6件目 そんな仕事は無効です。
「待って、ミィールいや、ミィールさん…。一体どういうことなの…?」
相も変わらず目を見開いた状態で、ミィールのほうへゆっくりと顔を向ける。
「そりゃあ、フェイル直々の…。」
「はぁ!?お父様が仕向けたってこと!?」
まるで一国のお姫様だとは思えないような大声。
両手で髪をぐしゃぐしゃとかき乱し、ぼさぼさになった状態で津雲の方を見て
「ゴホン、あなたの仕事は無効です。私が、お父様に直接言ってきますからどうぞおかえりください。」
「ちょ、ちょっと待て!これは初仕事なんだよ!それを無効だなんかさせるもんかよ!」
これは俺の初仕事なのだ。
つまりこの功績次第でこの先のいわゆる異世界ライフが決まる。
そんな大事な仕事をいきなり無効だなんて、フェイルにメンツが立たねぇ
「安心してください、私がお父様に何とか言い聞かせますので、とりあえず部屋から出てくださる?」
「カッ!誰が仕事をないがしろにされて素直に出ていくかよ!意地でも動かねぇ!」
「はぁ・・・そうじゃなくて、とりあえず着替えたいので出て行ってくださいますか?」
「あ…そういう…ことですか、すみません。」
こうして部屋から出ていくしかない状況になった。
ミィールも一緒に部屋から出てきてくれた。
そして扉のすぐ横の壁にもたれ掛り
「はぁ…大丈夫なのかなぁ…」
「大丈夫だとおもうよ?何よりフェイルが許すわけないもの。」
「そうなのか?それならいいんだけど…、なんであそこまで嫌がるんだ?一種の家庭教師みたいなもんじゃないのか?」
「カテイキョーシ?はわかんないけど、あの子はね…」
すると、ギィ…と背後の扉が開いた。
「お待たせしました。私一人で動いたところでどうせ話さえ聞いてくれませんもの。津雲さん…でしたわよね?ついてきてくださるかしら?」
ここでついていかないわけがない。
まず第一に、確かにフェイルからの仕事だということを証明するため。
そして、フェイルに直接リリアナ嬢の方にきつく言ってもらおうという魂胆だ。
「あぁ、もちろん。」
そして、リリアナを先頭にフェイルが仕事をする部屋へを歩き出した。
そしてその途中ミィールが耳元でこうつぶやいてきた。
「ミィールちゃんが肩を叩いたらすぐに部屋から出ること、いい?」
よく理由はわからないが、きっとちゃんとした理由があるのだろう。
「あぁ、わかった。いわれたとおりにするよ。」
これまた小さい声でリリアナに聞こえないように返事をした。