27話・トサ王子とニートさんと私
翌日の朝、私は襲われていた。
朝日が差し込むベッドの上で、私は茶髪ロングの編み込み美少女に襲われていたの。
「アーヤカ。おはよう」
「ス、スズカ!? キスするな!」
と、ケリを入れた。被害は頬にキスをされただけで済んだわ。危なかった……。
いきなりバクーフ王の娘のスズカが訪ねて来たわ。ここにはトサ王子もいるし、まだ出会うのはマズイと思う。
「窓が空いてるって事はそこから侵入したのね。私の魔力結界をよくすり抜けたものだわ。って、それより一階のゲストルームにはトサ王子が寝てるのよ。今、バクーフ王の娘であるスズカと会うわけにはいかないでしょ? 帰った方がいいわよ」
「だからニートさんを連れて来ておいたわ。時計仕掛けのブドウシャーベットをあげたらホイホイ付いて来たわよ。全裸で」
「服を着させて!」
と、裸族のニートさんを心配した。そして冷静な顔でスズカは言う。
「アヤカの言う通り、今は私はトサ王子には会えないから、家臣達が来るまでの今こそ攻めておくのよ。正式に王宮に来れば私はまたヒロインモードになってほとんどの自我は消えてトサ王子との婚約マシーンになっちゃうからね」
「確かにチャンスね。とりあえずトサ王子を知るところから始めるわ。気をつけてねスズカ」
「それは貴女に言うわよアヤカ」
と、スズカは二階の窓から下へ飛び降りた。
玄関のベルが鳴り、私は全裸らしいニートさんを迎えに行く。
(とにかくドアを開けたら全裸だから股間だけは隠してもらわないとね! トサ王子が気付く前に服も着せないとならない!)
勢い良く玄関のドアを開けると、私はニートさんの股間を隠した!やけに人間の肌では無い感覚が右手からするわ……。
「アヤカ? 何故僕の股間を触っているんだい?」
「あれ? 服を着てる……?」
ニートさんは照れて、私は謝る。
(やられた! 股間を隠そうとして手を出したら、服を着ていたからそのまま手を伸ばし過ぎた!スズカのヤツめ……)
ニートさんは服を着ていたの。
私はスズカに騙されたようね。
そんなこんなで、私とニートさん。そしてトサ王子との朝食だわ。スララは色々とボロが出る可能性があるから、森にバタードングリ集めに行ってもらっているの。
「初めましてトサ王子。僕は森の奥に住んでいるニートです」
「おう! 俺はトサ王国のトサ王子だ。っても、家臣達はまだ旅の途中で一人で来ちまったからバクーフには信用されてないがな。ハハッ!」
と、ニートさんは人当たりがいいのでトサ王子とも仲良くなれそうかな。アイヅ王子とも仲良くなれたから大丈夫でしょう。そして、トサ王子はとんでも無い事を言った。
「アヤカ。お前はニートと付き合ってるのか?」
「ブブーーーッ!」
と、オレンジンジャエールを吹き出した。
そしてニートさんの顔がビショビショになる。急いで私はニートさんに謝って顔を拭いたわ。
(さっきからミスばかりだわ。何かニートさんの前だとミスが多いわね私は……)
そして、仕切り直しになる朝食を済ませると、私は紅茶を飲みながらトサ王子にトサ王国とモンスターとの関係を聞いていた。
「トサ王国は普通の国のようにモンスター殺しをするけど、仲間と認識すれば仲間。だからこそ乗り物は馬じゃなくてゴブリンライダーなのね」
「おうよ。戦闘が出来る点でもゴブリンは優れているからな。普通のゴブリンと違い剣や盾は持てないけど、ゴブリンライダーは移動にも使えて便利だ」
「じゃあ、トサ王国ではゴブリンだけは食べないの?」
その言葉にニートさんは紅茶を飲む手を止めて反応していた。
「いや、食べるさ。特にゴブリンの肉は美味いからな。焼いた匂いが臭いのもあるが、酒で一晩浸けておけば匂いも消えて美味なんだぜ?」
「美味でもモンスターはあまり食べない方がいいよ。会話が成り立つ相手を食べるのは人肉と同じ感じがする」
と、ニートさんは言い返す。ハッ! と笑うトサ王子は反応する。
「俺は動物の声を聞けるんだぜ?だから会話の成り立つ成り立たないは関係無いさ」
「全ての人間が君と同じじゃないだろう?」
と、トゲのある言い方をしてるわ。
何かニートさん怒ってる?
