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十四里目

黒幕の1人は死んだ。もう1人は意図が読めない上に逃げられた。だがそれよりもまずいことになってしまった。


(召喚は止められない。それに召喚が完了すれば……この国はあの触手の餌食となり、エロマンガみたいに滅んでしまうだろう。エロマンガみたいに)


この後に及んでインクは未だにアウラをエロい存在だと思い込んでいた。


インクは魔法陣を見下ろす。見ると既に全ての黒ずくめは触手に捕まり灰にされていた。


しかしそれでも触手は何かを探すように地面を探っている。それはだんだんとリリスと淫魔の死体のある中心へと向かっている。


(あの中心を覆う結界はかなり弱かった。『神避け』の効果も大して強くないだろう。たぶんあの触手に『近くに淫魔がいると思うんだけどどこにいるかわかんない』と思わせる程度の絶妙なバランス。これもあのシロの仕業か。)


疑問ではあったのだ。ここに入ってくるとき、なぜ《ドレイン》で平地にしたにも関わらずあんなところに岩があったのか。しかもちょうど広場の真ん中に落ちてくるようにセットされていたように感じた。


それもシロが未来を見る力とやらで仕組んだことだったのだろう。


(何が目的なんだ?あの男は)


得体の知れない不快感がインクの胸に渦巻く。


だが今はそんなことを考えている暇は無いと気づいた。



「あ、あああ……ああ」


ジワジワと迫る触手にリリスが青ざめている。膝がガクガクと震え股間を抑えている。恐怖のあまり漏れそうなのだろうか。


(とりあえず安全圏(結界の外)から撃っとくか)


インクは《魔弾》を発動させる。


ズダダダダダダダダ!


的を一本に縛り連射してみたが、流石神といったところか全く傷ついた様子も無く辺りを探り続けている。


(まあそりゃそうか。じゃあこれならどうだ?)


インクは《魔弾》を改造し1発の威力を上げた。


ゴガガガガガガガガガ!


もはやそれは《魔弾》というより《魔砲》だった。1発1発が砲撃と変わらぬ威力の連射。適正属性により威力の跳ね上がった攻撃にさしものアウラも触手を苦しそうにくねらせた。


だが


ビュガン!


「うおわっ!」


攻撃を受けていた触手が突如結界を貫いて攻撃してきた。


音を置き去りにする突き。辛うじて避けたインクに衝撃波が襲いかかる。


「ゴホッゴホッ。っつう。そりゃそうか俺ですら容易く抜けれる結界を神が抜けれないわけないよな」


その後も触手はウネウネとしていたがしばらくするとまた結界内に戻っていった。


(どうするかなぁ)


今ので結界の外は安全圏ではないと証明されてしまった。


(とりあえずリリスの方に行っとくか)



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



「インク~。何とかしてよ~。あたしこんなとこで死にたくないよ~」


何とかインクがリリスの下までたどり着いて高台で起きたことを伝えるとリリスが泣きながらすがりついてきた。


Sっ気のあるインクはその姿に多少興奮したが今はそんなときではないと欲望を切り捨ててこれからどうするかを話始めた。


「エロいな」


「え?」


「何でもない」


捨てきれなかった欲望を完全に捨てると今度こそこれからどうするかを話し始めた。


「俺に一つ案がある」


「ぐす……なに?」


「複合型魔法陣ていうやつはその性質上全部に同じ量の魔力が流れるんだ。だから俺はアウラが完全に出てこようとしてゲートを広げた瞬間――つまりもっとも魔力が多く流れる瞬間にそれを利用して攻撃しようと思う」


「……具体的にどうやって利用するの?」


「この魔法陣を書き換える」


「そんな!できるの!?」


「フッ誰にものを言っている。俺は不可能を可能にする天才インクだぞ。時間さえあれば魔法陣を書き換えることなんて朝飯前だ。とりあえずリリスは淫魔囮作戦で触手の気を引いてくれ。10分、いや5分あれば必要魔力なんて度外視のとんでもない魔法を……」


「いやそうじゃなくてさ……」


インクの言葉に被せるようにリリスはいった。


「なんかアイツら今にも本体出てきそう何だけど……」


「え?」


見ると確かに触手は周囲をまさぐるのをやめて地面を押すような仕草をしている。


まるで体を地中から引き抜くかのように。


「飛べっリリス!」


その言葉に弾かれたようにリリスが飛び上がる。すかさずインクも跳ぶために足に《経験値操作》で経験値を送り飛び跳ねる。


その一瞬の差が命とりだった。


地面から生えてきた触手がインクの浮いた足を絡めとり地面に叩きつけた。


「グッ、かハッ」


「ちょ、インクだいじょうぶー!!?」


「問題ない!お前は触手に捕まらないようにもっと高いとこにグゥっ!」


足に絡み付いた触手から《ドレイン》が始まった。全身に広まる強烈な虚脱感。


(くそっ。これが《ドレイン》か。受けるのは初めてだな)


すかさずインクも《経験値操作》で対抗し、あわよくば《ドレイン》し返してやろうと思うが、両者の力は互角だった。


まるで綱引きでもしてるようだ。お互いに経験値を奪おうとするがびくともしない。


《くそっ。ちょっとヤバいかもな》


インクがこうしている間にもアウラは召喚されようとしていた。地面から生える触手がどんどん多く長くなっていく。


何とかしようと地面や近場に転がっていた淫魔の死体から経験値を《ドレイン》して魔力の強化に当てたが焼け石に水だった。


《魔弾》で追い払おうにも既に全身にまとわりつかれている。今使えば自分の体を巻き込むことになる。


「ぐう《高速回転》!」


苦し紛れに《高速回転》を自分にかける。とんでもない速さで回り出す視界。だが触手は剥がすことに成功した。


その一瞬で何とか立ち上がると《経験値操作》で強化した脚力で飛び跳ねた。


「よっと」


リリスはインクを空中でキャッチした。


「あ、ありがと、リリス」


「別にそれより大丈夫なの?」


「あ、ああ、俺は、天才だぞ。この程度、なんとも無あちょっと待てタンマやっぱヤバオロロロロロ」


インクは下にむかって盛大にリバースした。


「ゴホッゴホッ。あーキッツ。《高速回転》なんて自分にかけるもんじゃないな。まだ視界が回ってる」


インクは背中に感じる胸の感触で癒されながら頭を降って視界を戻した。


「あーそれにしてもマズイなあ。この状況」


上空から見るとよくわかった。


広場全域に生えた小さな触手が肉絨毯(にくじゅうたん)を形成している様子はかなりのホラーだった。


リリスがゴクリと生唾を飲み込んだ。



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