25話・バクーフ国境で赤髪の男がバトルしてます
バクーフ王国の国境付近で、ゴブリンライダーに乗った赤髪の男が暴れているという情報が入ったの。私はクエストクラスとしてその現場に向かったわ。本当なら、まずは国境兵士で対処するのが一番。そこでダメな場合はマスタークラスの人間が対処して終わる。
でも、私は勇者様の手がかりは争い事の中にあると感じてるからわざわざ向かったわ。
スララをライダーモードに変形させて、それにまたがる私はバクーフ北側の国境門を超えて外に出た。そのまま直進して行くと、バクーフ国境兵士の姿が見えた。
「アヤカ殿! あの戦闘場所みたいです!」
「ゴブリンライダーに乗った赤髪で細身の長身。赤い服にショートマント。情報通りならあのガーゴイルと戦ってる赤髪のイケメンが今回の暴れん坊ね。バクーフ国境の近くで暴れるのは罪なのを知らないのかしら? 行くわよスララ!」
「ハヒ!」
ゴブリンライダーの赤髪の男は人差し指を動かしてガーゴイル達を倒してるわね。近くには逃げ惑う野ウサギや、シカなどの野生動物もいる。
よくわからない状況だけど剣も槍も持たず、ファイアーなどの具現化する魔法すら使わずガーゴイルを倒しているわ。
(あれはおそらくピストル魔法ね。鍛えて練り上げた肉体の力を魔力として撃ち出す魔法。肉体の強さと集中させた魔力で撃つから、その威力は自分自身の力に比例する。確か、あの魔法は……トサ王国の……)
ゴブリンライダーから飛び降りた赤髪の男はガーゴイルとの戦いに集中し、ゴブリンライダーは動物達を逃すように追いかけていた。
「遅いぜガーゴイル共! バン! バン! バン!」
と、赤いショートマントを揺らして赤髪の男はガーゴイルを全て倒しきったわ。バクーフ国境兵士は特に何も出来ないまま、立ち尽くしていた。
「クエストクラスのアヤカです。状況はあの赤髪の男をどうにかすればいいようですね?」
『ハッ! よろしくお願いします!』
バクーフ国境兵士は一様にそう言い、私はスララをライダーモードから解除して赤髪の男の前に行く。すると、その男は何やら物足りない顔をして言った。
「ケッ、もういねーのかよ。ドラゴンが現れた情報があったからゴブリンライダーで飛ばして来たんだがな。お陰で仲間を置いて来ちまったぜ」
「仲間? それよりここはバクーフ国境なので戦闘行為は禁止ですよ? コチラの言う事に従わない場合、バクーフ王国のクエストクラスとして対処させてもらいます」
「あん? ウルセー女だぜ。人に何かを聞くなら肩書きだけじゃなく、名前まで言えよお嬢ちゃん」
「私はバクーフ王国のクエストクラス。悪役令嬢のアヤカ。事と次第では貴方を殺すけどよろしくて?」
「ハッ、俺を殺す? 殺したら国際問題だぞ。とりあえず俺は腹が減った。野ウサギの奴ももう死んじまうだろうしな」
「?」
そして、ガーゴイルに攻撃された野ウサギの元に行くと、その野ウサギを持ち上げた。
「じゃあ頂くぜ野ウサギちゃんよ……」
突如、野ウサギを炎の魔力で焼き上げ、ポケットから焼き肉のタレらしき小瓶を取り出したわ。炎で毛が無くなり、香ばしい焼き野ウサギになる物体にそのタレをかけて食い出しているわ。よくわからない行動に私は唖然としていたの。
「美味しいの……その野ウサギ?」
「あぁ、美味いぜ。普通の食材でもトサ国のゴブリンエキスをかけるだけでかなり美味になるからな。それに、この野ウサギは死ぬ間際に俺に食ってくれとも言ったし最高だぜ」
「食ってくれ? どういう事?」
「んんっ、簡単に言えば俺は動物の声が聞けるのさ。だから俺はガーゴイルから動物達を助けてたんだ。そしたら、バクーフの連中は俺がただバトルをしてると思ってたらしいけどな」
と赤髪の男が言うと、バクーフ国境兵士はビビってるわね。瀕死の動物は声を聞いてから殺して食べる。
すると、赤髪の男はスライムのスララにも興味があるようね。私はスララがドラゴンの子供を食べてしまった事を思い出す。
(言えないわ……。まさかスライムのスララがドラゴンの子供を食べてしまったという事は絶対に言えない)
三日後に来るトサ王子が動物好きなのは確かだから、モンスターにも興味があるかもしれない。特にドラゴンに興味があったら大変だしね。
「腹ごしらえが済んだなら、ここでのバトルでの詳細を教えてもらうわよ。何故、バクーフ国境付近で他国の貴方がここにいるのか? バトルまでしてたかを教えて」
「そんな事より面白いスライムだな。近くに来ると異様な魔力を感じるぜ。それに羽が生えてやがる……」
「え?」
スララの身体に羽だ!
ドラゴンの羽が生えてる!
つまり、スララはドラゴンの子供の特徴が身体に出てしまってるって事ね。
(最悪だわ……スララがドラゴン化してるかも。他国のわけのわからない人間にバレたくもないわよ)
と、スララと目が合うと羽が生えたスララは浮かびながらパタパタしてるわ。
「アヤカ殿! ガーゴイルが復活してます!」
「なら倒すだけよスララ。キングガーゴイルになってもザコはザコ」
死んだはずのガーゴイルが合体して復活して、キングガーゴイルになったようね。仲間との絆が強いとたまになる現象ね。
(と言っても私の敵じゃないわ。一撃で消し炭にしてやるわよ……)
すると、赤髪の男は右腕を引いて魔力を全身の隅々に蓄えていたわ。そして、放たれた矢のように右ストレートを繰り出したの!
「マジック……ストレート!!!」
大砲のような膨大な魔力と、体内のオーラが混ざり合う凄まじい一撃がキングガーゴイルを消滅させたわ。
「凄い魔法ね……肉体の力と魔法がミックスした凄まじい魔法。でも、これは一般の人間が出来る魔法じゃないわ。オンリーマジックのはず……」
今の魔法はアイヅ王子のオンリーマジック「リボーン」と同じレベルの固有の魔法。つまり、誰もが出来る魔法じゃない。
動物の声が聞けて、オンリーマジックを使える。まさか、この赤髪の男は……と、私がまだ来る日には早いと思う人物を思う。その赤髪の男は自信ありげに言う。
「ハッ。気に入ったぜ。このバクーフ王国の姫を嫁にしてそのスララとやらも頂く。ヤル気が出て来たぜこの婚約ってやつもよ!」
「貴方が動物王国トサの王子……」
私が出会った赤髪の暴れん坊王子は、トサ王子だったの。




