表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/2

学校に行く前に。

2009.11.09

過去作品。



「――!」



 何を言ったのかイマイチ聞き取れなかった俺の目の前に小さな紅葉のような手の平を差し出してきた。


 最近の高校生にしては珍しいらしい朝食を口にしながら、今日の小テスト内容を振り返っていた時だ。


 あ、別に真面目な生徒なんかじゃない。


 小テストも前回が平均点以下だった生徒に課せられるものだった。英語の教員は諦めが悪い。平均点以上とらなければ永遠に追試をする。追試の数だけ成績に影響してしまうので、仕方なく勉強していた。


 そんな俺の横にトコトコと水色のスモッグに身を包み、黄色い帽子と鞄を提げた歳の離れた妹が来たのだ。



「はろうーんだよ!」


 俺が妹を見たまま何も言わないのでじれったくなったのか、そう叫んでくる。



「お兄ちゃんが困ってるでしょ。もうハロウィンは終わったんだからお菓子は貰えないのよ、由美ちゃん」



 母さんがお茶を机に置きながら、妹の由美に言い聞かせる。

 由美は頬を膨らませて俯く。その由美の背後にはカボチャの絵からどこかの紅葉の写真に変えられたカレンダーが貼ってある。



 俺はまだ膨れっ面の由美に見えるように手を出した。



「Trick or Treat」



 静かにそういうと由美はパッと顔をあげた。英語がわかるのかと不安に思ったが、言葉の意味がわかったようで慌ててポケットを探り出す。


 その動作を見ながら最初に由美が言いたかったのはこの言葉だと思い当たる。

 わかってても口には出来ないらしく、もはや暗号だった。



「はい!」


 由美はようやく2日前にもらったであろう飴を鞄の中から見つけて差し出してくれる。


 それを受けとって、由美が飴を探している間に母さんが机に置いてくれた小さなチョコを由美にあげる。


 喜んでそれを口にして「甘い」と笑顔をみせる由美を見ながら、玄関に向かう。



「行ってきます」



 妹の面倒をみる俺に礼を良いながら母さんが見送ってくれるのを背後にドアを閉めた。



.

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