僕と関係ない勇者の話 そのひゃくにじゅういち
さあ、今日は何の話をしようか〜。
そうだな〜。王の話をしようか。
んん。反応が微妙かな〜。なかなかいい話だなーってなるんだけどな〜。
よし、それじゃあ何度目かの、昔むかーしの話をしようね。これは覚えておいてほしい話だからね〜、何度も話すよ〜。わたしの望みに関わってくるからね〜。
昔むかしのその昔。何年前かわからないんだけど〜。すごーく前。
そこでは、電気を基に機械文明が発展していたんだ〜。
人類は栄華を極め、いろーんなものを作ったんだよ。
武器とか、ロボットとか、乗り物とか、果てには生命まで。
でもそれも、いつまでもは続かなかったんだな〜。
生命を作れることに怒ったものたちがいてね。
あ、カミサマとかじゃないよ? 同じ人間がね、怒ったの。わーって。
それで、争いが起きてね〜。
電気を作るものを壊したりいろいろして。
人間が生きていくための電気が、あと何年かで作れなくなっちゃうところまでいっちゃったんだよ。わたしが生まれる前の話なんだけどね〜。
そこで、そのときのえらーい、かしこーい人が見つけたのが魔力だったんだ〜。
それより昔、蒸気機関から電気に移行したように。人間は、魔力という電気に代わる新しい力を見つけたんだ〜。
なんだったかな。話をちゃんと聞いておくんだったな〜。
まあどうせ聞いてても、わたしのことだから覚えてないか。まあ何かで、魔力を使えるような、そういう研究が進められたんだ〜。
それで、もっともーっと魔力を手に入れたくなったヒトたちは、なんだっけ、月に行ったんだ〜。
何か取りに行ったんだったと思うんだけど、詳しいこと覚えてないな〜。ゆるしてぴょん。
むぅ。胸を張ってみても反応がなくてつまんないね〜。
ああ。でももう"幻覚"じゃなくて本体が視えてるんだっけ。
というか意識が無くはないだけで、視る体力はなさそうだね、ごめんごめん。
たぶんだけど、もう峠は超えてると思うから、復活したらフリージアおねーさんがごほーびに膝枕してあげようか〜。骨だけど。
まあいいや。
えっと、なんだっけ。
そのとき鶏肉がなくて困った話だっけ。鶏肉だけじゃなく、こんにゃくもなくてね〜。違うか。月だったっけ〜。
えーっと。なんやかんやで月で魔力に関連する何かを掘ってたときに、それが来たんだよね。
あいまいでごめんね。興味がなくてあんまり覚えてないんだ〜。
それは、魔力の匂いにーーいや匂いがあるのかわからないけど、魔力の何かに吸い寄せられて。
"世界の災厄"と呼ばていた、この世界の者全てにとっての天敵がね。
この世界の外から、やって来たんだ〜。わー、って。
そのころわたしはまだ幼かったんだけどね〜。
世界が滅びるよーって言ってるのに誰も信じてくれなかったなぁ〜。おこだよ、おこ。
"世界の災厄"は、自身で魔力を使ってね〜。
その当時、魔力はまだ研究段階でね。太刀打ちするすべはなかったらしいんだ〜。
そこで、科学者たちが頭を絞って考えたのが『この世界の者で倒せないなら、外の世界の人を呼ぼう大作戦』だったんだ〜。安直だよね〜。その人も敵対的だったらどうするつもりだったんだろうね〜。
まあ、一撃ばーんってやって地図の形を変えられて、国がいくつも消えて、しかもステルス機より速いやつの相手なんか、そういう今ない手段に縋るしかなかったんだろうけどさ〜。
その、通称"勇者召喚"は科学技術と、研究段階の魔力をふんだんに費やしてね、二回はできないぞーっ、てくらいの勢いで頑張って、"勇者"を呼び出したんだ〜。
本人もこの世界に来ようとしていたところだったから、たまたま喚べたみたいなんだけどね〜。
あ、その"勇者"とわたしは面識があるんだ〜。その眼鏡の持ち主がその"勇者"でね。わたしのお友達なんだよ〜。すっごい強いんだ〜。一種のバグキャラだよねあれ。
それでも、"勇者"でも"世界の災厄"は倒せないほど強いんだーって。そういう話になって。"勇者"が自己申告したんだけどね。
"勇者"自身の協力もあってね、この結界の理論を作ったり、いろいろ準備をしたんだ〜。
わたしは蛇神様を移植されたりしてね〜。いろいろあったんだ〜、いろいろ。
この結界は、きみが入ってきた頃に説明したっけ? もとはわたしたちを鍛えるためのものでね〜。
打倒"世界の災厄"のために、魔力を宿した人や、神名持ちのみんなが、きたる日のために鍛練をしていたんだ〜。
わたしもそれに含まれるよ。いわゆる秘密兵器ってやつかな。秘密すぎて誰にも気付かれないまま骨になってるんだけどね〜。あはは。笑い事じゃないわ。
本来は内部時間で数年〜十数年で解除されるはずだったんだけどね〜。
待てど暮らせどその気配もなし。内部で暴動が起きたり、もうほんとひどいもんだったよ〜。
それで、わたしが骨になっても生きてる、というか死んでないのはもちろん"不滅"によるものでね〜。
あらゆる死を回避するのに痛みは普通にあるもんだから、いろーんな自殺を試してももう痛いだけでほんと嫌になっちゃうんだよ〜。ぷんぷんだよ。
精神の死も防ぐみたいで、発狂すらできやしないしね〜。
肉体も、かなり長く保ってはいたんだけどね〜。
少なくとも、他の皆が骨になってもしばらくわたしは普通だったよ〜。でもそれから5、6千年もするとさすがに限界でね、溶けちゃったや。
肉が溶け切ったら死ねるかな〜、と思って痛みに耐えて放っておいたけど、ご覧の有様だよ〜!
今じゃ痛くもないけどね。
それじゃあちょうどいいから、わたしの愉快な骨仲間たちを紹介するよ〜。
全員死んでるけどね。
ほら、あそこの骨、左から順番にデイジー、コッペリオン、アマクサ、ユースディア、ギルレム、あー、あとはケンジロウ。あのひとすぐ熱くなるから苦手だったんだよね〜。ケンジロウの骨はちょっと事故で半分くらい砕けちゃったけど、まあいいや〜。
え、事故だよ事故。わざとじゃないよ〜。
それで。ええと〜。
いまも世界が滅んでないんだから、"世界の災厄"は"勇者"とか、ここに入らなかった残りの皆が何とかしたんだろうね〜。
そんな感じで、わたしはここの中にずっと、ずーっと居たからどうなったのかは知らないんだけど、世界は守られたのでした〜。めでたし、めでたし。
んー。今日は長く起きていられたね〜。覚醒のときは近いかな? とと、さすがにまだ早いか。
まあ私にとって、1年や2年なんか誤差の範囲内だからね〜。頑張って強くなるんだよ、オスカーくん。
おやすみ〜
あまりにぼっち期間が長すぎて、お話するのがとても楽しいフリージアさん。一方的に喋っているだけですが。
召喚された"勇者"の当時の戦うお話は「オスカー・シャロン」のお話とは無関係なので、フリージアが閉じ込められたきっかけくらいに思っていただければと。