後書き
『4U 生き辛さを抱える君へ』を読んで頂き、誠にありがとうございました。
タブーに挑戦した癖の強い作品だったとは思いますが、いかがでしたでしょうか。
今、日本で精神疾患に掛かっている人は五人に一人と言われています。
決して他人事ではない数字です。
明日、あなたが精神疾患になるかもしれない。
あなたの大切な人が精神疾患になるかもしれない。
もしかしたら、これを読んでいるあなたの家族に、友人に、親戚に、職場に、そして社会に出たくても出られない人達……身近な所に精神疾患で苦しんでいる人がいる。
精神疾患で生き辛さを抱えながら、必死に毎日を生きている人達がいる。
それを多くの人に知って貰いたくて書き始めました。
暗い印象の付き纏う精神疾患、精神科病院。
私自身、統合失調症で一度だけ病院に入院しました。
医者は通院治療で良いと仰ったのですが、「私は社会に迷惑を掛ける屑で頭がおかしいから、他所様に迷惑を掛けない為に一生精神科病院に閉じ込めておくべきだ」という悲惨な考えから、自ら入院生活を選びました。
精神疾患のある者は社会から隔離すべきだ、という偏見があったのです。
「もう、二度と外の世界に出られなくても構わない」と決心して入院しました。
しかし、実際に入った精神科病院は鉄格子がある訳でなし、患者さん達も明るく親切でフレンドリー。
時々奇妙な事は起こるけれど、総じて和気藹々と楽しく過ごせたのです。
健常者と話していると悪気の無い言葉が心の柔らかい所に刺さる事もあるけれど、苦しみを知っている分なのか、患者さん達は触れて欲しくない所には触れて来ない方が多かったように思います。
急かしたりせず『ゆっくり治していこう』というスタンス。
どんな自分でも『肯定』してくれる、優しい世界。
当然、天使でも悪魔でもないので、嫌な方も居ましたけどね。
人を思いやれる素敵な人達が沢山居るという点では健常者と同じです。
集団ストーカー、電波・電磁波攻撃、テクノロジー犯罪、顔認証システム被害。
ツイッターで検索してみると、それらの妄想に囚われ、医療機関に繋がることの出来ていない患者のなんと多いことか。
彼らは必死にSOSを出しています。
きっと、とても不安で苦しんでいる。
妄想であったとしても、それだけは真実。
初めて見た時、『これ、なんとかならないかなあ』と感じたのですが、彼らに『統合失調症なので病院に行ってください』なんて言おうものなら『工作員』認定されて敵視されるだけでしょう。
彼らは『統合失調症に仕立て上げられて社会的に抹消される』と信じているのです。
別に精神疾患になっても社会的に死んだりしないんですけどね。
『ツイッターを見ると何万人も集ストやエレハラの被害を受けている!
統合失調症なら妄想は一人一人違うはずだから私は正常!』と彼らは思ってるようですが、骨を折ったら百%の患者さんが患部が痛いと言うはず。
それと同じで妄想が一致する事はなんらおかしくないのです。同じ病気なのですから。
彼らを救う事は私には出来ないけれど、新たな『被害者』を減らしたい。
その為には一人でも多くの方に統合失調症をはじめとする精神疾患について知ってほしい。
そして、身近にそれらしき人が居たら医療機関に繋いで欲しい。
そんな願いを込めてこの作品を構想しました。
知らないだけで実は身近な精神疾患。
精神疾患の暗く悲惨な印象をなんとか変えたい。
だったら『精神疾患ラブコメディ』があっても良いんじゃないか?と思って書いてみました。
ポップに、明るく、ライトにと意識しながら書き上げました。
病気が学べてユーモアのある精神疾患系小説を目指したつもりです。
個人的には『笑い』が病気を救うと思ってます。
折角病気になったのだから、自分にしか書けない物を書きたいという思いもありました。
何しろ、病気ガチャSSRのプロ病人ですから(笑)
妄想や幻覚にはある意味医者より詳しいですよ。体験してますから。
統合失調症という病気は病前から知ってましたが、なってみて思うのはこればかりは想像力の限界の外にある世界です。
なろうの中で人気のジャンル「異世界転生」「異世界転移」。
これらは現代社会から逃避したいという、現代人の生き辛さの表れのように感じます。
現実世界に嫌気がさしている方へ。
理由が無くてもなんとなく生き辛い方へ。
決して死だけは選ばないで欲しいと願います。
ここでカフェ4Uの物語は一旦終了です。
ですが、何かネタを思いついたら番外編として更新する事があるかもしれません。
その時は是非よろしくお願いしますね。
後書きまで読んで頂きありがとうございました。
この物語を読んでくださった方の中に何かを残せたとしたら幸いです。
半年以上前、久しぶりに会った健常者のリア友に統合失調症になったとカミングアウトした際、幻覚が見えた話をしたら「お、おう……」みたいな反応をされたのですが、彼女達は変わらず遊びに誘ってくれます。
腫れ物を触るようにではなく普通に接してくれる友人が居るってとても幸せな事なんだなと思います。
精神看護専門看護師さんに言われた言葉で印象的だったものがあります。
「病気があなたの全てではないんだよ」という言葉です。
病気になると頭の中は病気で一杯になりがちですが、あくまで私の一部。
精神疾患は闘病というよりは病気という隣人と共に暮らすような感覚です。
精神疾患があっても明るく暮らせるかどうかは考え方次第だと思います。
私にとっては病気はプラスでした。
視野というか、世界が広がった気がします。




