2件目 緑の妖精
そう言われて女医の後に続いた。
部屋を出ると、いかにも病院という風な清潔感のある廊下が長く続いていて、その途中にはいくつもの部屋があった。
「えっと、すみません。あーっ、なんて呼べば良いですか?」
「そうよ!そうだったわ!何か忘れてると思ったけど私、自己紹介してないわよね!」
どうやら何かしないといけないことは覚えていたのか、両手をパンッと叩くと、くるっと振り返って。
「ゴホン、私は、メリッサ。メリッサ=フィールナ。このアイレドエルフィ王国と一応、ドワーフ領のドアルフィルカ王国を兼任で医者をしているの。よろしくね。」
「えっとじゃあ、メリッサさん。王城って言ってたと思うんだけどどう見ても王城には見えないんですが・・・?」
「あぁ、言い方が悪かったわね。この医療棟は、王城の敷地内にあるの。そのおかげで、他の医療所と比べてもいろいろと融通が利くのよ。」
少し自慢げにメリッサはそう言った。
メリッサについて行っている途中で、いろいろなエルフにあった。
てっきり、普通のエルフだけの王国かと思っていたら、肌が少し褐色がかり髪色も暗めのエルフ。
つまり、ダークエルフもいたのだ。
「ダークエルフもいるんですね。」
「そうね、ダークエルフもエルフに代わりにもの。それに、今のこんな世の中じゃ差別化するだけ無意味なのよ。」
ソレってどういうわけですか?
そう訪ねたかったが、声のトーンが落ちていくのを感じて訪ねるのをためらった。
そうしてさらに歩くこと数分間。
廊下の突き当たりに両開きの扉が有り、メリッサはその扉を開けた。
「ここから先が、正式に王城内って事になるわ。それじゃあここから先も案内する・・・」
ふわふわとどこからともなく緑色の小さな光が飛んできてそれは、彼女の耳元で止まった。
よくよく目をこらしてみると、その光の中には羽を生やした女の子がメリッサに何かつぶやいていた。
「嘘、本当に?はぁ・・・分かったわ。じゃあ彼をフェイルの所まで連れてってくれる?」
光の中の小さな女の子、おそらくフェアリーだろうその彼女にそう話しかけていた。
「えっと、ごめんなさいね!私、ドアルフィルカで急用ができちゃったから!津雲君、彼女えっっと・・・名前なんだっけ?まぁいいや!彼女が案内してくれるから!それじゃあ!」
一番近い部屋の中に走り込んでいった。
直後、一瞬だけ緑色の強い光が部屋から漏れ出た。
あまりに急なことにきょとんとしてしまって、動きが止まってしまった俺の目の前にさっきの緑色の光の少女がふわっとやってた。
「はぁ・・・ごめんね。彼女こういうときだけは適当だから。えっとまずは、私が自己紹介するわね。名前は、長すぎてよく分からないと思うから”ミィール”って呼んでね。君の名前を聞いてもいい?」
「俺は、霧生津雲って言います。俺の認識が間違ってなければ、俺はこことは違う世界?からきました。」
「わぁーお、もしかしてあの地球って所から来たりとか?あっ、あと敬語じゃなくて良いよ、そういうの苦手だし。」
さっきのメリッサもそうだが、ミィールまでも地球の名前を出した。
なぜかは全く見当も付かないが、思っていたよりも地球は知られてるらしい。
「そ・れ・と、あんまり地球出身って言わない方が良いよっ!ミィールちゃんからのアドバイス!フェイルには私から伝えておくね。」
「さっきもフェイルって聞こえたんだが、それって誰なんだ?」
「フェイルはね、この国の王様だよ!もちろんエルフだけど、すごーくちっちゃい男の子!」
「おいおい、小さい男の子とは、一国の王に対しての言葉ではあるまいな?ミィール。」
背後から声がした。
ミィールが、げっと言いながら嫌な顔をしていた。
ふっ後ろを振り向いた。
が、誰も居なかった。
訳ではなく、腰より少し高めの身長の小さな男の子のエルフが立っていた。
「おい、地球の方よ。今俺を見て小さい男の子だと思っただろ?」
ははっ、と苦笑いをするしかなかった。