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ハ里目

クソッしくじった!

全速力で魔力の糸を辿りながら毒づく。


よく考えたらリリスはケガしてるんだった。無駄に元気だから忘れてた。


さっき治療したときに見た限りでは深いケガは右腕の矢傷だけで他はけっこう浅かった。気絶していたのもほとんど疲れからきたもののようだった。


それでも大事をとってかなり大量の経験値を渡したから表面的には元気そうだったが、そんな奴にドコに黒づくめが潜んでいるかわからない森で狩りを頼むとはどうかしていた。天才にあるまじき失敗だ。


ええい、後悔はあとだ。今はこの現状を解決しなければ。


まずリリスは生きているのか死んでいるのか。あの場にあった血液。あれはそもそもリリスの血だったのだろうか。くそっ。気が動転して魔力属性を調べるのを忘れていた。今からでも戻って調べるか?


いやどちらにせよこのまま追うことに違いはないか。目的が救出か報復かのどちらかになるだけだ。


次にリリスを今まさに運んでいる奴だ。あの黒づくめの仲間なのかそれとも野生の魔獣か。どっちかだと思うんだが、コイツめちゃくちゃ足が速い。今も俺は全力で走っているのに少しづつ魔力の糸が伸びていっている。要するに引き離されつつあるということだ。こんなに走りづらい森でなんて速さだ。


ただ一つ幸いなのは魔力の糸に気づかれていないということか。魔力の糸は目に見えないほど細いわりに強靭だ。そう簡単には切られないと思うが……。


ガン

「いって!」

考え事をしながら走っていたら木にぶつかった。


クソッ平地だったらもっと速く走れるのに!


どちらにせよリリスの生死も下手人の正体も追いつかなきゃわからないってことか。


頼むから生きててくれよ未来の性奴隷(ヨメ)候補!



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



ゴン

頭上にせり出た木の枝に頭を打ち付けたたらを踏む。ちくしょう。森の中がこんなに走りづらい物だとは思わなかった。地面を踏み込みずらくさせる下草。足をひっかけようと狙う木の根。全身で毒持ってますアピールする気持ち悪い虫。こんなことだったら森の中を走る練習でもするべきだった。


それに走りづらいのは植物や虫のせいだけではない。


「ゴブゴブゥ」「ゴブルゥ」「ゴッゴブ」「グルル」「バウッバウッ」


……またか。

さっきからやけに魔物とはちあわせる。

王都近郊の森というだけあって種類こそゴブリンやコボルトなど弱小種族だがいかんせん数が多い。

それに様子も変だ。妙に落ち着きが無いし何故か異種族で固まってたりする。そのくせ俺が近づくと攻撃してくる。


敵の攻撃か?俺の追跡に気づいて魔物を配置したのか?だとすると敵は魔物使い(テイマー)か?


いや待てよ。この魔物の様子どこかで見た気が……。


ああ、そうかこれは魅了状態だ。おそらくこの魔物達、リリスの《魅了》にかかっている。運ばれていくリリスから漏れるの淫蕩属性の魔力に引き寄せられたんだ。


いやもしかしたらリリスが意識的にやったのかもしれない。《魅了》はたしか簡単な命令なら言葉が通じなくとも聞かせられたはず。それで命令したのかもしれない。『自分を運んでいる奴を倒して』とか何とか。しかし敵のあまりの速さに追いつけず置いてきぼりをくらい今に至る、と。


正直言って邪魔だ。


まぁこれでリリスがまだ生きている可能性が出てきたから良しとしよう。


とりあえず邪魔な魔物は《ドレイン》だ。

「ゴッ……カッ」「キュウゥン」「ゴフッ」


倒れ伏し見る見るうちに灰になって崩れていく魔物達。

新たに取り入れた経験値を足と頭に重点的に送って強化する。


よし、邪魔な魔物は消したし、次はこの邪魔な……木との……たたか……い……?


………………。


「《ドレイン》!」


道を遮る邪魔な木や下草、土から顔を出した根が灰となって崩れていく。やがて前方は草一本生えない平地となった。俺の前だけ地平線が見える。


「始めからこうすればよかった」


やれやれ。どうやら俺はそうとう動揺していたらしい。こんなことにも気づかないだなんて。


なにはともあれこれだけ平地になれば後は走る必要すらない。

《魔力の糸》の魔法陣にちょっと工夫をする。

さらに《魔弾》も改造して飛距離を伸ばす。

この二つを上手い具合に合わせて発射する。

はるか遠くに着弾した《魔力の糸》は地面をがっつりと掴む。

ぐっと引っ張っても取れないのを確認したら魔力で出来たソリを作って乗り、《魔力の糸》の端をソリに固定。


よし、これで準備完了だ。


《魔力の糸》スイッチオン。


グン!とソリが加速する。地面に散らばる灰を巻き上げながら凄まじい速度で突き進む。


俺は《魔力の糸》の先端に《高速回転》の魔法陣を改造したのをくっつけた。スイッチを入れることでそれが高速で《魔力の糸》を巻き上げてソリを引っぱるというわけだ。


こっちのほうが普通に走るより速いし楽だ。欠点は振り落とされたら大変なことになるということと、全身が灰まみれになることだ。


そもそも本来インドア派の俺が走るという発想がおかしかったんだよ。やっぱり天才は天才らしく魔法で行かないとな。


よっしゃー!待ってろリリス!今行くぞー!


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