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十一里目

さて、どうやってアイツらをぶっ飛ばそうか、とインクが考えていたときだった。高台でシロと揉めていた黒司祭が叫んだ。


『フン!もういい!どちらにせよもうアウラ・テムアリブの召喚は止まらん!そうすればアイツらもこの国も終わりだ!』


「アウラ……?あいつアウラ・テムアリブって言ったか?」


インクの思考が聞こえてきた言葉に反応してとまる。


「インク、何か知ってるの?」


「ああ、アウラ・テムアリブ。別名、姦獄の蹂神。中心に球体があってそれを覆うように全身に触手が生えた一つ目の化け物。存在するだけで周囲のあらゆる生物を発情させ、その体から分泌されるヌルヌルの粘液は体を一切傷つけずに装備品だけを溶かし、触手の先端から放たれる白濁した液体は対象を確実に妊娠させる。神界の神の一柱だ」


「……それ、情報源は?」


「ニホンノ=マンガカー先生の文献(エロマンガ)だ。俺も何度かお世話になった。」


「やっぱり!何でアンタはこんな時にふざけるのよ!何なのよアンタのそのエロ本信仰は!頭にチ〇コでも生えてんじゃないの!?」


「なんだと!?俺をバカにするのはいい。だが先生を侮辱するのは許さんぞ!」


「アンタをバカにしてんのよ!それより現実を見なさい!あの触手がそんなエロティックな奴に見える!?」


八本の触手は今も悲鳴を上げて逃げ惑う黒ずくめを捕まえては灰へと変えていた。未だ混乱は収まる気配もない。


「いやよく見ろリリス。あの黒ずくめ灰になる前にビクンてしてるぞ!きっとあの一瞬で何百回とイッているに違いない」


「んなわけあるかぁ!死んでんのよ!あの一瞬で天国に逝っちゃってんのよ!てゆーか何で灰になってるの!?あの触手は一体何をしてるの!?」


「……なぁリリス。質問なんだがさっき俺が言ったアウラの能力ってサキュバスとかインキュバスとかの淫魔族でもできるよな」


「な、何よ急に。まあ別にできないわけじゃないけどそこまで強力な能力もってる奴なんてクイーンとかの淫蕩属性を持った一部の淫魔族だけよ」


「……そうか、わかったぞ!」


何かを理解したらしいインク。リリスは胡乱な目を向けながらも一応聞いてみることにした。


「疑問には思ってたんだ。この召喚の儀をするのになぜわざわざ淫魔の里を襲ったのか。それは淫蕩属性の魔力を集めるためだったんだ!」


「……その心は?」


「まず召喚魔法には二つの方法があるんだ。一つはゲートを開いて対象を直接呼び寄せる方法、《ゲート召喚》。もう一つが対象の体をこちら側に新しく作ってから魂だけを呼び寄せて体に入れる方法、《魂魄(こんぱく)召喚》だ。前者は主に対象が小さいときや多いとき、後者は対象が大きいときに使われるんだ。」


インクは結界の外で暴れ回る触手を見た。触手は1本1本が長く太い。なんだか最初に見たときよりも大きく見える気がした。


「あのサイズの触手、それもあれで一部だ。おそらくアウラ本体はとてつもない大きさなんだろう。とすれば使われている魔法は《魂魄召喚》である可能性が高い」


「なによ。思ったよりもマトモな推理じゃない。それで?」


「さっきリリスが言ったとおり文献から得たアウラの能力と淫蕩属性の魔力で発動できる魔法は似かよっている。それにあの黒ずくめを灰にしている魔法はおそらく《ドレイン》だ。それも俺と同じくらい強力な」


「ふんふん。それでそれで?」


「これらのことから推測するとアウラは相当濃い淫蕩属性を持った神だ。それにここに飛んでくる途中でチラッと魔法陣を見た限りでは何とか属性と増幅という魔法文字が見えた。ところどころ古代魔法文字だったせいで何属性なのか読めなかったかが、あれはおそらく捕らえたクイーンの淫蕩属性を増幅させてアウラの魂をいれるための器を作るということだったんだ!」


「おおー!さすが自称天才!魔法のことなら無駄に詳しいわね!」


「自称じゃなくて他称な。それに無駄じゃないからな」


「それで?具体的にどうするの?」


「わからん」


えぇ~っとリリスの目が股間を潰されて痙攣するオークを見るような目になる。


「……やっぱり無駄じゃん」


「無駄じゃない。それにこういう魔法は術者を殺せば召喚も止まるんだよ。ちょっと待ってろ」


そう言うとインクは先程から出しっぱなしになっている《トランポリン》に乗って跳ね出した。


「……何やってんの?今遊んでる場合じゃないってわかってる?」


「遊んでるんじゃ……無いよ。……こうやって……上から見て……魔法陣の……内容を……読んでんの!」


器用に跳ねつつ少しずつ最高到達点を上げていくインクを見ながらリリスはため息を吐いた。


「アンタさぁ、サキュバスが空飛べるってこと忘れてない?」


そう言うとリリスは服の背中側に開いた隙間から蝙蝠のような翼を出して広げて飛び立つと、空中で上下運動を繰り返すインクを空中で抱きとめた。


リリスがインクを後ろから抱きしめる格好となる。


「ふむ。そういえば淫魔族は《飛行》の固有魔法も持っていたな。これなら見やすいな、ありがとう」


「いいのよ。治療のときたくさん経験値もらったおかげでアンタ一人抱えて飛ぶくらい余裕よ」


「そうか、だったらもう少ししっかり抱えてくれ。体が揺れると怖い」


「こう?」


むにゅり。背中に当たった二つの柔らかい塊が押し付けられて形を変えた。


「……もっとだ。もっとしっかり抱きしめてくれ」


「抱きしめ……?こう?何?アンタ高いところ怖いの?」


むぎゅ。たわわに実った母性の象徴がさらに密着する。インクにはそれが人を癒す聖なる果実なのか人を惑わす魔性の果実なのかわからなかった。わからなかったがただ一つ、自分が今とても喜びを感じていることだけはわかった。


「ああ、怖いぞ。俺は高いところが凄い怖い!」


今までリリスのサキュバスっぽいところをあまり見ていなかったが、確かにサキュバスなのだと感じた瞬間だった。


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