学校の昼休みにて。
「Trick or Treat」
昼休みになって廊下を歩いていると紗耶香が背後からそう言って手を出してきた。
まるで妹が俺と同じ歳になって、でも心は4歳児のまま現れたのかと思った。
「……今日は何日?」
「じゅ、11月2日」
俺なら普通にお菓子をくれると思っていたのか、差し出した手がおずおずと胸元へ移動する。
恥ずかしがっているのだ。
わかっていて質問を続ける。
「ハロウィンはいつ?」
「10月……31日」
「じゃあ、この手はなんだったの?」
胸元に抱くようにして移動していた手をとると紗耶香の顔は真っ赤になった。
付き合って2ヶ月だが、紗耶香は手を握るだけで顔を赤くする。
最初は気にしていたが、赤くなりながらも紗耶香はこうしてもらうのを望んでいる。
それがわかってからは、あえて人が見ているような場所で手を握る。
そうすると可愛いくらい照れて慌て出す。
「あ、あのっ。も、もういいよ!なんでもないからっ」
ちょっと悪戯し過ぎたかと頭の片隅で思ったが、顔をりんごみたいにしている紗耶香をみていると別の悪戯をしたくなった。
「こっちおいで」
手をひいて階段を下りる。1階は普段、あまり使われていない。それにここは1番利用されない階段。
それでも階段の陰に移動して、壁を背に紗耶香を立たせる。
「ちょ、何するの?」
「お菓子、欲しいんだろ?」
少し悪戯っぽく笑って紗耶香の口に自分のそれを重ねる。
何度か角度を変えてキスしてから約束のお菓子をあげる。
「!っ……んんっ」
ようやく離してやると紗耶香は口の中のものを言い当てる。
「あ、飴…?」
「そうだよ」
「それなら普通にくれたらいいのに!」
今もなお顔を赤くしたまま文句を言う紗耶香。
やっぱり可愛いと思ってしまう。
「Trick or Treat」
「へ?」
「俺にもお菓子ちょうだい」
至近距離で囁くように言うと再び紗耶香の頬が赤くなる。
「で、でも私、お菓子持ってない」
「なら、これでいい」
「!」
先程、紗耶香にあげたものを貰うためにキスをする。
真っ赤な顔はやっぱり可愛いなと性懲りもなく考えながら……。
『いちごミルクの悪戯』
口に広がる甘い味。
それは恋の味。
「チャイム……っ、鳴っちゃったよ……」
「ちょっとくらい、だいじょーー」
言葉を言い終わらないうちに気がついた。
つぎの授業は……
「英語のテスト……」
ハロウィンが近いということで、
過去に書いた、
ハロウィン企画を掲載しました!
1ページ目、2ページ目との
主人公の雰囲気を意識して描いてます。
2018.10.24 天空鈴