誰かに負けるはずないけど。


「よし、じゃあ練習しに行こっか」


 京子がそう言うと、私は音楽室に置いてある私のトランペットを取りに立ち上がる。『私の』といっても、学校から借りているものだけど。それに比べて、京子は自分で買った、いわゆるマイ楽器だ。私もマイ楽器に憧れる気持ちもあるけど、京子ほど熱心に打ち込む気持ちはない。


 それぞれの楽器を手にした私たちは、誰もいない音楽室を後にし、いつも練習している教室へと向かった。



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