(何かピリピリしてるわね。ニートさんがピリピリしてるのは初めて見るわ。相手はトサ王国の王子だからこんな所で怒らせるわけにもいかないし……)
スズカが連れて来てくれたニートさんも、今回は上手く噛み合っていないわ。どうもトサ王子の考え方とは合わないようなの。
(ニートさんもこんな面があるのね。男としての意地を感じるわ)
そして、トサ王子はトサ王国のモンスター食料事情を語っていたわ。トサ王国にはゴブリン肉が手頃で手に入りやすいから無駄に殺されていた過去があった。勇者はそれが許せないような話だわ。
「……というように人間の味方なのか、モンスターの味方なのかわからないんだよ勇者は」
またニートさんが何か言うと揉め事になるかもだから、私が話し出す。
「じゃあ、婚約予定期間中に勇者様探しもするのね。今回の婚約は大変そうだわ」
「確かに忙しくはあるな。けど、かつての勇者はバクーフにいるのは確かだからな。勇者はモンスターや魔族を食べる我が国を侮辱した過去がある。いくら勇者でもそれは許されない。今一度、新しく食べてもらい珍味として認めてもらいたいんだよ。我が国の珍味をね」
そう言うトサ王子の話を私とニートさんは聞く。
トサ王国は食材にする以上は全てを味わう。骨から出るスープは美味しい。王族は最高の肉ばかり食べてるわけじゃない。
良い肉も悪い肉も食い、家畜に感謝するのだ。スライムも焼けば肉のような硬さと食感になると、自分の国の食生活を余す事無く説明しているわ。
その演説の最後にニートさんは言った。
「モンスターを美味そうに食べるのは人間だけ。他の魔族や妖精族も他種族を食べても美味いとは思わず、空腹を満たす行為でしかない。トサ王国の人間の食への行動は異常だよ」
「ハッ、まるで勇者のような言動だ。ニートの割には外の世界に詳しいじゃないか」
「いつか人の肉を食べないといいけどね」
「我が国は人の肉は食べないさ。そんな奴がいたら……俺は許さないな。断罪する」
「君の父上が人肉を食べていてもか?」
その言葉にイラっとした顔をするけど、トサ王子は怒らず返した。
「トサ王国では人肉禁止令は無いからそう思うのかも知れないな。そもそも我がトサ王国と他国では肉を食べるタイミングが違うのさ。他国はシステム的に家畜を殺して食用にしてるから、まだ成熟してない肉などが多いんだよ。だからバクーフの姫との婚約が済めば我が国としては高級料理店を出す。最高の肉を食える高級料理店だ」
と、自分の国の発展を遂げる為の高級料理店を出すと言っているわ。バクーフは大国なので儲けも大きく、トサ王国ではまかなえない人手も欲しい。トサは最高の肉を食べるタイミングの技術提供をし、バクーフは人と金を出すという外交関係のようね。
そして、トサ王子はニートさんに先程の話の答えを出していたわ。
「他国の者がトサ王国に来て、その時に人肉さえ食う人間と思われるのは心外だ。故に法を作る。トサ王国王子として初の法案だ。それは人肉禁止令」
トサ王子の話は聞けたけど、あまり盛り上がっていないからお開きになったわ。ニートさんのピリピリした顔を見ていたくなかったしね。
その後、私はトサ王子と森の散策などをして楽しんだの。トサ王国の家臣達が予想より早く到着したので、明日はトサ王子の歓迎パーティーが開かれる事になったわ。




